~ 相 聞 ~

484

[題詞]

難波天皇妹奉上在山跡皇兄御歌一首

[原文]

一日社 人母待<吉> 長氣乎 如此<耳>待者 有不得勝

[訓読]

一日こそ人も待ちよき長き日をかくのみ待たば有りかつましじ

[仮名]

ひとひこそ ひともまちよき ながきけを かくのみまたば ありかつましじ

[注釈]

[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 告 吉 [元][紀][細] / 所 耳 [玉の小琴]

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 告→ 吉 [元][紀][細] / 所→ 耳 [玉の小琴]

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相聞 作者:難波天皇妹 仁徳 孝徳 間人皇女 中大兄 恋情 女歌

485

[題詞]

<崗>本天皇御製一首[并短歌]

[原文]

神代従 生継来者 人多 國尓波満而 味村乃 去来者行跡 吾戀流 君尓之不有者 晝波 日乃久流留麻弖 夜者 夜之明流寸食 念乍 寐宿難尓登 阿可思通良久茂 長此夜乎

[訓読]

神代より 生れ継ぎ来れば 人さはに 国には満ちて あぢ群の 通ひは行けど 我が恋ふる 君にしあらねば 昼は 日の暮るるまで 夜は 夜の明くる極み 思ひつつ 寐も寝かてにと 明かしつらくも 長きこの夜を

[仮名]

かむよより あれつぎくれば ひとさはに くににはみちて あぢむらの かよひはゆけど あがこふる きみにしあらねば ひるは ひのくるるまで よるは よのあくるきはみ おもひつつ いもねかてにと あかしつらくも ながきこのよを

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 岳→ 崗 [元][古][紀]

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相聞 作者:舒明 皇極 恋情 女歌 挽歌発想 枕詞

486

[題詞]

(<崗>本天皇御製一首[并短歌])反歌

[原文]

山羽尓 味村驂 去奈礼騰 吾者左夫思恵 君二四不<在>者

[訓読]

山の端にあぢ群騒き行くなれど我れは寂しゑ君にしあらねば

[仮名]

やまのはに あぢむらさわき ゆくなれど われはさぶしゑ きみにしあらねば

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 存→ 在 [西(右書)][元][類]

[検索用キーワード]

相聞 作者:舒明 皇極 恋情 挽歌発想

487

[題詞]

(<崗>本天皇御製一首[并短歌])反歌

[原文]

淡海路乃 鳥篭之山有 不知哉川 氣乃己呂其侶波 戀乍裳将有

[訓読]

近江道の鳥篭の山なる不知哉川日のころごろは恋ひつつもあらむ

[仮名]

あふみちの とこのやまなる いさやかは けのころごろは こひつつもあらむ

[注解]

岳→ 崗 [元][古][紀] / 岳→ 崗 [西(右書)][元][類][古][紀] / 岳→ 崗 [西(右書)][元][類][古][紀]

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相聞 作者:舒明 皇極 恋情 序詞

488

[題詞]

額田王思近江天皇作歌一首

[原文]

君待登 吾戀居者 我屋戸之 簾動之 秋風吹

[訓読]

君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く

[仮名]

きみまつと あがこひをれば わがやどの すだれうごかし あきのかぜふく

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:額田王 天智 恋情 待つ 漢詩

489

[題詞]

鏡王女作歌一首

[原文]

風乎太尓 戀流波乏之 風小谷 将来登時待者 何香将嘆

[訓読]

風をだに恋ふるは羨し風をだに来むとし待たば何か嘆かむ

[仮名]

かぜをだに こふるはともし かぜをだに こむとしまたば なにかなげかむ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:鏡王女 額田王 天智 待つ

490

[題詞]

吹B刀自歌二首

[原文]

真野之浦乃 与騰<乃>継橋 情由毛 思哉妹之 伊目尓之所見

[訓読]

真野の浦の淀の継橋心ゆも思へや妹が夢にし見ゆる

[仮名]

まののうらの よどのつぎはし こころゆも おもへやいもが いめにしみゆる

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <>→ 乃 [西(右書)][元][類][金]

[検索用キーワード]

相聞 作者:吹B刀自 恋情 夢 皮肉 誤伝 伝承 序詞

491

[題詞]

(吹B刀自歌二首)

[原文]

河上乃 伊都藻之花乃 何時<々々> 来益我背子 時自異目八方

[訓読]

川上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも

[仮名]

かはかみの いつものはなの いつもいつも きませわがせこ ときじけめやも

[注解]

<> → 々々 [西(右書)][類][紀][細]

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相聞 作者:吹B刀自 勧誘 序詞

492

[題詞]

田部忌寸櫟子任<大>宰時歌四首

[原文]

衣手尓 取等騰己保里 哭兒尓毛 益有吾乎 置而如何将為 [舎人吉年]

[訓読]

衣手に取りとどこほり泣く子にもまされる我れを置きていかにせむ [舎人吉年]

[仮名]

ころもでに とりとどこほり なくこにも まされるわれを おきていかにせむ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 太 → 大 [桂][元][金][紀]

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相聞 作者:田部櫟子 恋情 羈旅 離別 太宰府 任官

493

[題詞]

田部忌寸櫟子任<大>宰時歌四首

[原文]

置而行者 妹将戀可聞 敷細乃 黒髪布而 長此夜乎 <[田部忌寸櫟子]>

[訓読]

置きていなば妹恋ひむかも敷栲の黒髪敷きて長きこの夜を <[田部忌寸櫟子]>

[仮名]

おきていなば いもこひむかも しきたへの くろかみしきて ながきこのよを

[注解]

<>→ 田部忌寸櫟子 [元][細]

[検索用キーワード]

相聞 作者:田部櫟子 恋情 羈旅 離別 太宰府 任官 呪術 枕詞

494

[題詞]

田部忌寸櫟子任<大>宰時歌四首

[原文]

吾妹兒乎 相令知 人乎許曽 戀之益者 恨三念

[訓読]

我妹子を相知らしめし人をこそ恋のまされば恨めしみ思へ

[仮名]

わぎもこを あひしらしめし ひとをこそ こひのまされば うらめしみおもへ

[注解]

乎 [元][紀][金](塙) 矣

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相聞 作者:田部櫟子 恋情 羈旅 離別 太宰府 任官

495

[題詞]

田部忌寸櫟子任<大>宰時歌四首

[原文]

朝日影 尓保敝流山尓 照月乃 不Q君乎 山越尓置手

[訓読]

朝日影にほへる山に照る月の飽かざる君を山越しに置きて

[仮名]

あさひかげ にほへるやまに てるつきの あかざるきみを やまごしにおきて

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相聞 作者:田部櫟子 恋情 羈旅 離別 太宰府 任官

496

[題詞]

柿本朝臣人麻呂歌四首

[原文]

三熊野之 浦乃濱木綿 百重成 心者雖念 直不相鴨

[訓読]

み熊野の浦の浜木綿百重なす心は思へど直に逢はぬかも

[仮名]

みくまのの うらのはまゆふ ももへなす こころはもへど ただにあはぬかも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:柿本人麻呂 恋情 挽歌発想 贈答 紀州 和歌山 羈旅 序詞 地名 植物

497

[題詞]

柿本朝臣人麻呂歌四首

[原文]

古尓 有兼人毛 如吾歟 妹尓戀乍 宿不勝家牟

[訓読]

いにしへにありけむ人も我がごとか妹に恋ひつつ寐ねかてずけむ

[仮名]

いにしへに ありけむひとも あがごとか いもにこひつつ いねかてずけむ

[検索用キーワード]

相聞 作者:柿本人麻呂 恋情 羈旅 和歌山 挽歌発想 昔

498

[題詞]

柿本朝臣人麻呂歌四首

[原文]

今耳之 行事庭不有 古 人曽益而 哭左倍鳴四

[訓読]

今のみのわざにはあらずいにしへの人ぞまさりて音にさへ泣きし

[仮名]

いまのみの わざにはあらず いにしへの ひとぞまさりて ねにさへなきし

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相聞 作者:柿本人麻呂 恋情 羈旅 和歌山 挽歌発想

499

[題詞]

柿本朝臣人麻呂歌四首

[原文]

百重二物 来及毳常 念鴨 公之使乃 雖見不飽有<武>

[訓読]

百重にも来及かぬかもと思へかも君が使の見れど飽かずあらむ

[仮名]

ももへにも きしかぬかもと おもへかも きみがつかひの みれどあかずあらむ

[注解]

哉→ 武 [桂][元][金][紀]

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相聞 作者:柿本人麻呂 恋情 使者

500

[題詞]

碁檀越徃伊勢國時留妻作歌一首

[原文]

神風之 伊勢乃濱荻 折伏 客宿也将為 荒濱邊尓

[訓読]

神風の伊勢の浜荻折り伏せて旅寝やすらむ荒き浜辺に

[仮名]

かむかぜの いせのはまをぎ をりふせて たびねやすらむ あらきはまへに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:碁檀越妻 伊勢 三重 羈旅 留守 枕詞 植物

501

[題詞]

柿本朝臣人麻呂歌三首

[原文]

未通女等之 袖振山乃 水垣之 久時従 憶寸吾者

[訓読]

娘子らが袖布留山の瑞垣の久しき時ゆ思ひき我れは

[仮名]

をとめらが そでふるやまの みづかきの ひさしきときゆ おもひきわれは

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:柿本人麻呂 歌垣 枕詞 序詞

502

[題詞]

柿本朝臣人麻呂歌三首

[原文]

夏野去 小<壮>鹿之角乃 束間毛 妹之心乎 忘而念哉

[訓読]

夏野行く牡鹿の角の束の間も妹が心を忘れて思へや

[仮名]

なつのゆく をしかのつのの つかのまも いもがこころを わすれておもへや

[注解]

牡 →壯 [金][紀]

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相聞 作者:柿本人麻呂 恋情 動物 序詞

503

[題詞]

柿本朝臣人麻呂歌三首

[原文]

珠衣乃 狭藍左謂沈 家妹尓 物不語来而 思金津裳

[訓読]

玉衣のさゐさゐしづみ家の妹に物言はず来にて思ひかねつも

[仮名]

たまきぬの さゐさゐしづみ いへのいもに ものいはずきにて おもひかねつも

[検索用キーワード]

相聞 作者:柿本人麻呂 恋情 別離 悲別 出発 羈旅

504

[題詞]

柿本朝臣人麻呂妻歌一首

[原文]

君家尓 吾住坂乃 家道乎毛 吾者不忘 命不死者

[訓読]

君が家に我が住坂の家道をも我れは忘れじ命死なずは

[仮名]

きみがいへに わがすみさかの いへぢをも われはわすれじ いのちしなずは

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

相聞 作者:柿本人麻呂妻 宇陀 恋情 難解 地名

505

[題詞]

安倍女郎歌二首

[原文]

今更 何乎可将念 打靡 情者君尓 縁尓之物乎

[訓読]

今さらに何をか思はむうち靡き心は君に寄りにしものを

[仮名]

いまさらに なにをかおもはむ うちなびき こころはきみに よりにしものを

[検索用キーワード]

相聞 作者:安倍女郎 恋情

506

[題詞]

安倍女郎歌二首

[原文]

吾背子波 物莫念 事之有者 火尓毛水尓<母> 吾莫七國

[訓読]

我が背子は物な思ひそ事しあらば火にも水にも我れなけなくに

[仮名]

わがせこは ものなおもひそ ことしあらば ひにもみづにも われなけなくに

[注解]

毛 →母 [桂][元][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:安倍女郎 恋情

507

[題詞]

駿河F女歌一首

[原文]

敷細乃 枕従久<々>流 涙二曽 浮宿乎思家類 戀乃繁尓

[訓読]

敷栲の枕ゆくくる涙にぞ浮寝をしける恋の繁きに

[仮名]

しきたへの まくらゆくくる なみたにぞ うきねをしける こひのしげきに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 久→ 々 [元][金][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:駿河F女 恋情 枕詞

508

[題詞]

三方沙弥歌一首

[原文]

衣手乃 別今夜従 妹毛吾母 甚戀名 相因乎奈美

[訓読]

衣手の別かる今夜ゆ妹も我れもいたく恋ひむな逢ふよしをなみ

[仮名]

ころもでの わかるこよひゆ いももあれも いたくこひむな あふよしをなみ

[注解]

母 [金][紀][細] 毛

[検索用キーワード]

相聞 作者:三方沙弥 恋情 別離 羈旅 枕詞

509

[題詞]

丹比真人笠麻呂下筑紫國時作歌一首[并短歌]

[原文]

臣女乃 匣尓乗有 鏡成 見津乃濱邊尓 狭丹頬相 紐解不離 吾妹兒尓 戀乍居者 明晩乃 旦霧隠 鳴多頭乃 哭耳之所哭 吾戀流 干重乃一隔母 名草漏 情毛有哉跡 家當 吾立見者 青旗乃 葛木山尓 多奈引流 白雲隠 天佐我留 夷乃國邊尓 直向 淡路乎過 粟嶋乎 背尓見管 朝名寸二 水手之音喚 暮名寸二 梶之聲為乍 浪上乎 五十行左具久美 磐間乎 射徃廻 稲日都麻 浦箕乎過而 鳥自物 魚津左比去者 家乃嶋 荒礒之宇倍尓 打靡 四時二生有 莫告我 奈騰可聞妹尓 不告来二計謀

[訓読]

臣の女の 櫛笥に乗れる 鏡なす 御津の浜辺に さ丹つらふ 紐解き放けず 我妹子に 恋ひつつ居れば 明け暮れの 朝霧隠り 鳴く鶴の 音のみし泣かゆ 我が恋ふる 千重の一重も 慰もる 心もありやと 家のあたり 我が立ち見れば 青旗の 葛城山に たなびける 白雲隠る 天さがる 鄙の国辺に 直向ふ 淡路を過ぎ 粟島を そがひに見つつ 朝なぎに 水手の声呼び 夕なぎに 楫の音しつつ 波の上を い行きさぐくみ 岩の間を い行き廻り 稲日都麻 浦廻を過ぎて 鳥じもの なづさひ行けば 家の島 荒磯の上に うち靡き 繁に生ひたる なのりそが などかも妹に 告らず来にけむ

[仮名]

おみのめの くしげにのれる かがみなす みつのはまべに さにつらふ ひもときさけず わぎもこに こひつつをれば あけくれの あさぎりごもり なくたづの ねのみしなかゆ あがこふる ちへのひとへも なぐさもる こころもありやと いへのあたり わがたちみれば あをはたの かづらきやまに たなびける しらくもがくる あまさがる ひなのくにべに ただむかふ あはぢをすぎ あはしまを そがひにみつつ あさなぎに かこのこゑよび ゆふなぎに かぢのおとしつつ なみのうへを いゆきさぐくみ いはのまを いゆきもとほり いなびつま うらみをすぎて とりじもの なづさひゆけば いへのしま ありそのうへに うちなびき しじにおひたる なのりそが などかもいもに のらずきにけむ

[注解]

短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:丹比笠麻呂 羈旅 恋情 別離 望郷 枕詞 地名 植物 大阪 兵庫 道行き

510

[題詞]

(丹比真人笠麻呂下筑紫國時作歌一首[并短歌])反歌

[原文]

白<細>乃 袖解更而 還来武 月日乎數而 徃而来猿尾

[訓読]

白栲の袖解き交へて帰り来む月日を数みて行きて来ましを

[仮名]

しろたへの そでときかへて かへりこむ つきひをよみて ゆきてこましを

[注解]

歌 [西] 謌 / 妙→ 細 [元][紀][類][古]

[検索用キーワード]

相聞 作者:丹比笠麻呂 羈旅 別離 枕詞

511

[題詞]

幸伊勢國時當麻麻呂大夫妻作歌一首

[原文]

吾背子者 何處将行 己津物 隠之山乎 今日歟超良<武>

[訓読]

我が背子はいづく行くらむ沖つ藻の名張の山を今日か越ゆらむ

[仮名]

わがせこは いづくゆくらむ おきつもの なばりのやまを けふかこゆらむ

[注解]

歌 [西] 謌 / 哉→ 武 [西(訂正)][元][金][類]

[検索用キーワード]

相聞 作者:當麻麻呂妻 行幸 伊勢 留守 重出 枕詞 地名

512

[題詞]

草嬢歌一首

[原文]

秋田之 穂田乃苅婆加 香縁相者 彼所毛加人之 吾乎事将成

[訓読]

秋の田の穂田の刈りばかか寄りあはばそこもか人の我を言成さむ

[仮名]

あきのたの ほたのかりばか かよりあはば そこもかひとの わをことなさむ

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

相聞 作者:草嬢 恋情 うわさ 序詞

513

[題詞]

志貴皇子御歌一首

[原文]

大原之 此市柴乃 何時鹿跡 吾念妹尓 今夜相有香裳

[訓読]

大原のこのいち柴のいつしかと我が思ふ妹に今夜逢へるかも

[仮名]

おほはらの このいちしばの いつしかと あがおもふいもに こよひあへるかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:志貴皇子 恋情 逢会 植物 序詞

514

[題詞]

阿倍女郎歌一首

[原文]

吾背子之 盖世流衣之 針目不落 入尓家良之 我情副

[訓読]

我が背子が着せる衣の針目おちず入りにけらしも我が心さへ

[仮名]

わがせこが けせるころもの はりめおちず いりにけらしも あがこころさへ

[注解]

歌 [西] 謌 / 入 [紀] 入来

[検索用キーワード]

相聞 作者:阿倍女郎 恋情

515

[題詞]

中臣朝臣東人贈阿倍女郎歌一首

[原文]

獨宿而 絶西紐緒 忌見跡 世武為便不知 哭耳之曽泣

[訓読]

ひとり寝て絶えにし紐をゆゆしみと為むすべ知らに音のみしぞ泣く

[仮名]

ひとりねて たえにしひもを ゆゆしみと せむすべしらに ねのみしぞなく

[検索用キーワード]

相聞 作者:中臣東人 阿倍女郎 恋情 不安 不吉 贈答

516

[題詞]

阿倍女郎答歌一首

[原文]

吾以在 三相二搓流 絲用而 附手益物 今曽悔寸

[訓読]

我が持てる三相に搓れる糸もちて付けてましもの今ぞ悔しき

[仮名]

わがもてる みつあひによれる いともちて つけてましもの いまぞくやしき

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:阿倍女郎 中臣東人 贈答

517

[題詞]

大納言兼大将軍大伴卿歌一首

[原文]

神樹尓毛 手者觸云乎 打細丹 人妻跡云者 不觸物可聞

[訓読]

神木にも手は触るといふをうつたへに人妻といへば触れぬものかも

[仮名]

かむきにも てはふるといふを うつたへに ひとづまといへば ふれぬものかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴安麻呂 人妻

518

[題詞]

石川郎女歌一首 [即佐保大伴大家也]

[原文]

春日野之 山邊道乎 与曽理無 通之君我 不所見許呂香聞

[訓読]

春日野の山辺の道をよそりなく通ひし君が見えぬころかも

[仮名]

かすがのの やまへのみちを よそりなく かよひしきみが みえぬころかも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 与 [西(貼紙)][元] 於

[検索用キーワード]

相聞 作者:石川郎女(邑婆) 大伴安麻呂 地名 奈良

519

[題詞]

大伴女郎歌一首 [今城王之母也今城王後賜大原真人氏也]

[原文]

雨障 常為公者 久堅乃 昨夜雨尓 将懲鴨

[訓読]

雨障み常する君はひさかたの昨夜の夜の雨に懲りにけむかも

[仮名]

あまつつみ つねするきみは ひさかたの きぞのよのあめに こりにけむかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴女郎 勧誘

520

[題詞]

(大伴女郎歌一首 [今城王之母也今城王後賜大原真人氏也])後人追同歌一首

[原文]

久堅乃 雨毛落<粳> 雨乍見 於君副而 此日令晩

[訓読]

ひさかたの雨も降らぬか雨障み君にたぐひてこの日暮らさむ

[仮名]

ひさかたの あめもふらぬか あまつつみ きみにたぐひて このひくらさむ

[注解]

糠→ 粳 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴女郎 追同 枕詞

521

[題詞]

藤原宇合大夫遷任上京時常陸娘子贈歌一首

[原文]

庭立 麻手苅干 布<暴> 東女乎 忘賜名

[訓読]

庭に立つ麻手刈り干し布曝す東女を忘れたまふな

[仮名]

にはにたつ あさでかりほし ぬのさらす あづまをみなを わすれたまふな

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 慕→ 暴 [元]

[検索用キーワード]

相聞 作者:常陸娘子 藤原宇合 餞別 植物

522

[題詞]

京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也]

[原文]

D嬬等之 珠篋有 玉櫛乃 神家武毛 妹尓阿波受有者

[訓読]

娘子らが玉櫛笥なる玉櫛の神さびけむも妹に逢はずあれば

[仮名]

をとめらが たまくしげなる たまくしの かむさびけむも いもにあはずあれば

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:藤原麻呂 坂上郎女 枕詞 序詞 贈答

523

[題詞]

(京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])

[原文]

好渡 人者年母 有云乎 何時間曽毛 吾戀尓来

[訓読]

よく渡る人は年にもありといふをいつの間にぞも我が恋ひにける

[仮名]

よくわたる ひとはとしにも ありといふを いつのまにぞも あがこひにける

[検索用キーワード]

相聞 作者:藤原麻呂 坂上郎女 贈答

524

[題詞]

(京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])

[原文]

蒸被 奈胡也我下丹 雖臥 与妹不宿者 肌之寒霜

[訓読]

むし衾なごやが下に伏せれども妹とし寝ねば肌し寒しも

[仮名]

むしふすま なごやがしたに ふせれども いもとしねねば はだしさむしも

[検索用キーワード]

相聞 作者:藤原麻呂 坂上郎女 孤独 贈答

525

[題詞]

(京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])大伴郎女和歌四首

[原文]

狭穂河乃 小石踐渡 夜干玉之 黒馬之来夜者 年尓母有粳

[訓読]

佐保川の小石踏み渡りぬばたまの黒馬来る夜は年にもあらぬか

[仮名]

さほがはの こいしふみわたり ぬばたまの くろまくるよは としにもあらぬか

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 藤原麻呂 恋情 贈答 地名 奈良 動物 枕詞

526

[題詞]

(京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])大伴郎女和歌四首

[原文]

千鳥鳴 佐保乃河瀬之 小浪 止時毛無 吾戀者

[訓読]

千鳥鳴く佐保の川瀬のさざれ波やむ時もなし我が恋ふらくは

[仮名]

ちどりなく さほのかはせの さざれなみ やむときもなし あがこふらくは

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 藤原麻呂 恋情 贈答 枕詞 動物 枕詞 地名 奈良

527

[題詞]

(京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])大伴郎女和歌四首

[原文]

将来云毛 不来時有乎 不来云乎 将来常者不待 不来云物乎

[訓読]

来むと言ふも来ぬ時あるを来じと言ふを来むとは待たじ来じと言ふものを

[仮名]

こむといふも こぬときあるを こじといふを こむとはまたじ こじといふものを

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 藤原麻呂 贈答

528

[題詞]

(京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])大伴郎女和歌四首

[原文]

千鳥鳴 佐保乃河門乃 瀬乎廣弥 打橋渡須 奈我来跡念者

[訓読]

千鳥鳴く佐保の川門の瀬を広み打橋渡す汝が来と思へば

[仮名]

ちどりなく さほのかはとの せをひろみ うちはしわたす ながくとおもへば

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 藤原麻呂 川渡り 贈答 動物 枕詞 奈良 地名

529

[題詞]

又大伴坂上郎女歌一首

[原文]

佐保河乃 涯之官能 <少>歴木莫苅焉 在乍毛 張之来者 立隠金

[訓読]

佐保川の岸のつかさの柴な刈りそねありつつも春し来たらば立ち隠るがね

[仮名]

さほがはの きしのつかさの しばなかりそね ありつつも はるしきたらば たちかくるがね

[注解]

小→ 少 [桂][元][古][紀]

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相聞 作者:坂上郎女 野遊び 奈良 地名 植物 贈答

530

[題詞]

天皇賜海上女王御歌一首 [寧樂宮即位天皇也]

[原文]

赤駒之 越馬柵乃 緘結師 妹情者 疑毛奈思

[訓読]

赤駒の越ゆる馬柵の標結ひし妹が心は疑ひもなし

[仮名]

あかごまの こゆるうませの しめゆひし いもがこころは うたがひもなし

[注解]

歌 [西] 謌

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相聞 作者:聖武天皇 海上女王 動物 序詞 贈答

531

[題詞]

(天皇賜海上女王御歌一首 [寧樂宮即位天皇也])海上<王>奉和歌一首 [志貴皇子之女也]

[原文]

梓弓 爪引夜音之 遠音尓毛 君之御幸乎 聞之好毛

[訓読]

梓弓爪引く夜音の遠音にも君が御幸を聞かくしよしも

[仮名]

あづさゆみ つまびくよおとの とほとにも きみがみゆきを きかくしよしも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 女王→ 王 [桂][元][古][紀]

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相聞 作者:聖武天皇 海上女王 贈答

532

[題詞]

大伴宿奈麻呂宿祢歌二首 [佐保大納言<卿>之第三子也]

[原文]

打日指 宮尓行兒乎 真悲見 留者苦 聴去者為便無

[訓読]

うちひさす宮に行く子をま悲しみ留むれば苦し遣ればすべなし

[仮名]

うちひさす みやにゆくこを まかなしみ とむればくるし やればすべなし

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <>→ 卿 [西(右書)][桂] / <> → 之 [桂][紀]

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相聞 作者:大伴宿奈麻呂 枕詞

533

[題詞]

大伴宿奈麻呂宿祢歌二首 [佐保大納言<卿>之第三子也]

[原文]

難波方 塩干之名凝 飽左右二 人之見兒乎 吾四乏毛

[訓読]

難波潟潮干のなごり飽くまでに人の見る子を我れし羨しも

[仮名]

なにはがた しほひのなごり あくまでに ひとのみるこを われしともしも

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相聞 作者:大伴宿奈麻呂 大阪 地名 序詞

534

[題詞]

安貴王歌一首[并短歌]

[原文]

遠嬬 此間不在者 玉桙之 道乎多遠見 思空 安莫國 嘆虚 不安物乎 水空徃 雲尓毛欲成 高飛 鳥尓毛欲成 明日去而 於妹言問 為吾 妹毛事無 為妹 吾毛事無久 今裳見如 副而毛欲得

[訓読]

遠妻の ここにしあらねば 玉桙の 道をた遠み 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 苦しきものを み空行く 雲にもがも 高飛ぶ 鳥にもがも 明日行きて 妹に言どひ 我がために 妹も事なく 妹がため 我れも事なく 今も見るごと たぐひてもがも

[仮名]

とほづまの ここにしあらねば たまほこの みちをたどほみ おもふそら やすけなくに なげくそら くるしきものを みそらゆく くもにもがも たかとぶ とりにもがも あすゆきて いもにことどひ あがために いももことなく いもがため あれもことなく いまもみるごと たぐひてもがも

[注解]

歌 [西] 謌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌

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相聞 作者:安貴王 因幡八上釆女 恋情 離別 枕詞 悲別

535

[題詞]

(安貴王歌一首[并短歌])反歌

[原文]

敷細乃 手枕不纒 間置而 年曽經来 不相念者

[訓読]

敷栲の手枕まかず間置きて年ぞ経にける逢はなく思へば

[仮名]

しきたへの たまくらまかず あひだおきて としぞへにける あはなくおもへば

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相聞 作者:安貴王 因幡八上釆女 離別 恋情 枕詞 悲別

536

[題詞]

門部王戀歌一首

[原文]

飫宇能海之 塩干乃<鹵>之 片念尓 思哉将去 道之永手呼

[訓読]

意宇の海の潮干の潟の片思に思ひや行かむ道の長手を

[仮名]

おうのうみの しほひのかたの かたもひに おもひやゆかむ みちのながてを

[注解]

歌 [西] 謌 / 滷→鹵 [桂][元] / 歌 [西] 謌

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相聞 作者:門部王 恋情 島根 地名 序詞

537

[題詞]

高田女王贈今城王歌六首

[原文]

事清 甚毛莫言 一日太尓 君伊之哭者 痛寸<敢>物

[訓読]

言清くいたもな言ひそ一日だに君いしなくはあへかたきかも

[仮名]

こときよく いともないひそ ひとひだに きみいしなくは あへかたきかも

[注解]

取→ 敢 [古義][新考][菊沢季生]

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相聞 作者:高田女王 今城王 恋情 贈答

538

[題詞]

高田女王贈今城王歌六首

[原文]

他辞乎 繁言痛 不相有寸 心在如 莫思吾背<子>

[訓読]

人言を繁み言痛み逢はずありき心あるごとな思ひ我が背子

[仮名]

ひとごとを しげみこちたみ あはずありき こころあるごと なおもひわがせこ

[注解]

<> →子 [西(追補)][桂][紀]

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相聞 作者:高田女王 今城王 うわさ 贈答

539

[題詞]

高田女王贈今城王歌六首

[原文]

吾背子師 遂常云者 人事者 繁有登毛 出而相麻志<乎>

[訓読]

我が背子し遂げむと言はば人言は繁くありとも出でて逢はましを

[仮名]

わがせこし とげむといはば ひとごとは しげくありとも いでてあはましを

[注解]

呼→ 乎 [桂][元][紀][温]

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相聞 作者:高田女王 今城王 うわさ 贈答

540

[題詞]

高田女王贈今城王歌六首

[原文]

吾背子尓 復者不相香常 思墓 今朝別之 為便無有都流

[訓読]

我が背子にまたは逢はじかと思へばか今朝の別れのすべなかりつる

[仮名]

わがせこに またはあはじか とおもへばか けさのわかれの すべなかりつる

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相聞 作者:高田女王 今城王 恋情 別れ 贈答

541

[題詞]

高田女王贈今城王歌六首

[原文]

現世尓波 人事繁 来生尓毛 将相吾背子 今不有十方

[訓読]

この世には人言繁し来む世にも逢はむ我が背子今ならずとも

[仮名]

このよには ひとごとしげし こむよにも あはむわがせこ いまならずとも

[検索用キーワード]

相聞 作者:高田女王 今城王 うわさ 贈答

542

[題詞]

高田女王贈今城王歌六首

[原文]

常不止 通之君我 使不来 今者不相跡 絶多比奴良思

[訓読]

常やまず通ひし君が使ひ来ず今は逢はじとたゆたひぬらし

[仮名]

つねやまず かよひしきみが つかひこず いまはあはじと たゆたひぬらし

[検索用キーワード]

相聞 作者:高田女王 今城王 贈答

543

[題詞]

神龜元年甲子冬十月幸紀伊國之時為贈従駕人所誂娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>

[原文]

天皇之 行幸乃随意 物部乃 八十伴雄与 出去之 愛夫者 天翔哉 軽路従 玉田次 畝火乎見管 麻裳吉 木道尓入立 真土山 越良武公者 黄葉乃 散飛見乍 親 吾者不念 草枕 客乎便宜常 思乍 公将有跡 安蘇々二破 且者雖知 之加須我仁 黙然得不在者 吾背子之 徃乃萬々 将追跡者 千遍雖念 手<弱>女 吾身之有者 道守之 将問答乎 言将遣 為便乎不知跡 立而爪衝

[訓読]

大君の 行幸のまにま もののふの 八十伴の男と 出で行きし 愛し夫は 天飛ぶや 軽の路より 玉たすき 畝傍を見つつ あさもよし 紀路に入り立ち 真土山 越ゆらむ君は 黄葉の 散り飛ぶ見つつ にきびにし 我れは思はず 草枕 旅をよろしと 思ひつつ 君はあらむと あそそには かつは知れども しかすがに 黙もえあらねば 我が背子が 行きのまにまに 追はむとは 千たび思へど 手弱女の 我が身にしあれば 道守の 問はむ答へを 言ひやらむ すべを知らにと 立ちてつまづく

[仮名]

おほきみの みゆきのまにま もののふの やそとものをと いでゆきし うるはしづまは あまとぶや かるのみちより たまたすき うねびをみつつ あさもよし きぢにいりたち まつちやま こゆらむきみは もみちばの ちりとぶみつつ にきびにし われはおもはず くさまくら たびをよろしと おもひつつ きみはあらむと あそそには かつはしれども しかすがに もだもえあらねば わがせこが ゆきのまにまに おはむとは ちたびおもへど たわやめの わがみにしあれば みちもりの とはむこたへを いひやらむ すべをしらにと たちてつまづく

[注解]

笠朝臣金村作歌 →作歌 [桂][元] / <> →笠朝臣金村 [桂][元] / 嫋 →弱 [桂][元][類][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠金村 代作 行幸 紀伊 妻 都 羈旅 枕詞 地名 神亀1年10月 年紀

544

[題詞]

(神龜元年甲子冬十月幸紀伊國之時為贈従駕人所誂娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>)反歌

[原文]

後居而 戀乍不有者 木國乃 妹背乃山尓 有益物乎

[訓読]

後れ居て恋ひつつあらずは紀の国の妹背の山にあらましものを

[仮名]

おくれゐて こひつつあらずは きのくにの いもせのやまに あらましものを

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠金村 代作 行幸 紀伊 和歌山 妻 羈旅 地名 神亀1年10月 年紀

545

[題詞]

((神龜元年甲子冬十月幸紀伊國之時為贈従駕人所誂娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>)反歌)

[原文]

吾背子之 跡履求 追去者 木乃關守伊 将留鴨

[訓読]

我が背子が跡踏み求め追ひ行かば紀の関守い留めてむかも

[仮名]

わがせこが あとふみもとめ おひゆかば きのせきもりい とどめてむかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠金村 代作 行幸 紀伊 和歌山 妻 羈旅 地名 神亀1年10月 年紀

546

[題詞]

二年乙丑春三月幸三香原離宮之時得娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>

[原文]

三香<乃>原 客之屋取尓 珠桙乃 道能去相尓 天雲之 外耳見管 言将問 縁乃無者 情耳 咽乍有尓 天地 神祇辞因而 敷細乃 衣手易而 自妻跡 憑有今夜 秋夜之 百夜乃長 有与宿鴨

[訓読]

三香の原 旅の宿りに 玉桙の 道の行き逢ひに 天雲の 外のみ見つつ 言問はむ よしのなければ 心のみ 咽せつつあるに 天地の 神言寄せて 敷栲の 衣手交へて 己妻と 頼める今夜 秋の夜の 百夜の長さ ありこせぬかも

[仮名]

みかのはら たびのやどりに たまほこの みちのゆきあひに あまくもの よそのみみつつ こととはむ よしのなければ こころのみ むせつつあるに あめつちの かみことよせて しきたへの ころもでかへて おのづまと たのめるこよひ あきのよの ももよのながさ ありこせぬかも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 笠朝臣金村作歌→作歌 [桂][元][紀] / <> →笠朝臣金村 [桂][元][紀] / 之→乃 [桂][元]

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠金村 行幸 久邇京 京都 地名 枕詞 神亀2年3月 年紀

547

[題詞]

(二年乙丑春三月幸三香原離宮之時得娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>)反歌

[原文]

天雲之 外従見 吾妹兒尓 心毛身副 縁西鬼尾

[訓読]

天雲の外に見しより我妹子に心も身さへ寄りにしものを

[仮名]

あまくもの よそにみしより わぎもこに こころもみさへ よりにしものを

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠金村 行幸 久邇京 京都 枕詞 地名 神亀2年3月

548

[題詞]

(二年乙丑春三月幸三香原離宮之時得娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>)反歌

[原文]

今夜之 早開者 為便乎無三 秋百夜乎 願鶴鴨

[訓読]

今夜の早く明けなばすべをなみ秋の百夜を願ひつるかも

[仮名]

こよひの はやくあけなば すべをなみ あきのももよを ねがひつるかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠金村 行幸 久邇京 京都 地名 神亀2年3月

549

[題詞]

五年戊辰<大>宰少貳石川足人朝臣遷任餞于筑前國蘆城驛家歌三首

[原文]

天地之 神毛助与 草枕 羈行君之 至家左右

[訓読]

天地の神も助けよ草枕旅行く君が家にいたるまで

[仮名]

あめつちの かみもたすけよ くさまくら たびゆくきみが いへにいたるまで

[注解]

歌 [西] 謌 / 太→ 大 [桂][元][紀]

[検索用キーワード]

相聞 石川足人 餞別 羈旅 枕詞 福岡 地名 神亀5年 年紀

550

[題詞]

五年戊辰<大>宰少貳石川足人朝臣遷任餞于筑前國蘆城驛家歌三首

[原文]

大船之 念憑師 君之去者 吾者将戀名 直相左右二

[訓読]

大船の思ひ頼みし君が去なば我れは恋ひむな直に逢ふまでに

[仮名]

おほぶねの おもひたのみし きみがいなば あれはこひむな ただにあふまでに

[検索用キーワード]

相聞 石川足人 餞別 羈旅 恋情 福岡 地名 神亀5年 年紀

551

[題詞]

五年戊辰<大>宰少貳石川足人朝臣遷任餞于筑前國蘆城驛家歌三首

[原文]

山跡道之 嶋乃浦廻尓 縁浪 間無牟 吾戀巻者

[訓読]

大和道の島の浦廻に寄する波間もなけむ我が恋ひまくは

[仮名]

やまとぢの しまのうらみに よするなみ あひだもなけむ あがこひまくは

[検索用キーワード]

相聞 石川足人 餞別 羈旅 序詞 恋情 福岡 地名 神亀5年

552

[題詞]

大伴宿祢三依歌一首

[原文]

吾君者 和氣乎波死常 念可毛 相夜不相<夜> 二走良武

[訓読]

我が君はわけをば死ねと思へかも逢ふ夜逢はぬ夜二走るらむ

[仮名]

あがきみは わけをばしねと おもへかも あふよあはぬよ ふたはしるらむ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> → 夜 [西(右書)][桂][元]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴三依 怨恨 恋情

553

[題詞]

丹生女王贈<大>宰帥大伴卿歌二首

[原文]

天雲乃 遠隔乃極 遠鷄跡裳 情志行者 戀流物可聞

[訓読]

天雲のそくへの極み遠けども心し行けば恋ふるものかも

[仮名]

あまくもの そくへのきはみ とほけども こころしゆけば こふるものかも

[注解]

太 → 大 [桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:丹生女王 大伴旅人 羈旅 贈答 恋情

554

[題詞]

丹生女王贈<大>宰帥大伴卿歌二首

[原文]

古人乃 令食有 吉備能酒 <病>者為便無 貫簀賜牟

[訓読]

古人のたまへしめたる吉備の酒病めばすべなし貫簀賜らむ

[仮名]

ふるひとの たまへしめたる きびのさけ やめばすべなし ぬきすたばらむ

[注解]

痛 → 病 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:丹生女王 大伴旅人 贈答

555

[題詞]

<大>宰帥大伴卿贈大貳丹比縣守卿遷任民部卿歌一首

[原文]

為君 醸之待酒 安野尓 獨哉将飲 友無二思手

[訓読]

君がため醸みし待酒安の野にひとりや飲まむ友なしにして

[仮名]

きみがため かみしまちざけ やすののに ひとりやのまむ ともなしにして

[注解]

太→ 大 [桂][元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴旅人 丹比縣守 餞別 送別 太宰府 福岡 地名

556

[題詞]

賀茂女王贈大伴宿祢三依歌一首 [故左大臣長屋王之女也]

[原文]

筑紫船 未毛不来者 豫 荒振公乎 見之悲左

[訓読]

筑紫船いまだも来ねばあらかじめ荒ぶる君を見るが悲しさ

[仮名]

つくしふね いまだもこねば あらかじめ あらぶるきみを みるがかなしさ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:賀茂女王 大伴三依 恨み 離別 贈答

557

[題詞]

土師宿祢水<道>従筑紫上京海路作歌二首

[原文]

大船乎 榜乃進尓 磐尓觸 覆者覆 妹尓因而者

[訓読]

大船を漕ぎの進みに岩に触れ覆らば覆れ妹によりては

[仮名]

おほぶねを こぎのすすみに いはにふれ かへらばかへれ いもによりては

[注解]

通 道 [桂][元] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:土師水道 羈旅 送別 餞別 太宰府 福岡

558

[題詞]

土師宿祢水<道>従筑紫上京海路作歌二首

[原文]

千磐破 神之社尓 我<挂>師 幣者将賜 妹尓不相國

[訓読]

ちはやぶる神の社に我が懸けし幣は賜らむ妹に逢はなくに

[仮名]

ちはやぶる かみのやしろに わがかけし ぬさはたばらむ いもにあはなくに

[注解]

掛→ 挂 [桂][元][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:土師水道 送別 太宰府 福岡 餞別 枕詞

559

[題詞]

<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首

[原文]

事毛無 生来之物乎 老奈美尓 如是戀<乎>毛 吾者遇流香聞

[訓読]

事もなく生き来しものを老いなみにかかる恋にも我れは逢へるかも

[仮名]

こともなく いきこしものを おいなみに かかるこひにも われはあへるかも

[注解]

太→ 大 [桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 于→ 乎 [桂][元][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴百代 老齢 恋情

560

[題詞]

<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首

[原文]

孤悲死牟 後者何為牟 生日之 為社妹乎 欲見為礼

[訓読]

恋ひ死なむ後は何せむ生ける日のためこそ妹を見まく欲りすれ

[仮名]

こひしなむ のちはなにせむ いけるひの ためこそいもを みまくほりすれ

[注解]

後 [元][桂][紀] 時

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴百代 恋情

561

[題詞]

<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首

[原文]

不念乎 思常云者 大野有 三笠社之 神思知三

[訓読]

思はぬを思ふと言はば大野なる御笠の杜の神し知らさむ

[仮名]

おもはぬを おもふといはば おほのなる みかさのもりの かみししらさむ

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴百代 福岡 太宰府 地名 恋情

562

[題詞]

<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首

[原文]

無暇 人之眉根乎 徒 令掻乍 不相妹可聞

[訓読]

暇なく人の眉根をいたづらに掻かしめつつも逢はぬ妹かも

[仮名]

いとまなく ひとのまよねを いたづらに かかしめつつも あはぬいもかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴百代 怨恨 恋情

563

[題詞]

大伴坂上郎女歌二首

[原文]

黒髪二 白髪交 至耆 如是有戀庭 未相尓

[訓読]

黒髪に白髪交り老ゆるまでかかる恋にはいまだ逢はなくに

[仮名]

くろかみに しろかみまじり おゆるまで かかるこひには いまだあはなくに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 老齢 恋情

564

[題詞]

大伴坂上郎女歌二首

[原文]

山菅<之> 實不成事乎 吾尓所依 言礼師君者 与孰可宿良牟

[訓読]

山菅の実ならぬことを我れに寄せ言はれし君は誰れとか寝らむ

[仮名]

やますげの みならぬことを われによせ いはれしきみは たれとかぬらむ

[注解]

乃→ 之 [桂][類][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 戯笑 怨恨 植物 恋愛

565

[題詞]

賀茂女王歌一首

[原文]

大伴乃 見津跡者不云 赤根指 照有月夜尓 直相在登聞

[訓読]

大伴の見つとは言はじあかねさし照れる月夜に直に逢へりとも

[仮名]

おほともの みつとはいはじ あかねさし てれるつくよに ただにあへりとも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:賀茂女王 うわさ 枕詞 掛詞 地名 大阪 恋愛

566

[題詞]

<大>宰大監大伴宿祢百代等贈驛使歌二首

[原文]

草枕 羈行君乎 愛見 副而曽来四 鹿乃濱邊乎

[訓読]

草枕旅行く君を愛しみたぐひてぞ来し志賀の浜辺を

[仮名]

くさまくら たびゆくきみを うるはしみ たぐひてぞこし しかのはまべを

[注解]

太 → 大 [桂][元][類] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴百代 送別 羈旅 恋情 枕詞 贈答

567

[題詞]

<大>宰大監大伴宿祢百代等贈驛使歌二首

[原文]

周防在 磐國山乎 将超日者 手向好為与 荒其<道>

[訓読]

周防なる磐国山を越えむ日は手向けよくせよ荒しその道

[仮名]

すはなる いはくにやまを こえむひは たむけよくせよ あらしそのみち

[注解]

庭→道 [西(貼紙)][桂][元] / 蒸→丞 [桂] / 看 →省 [桂][元][紀] / 句→旬 [桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴百代 送別 羈旅 安全 山口 地名

568

[題詞]

<大>宰帥大伴卿被任大納言臨入京之時府官人等餞卿筑前國蘆城驛家歌四首

[原文]

三埼廻之 荒礒尓縁 五百重浪 立毛居毛 我念流吉美

[訓読]

み崎廻の荒磯に寄する五百重波立ちても居ても我が思へる君

[仮名]

みさきみの ありそによする いほへなみ たちてもゐても あがもへるきみ

[注解]

太→ 大 [桂][元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:門部石足 大伴旅人 餞宴 送別 恋情 序詞 福岡 地名

569

[題詞]

<大>宰帥大伴卿被任大納言臨入京之時府官人等餞卿筑前國蘆城驛家歌四首

[原文]

辛人之 衣染云 紫之 情尓染而 所念鴨

[訓読]

韓人の衣染むといふ紫の心に染みて思ほゆるかも

[仮名]

からひとの ころもそむといふ むらさきの こころにしみて おもほゆるかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:麻田陽春 大伴旅人 餞宴 恋情 送別 福岡 地名

570

[題詞]

<大>宰帥大伴卿被任大納言臨入京之時府官人等餞卿筑前國蘆城驛家歌四首

[原文]

山跡邊 君之立日乃 近付者 野立鹿毛 動而曽鳴

[訓読]

大和へに君が発つ日の近づけば野に立つ鹿も響めてぞ鳴く

[仮名]

やまとへに きみがたつひの ちかづけば のにたつしかも とよめてぞなく

[検索用キーワード]

相聞 作者:麻田陽春 大伴旅人 餞宴 恋情 送別 福岡 地名

571

[題詞]

<大>宰帥大伴卿被任大納言臨入京之時府官人等餞卿筑前國蘆城驛家歌四首

[原文]

月夜吉 河音清之 率此間 行毛不去毛 遊而将歸

[訓読]

月夜よし川の音清しいざここに行くも行かぬも遊びて行かむ

[仮名]

つくよよし かはのおときよし いざここに ゆくもゆかぬも あそびてゆかむ

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴四綱 大伴旅人 餞宴 送別 福岡 地名

572

[題詞]

<大>宰帥大伴卿上京之後沙弥満誓贈卿歌二首

[原文]

真十鏡 見不飽君尓 所贈哉 旦夕尓 左備乍将居

[訓読]

まそ鏡見飽かぬ君に後れてや朝夕にさびつつ居らむ

[仮名]

まそかがみ みあかぬきみに おくれてや あしたゆふへに さびつつをらむ

[注解]

太→大 [桂][元][類] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:沙弥満誓 大伴旅人 恋情 送別 枕詞 福岡 地名

573

[題詞]

<大>宰帥大伴卿上京之後沙弥満誓贈卿歌二首

[原文]

野干玉之 黒髪變 白髪手裳 痛戀庭 相時有来

[訓読]

ぬばたまの黒髪変り白けても痛き恋には逢ふ時ありけり

[仮名]

ぬばたまの くろかみかはり しらけても いたきこひには あふときありけり

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相聞 作者:沙弥満誓 大伴旅人 恋情 送別 年齢 枕詞

574

[題詞]

大納言大伴卿和歌二首

[原文]

此間在而 筑紫也何處 白雲乃 棚引山之 方西有良思

[訓読]

ここにありて筑紫やいづち白雲のたなびく山の方にしあるらし

[仮名]

ここにありて つくしやいづち しらくもの たなびくやまの かたにしあるらし

[注解]

歌 [西] 謌

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相聞 作者:大伴旅人 和歌 羈旅 福岡 地名

575

[題詞]

大納言大伴卿和歌二首

[原文]

草香江之 入江二求食 蘆鶴乃 痛多豆多頭思 友無二指天

[訓読]

草香江の入江にあさる葦鶴のあなたづたづし友なしにして

[仮名]

くさかえの いりえにあさる あしたづの あなたづたづし ともなしにして

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相聞 作者:大伴旅人 和歌 孤独 羈旅 大阪 地名 動物 序詞

576

[題詞]

<大>宰帥大伴卿上京之後筑後守葛井連大成悲嘆作歌一首

[原文]

従今者 城山道者 不樂牟 吾将通常 念之物乎

[訓読]

今よりは城の山道は寂しけむ我が通はむと思ひしものを

[仮名]

いまよりは きのやまみちは さぶしけむ わがかよはむと おもひしものを

[注解]

太→ 大 [桂][元][類] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:葛井大成 大伴旅人 愛慕 福岡 地名 恋情

577

[題詞]

大納言大伴卿新袍贈攝津大夫高安王歌一首

[原文]

吾衣 人莫著曽 網引為 難波壮士乃 手尓者雖觸

[訓読]

我が衣人にな着せそ網引する難波壮士の手には触るとも

[仮名]

あがころも ひとになきせそ あびきする なにはをとこの てにはふるとも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴旅人 高安王 大阪 地名 贈答

578

[題詞]

大伴宿祢三依悲別歌一首

[原文]

天地与 共久 住波牟等 念而有師 家之庭羽裳

[訓読]

天地とともに久しく住まはむと思ひてありし家の庭はも

[仮名]

あめつちと ともにひさしく すまはむと おもひてありし いへのにははも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴三依 大伴旅人 挽歌発想

579

[題詞]

<余>明軍與大伴宿祢家持歌二首 [明軍者大納言卿之資人也]

[原文]

奉見而 未時太尓 不更者 如年月 所念君

[訓読]

見まつりていまだ時だに変らねば年月のごと思ほゆる君

[仮名]

みまつりて いまだときだに かはらねば としつきのごと おもほゆるきみ

[注解]

金 → 余 [桂][元][古][紀]

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相聞 作者:余明軍 大伴家持

580

[題詞]

<余>明軍與大伴宿祢家持歌二首 [明軍者大納言卿之資人也]

[原文]

足引乃 山尓生有 菅根乃 懃見巻 欲君可聞

[訓読]

あしひきの山に生ひたる菅の根のねもころ見まく欲しき君かも

[仮名]

あしひきの やまにおひたる すがのねの ねもころみまく ほしききみかも

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相聞 作者:余明軍 大伴家持 植物 序詞

581

[題詞]

大伴坂上家之大娘報<贈>大伴宿祢家持歌四首

[原文]

生而有者 見巻毛不知 何如毛 将死与妹常 夢所見鶴

[訓読]

生きてあらば見まくも知らず何しかも死なむよ妹と夢に見えつる

[仮名]

いきてあらば みまくもしらず なにしかも しなむよいもと いめにみえつる

[注解]

賜→ 贈 [桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 夢 恋情 贈答

582

[題詞]

大伴坂上家之大娘報<贈>大伴宿祢家持歌四首

[原文]

大夫毛 如此戀家流乎 幼婦之 戀情尓 比有目八方

[訓読]

ますらをもかく恋ひけるをたわやめの恋ふる心にたぐひあらめやも

[仮名]

ますらをも かくこひけるを たわやめの こふるこころに たぐひあらめやも

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 贈答

583

[題詞]

大伴坂上家之大娘報<贈>大伴宿祢家持歌四首

[原文]

月草之 徙安久 念可母 我念人之 事毛告不来

[訓読]

月草のうつろひやすく思へかも我が思ふ人の言も告げ来ぬ

[仮名]

つきくさの うつろひやすく おもへかも わがおもふひとの こともつげこぬ

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 植物 枕詞 贈答

584

[題詞]

大伴坂上家之大娘報<贈>大伴宿祢家持歌四首

[原文]

春日山 朝立雲之 不居日無 見巻之欲寸 君毛有鴨

[訓読]

春日山朝立つ雲の居ぬ日なく見まくの欲しき君にもあるかも

[仮名]

かすがやま あさたつくもの ゐぬひなく みまくのほしき きみにもあるかも

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 恋情 奈良 地名 序詞 贈答

585

[題詞]

大伴坂上郎女歌一首

[原文]

出而将去 時之波将有乎 故 妻戀為乍 立而可去哉

[訓読]

出でていなむ時しはあらむをことさらに妻恋しつつ立ちていぬべしや

[仮名]

いでていなむ ときしはあらむを ことさらに つまごひしつつ たちていぬべしや

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:坂上郎女 恋愛

586

[題詞]

大伴宿祢稲公贈田村大嬢歌一首 [大伴<宿>奈麻呂卿<之>女也]

[原文]

不相見者 不戀有益乎 妹乎見而 本名如此耳 戀者奈何将為

[訓読]

相見ずは恋ひずあらましを妹を見てもとなかくのみ恋ひばいかにせむ

[仮名]

あひみずは こひずあらましを いもをみて もとなかくのみ こひばいかにせむ

[注解]

宿祢→ 宿 [西(訂正)][温][矢] / <>→ 之 [元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴稲公 坂上郎女 田村大嬢 代作 恋情 贈答

587

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

吾形見 々管之努波世 荒珠 年之緒長 吾毛将思

[訓読]

我が形見見つつ偲はせあらたまの年の緒長く我れも偲はむ

[仮名]

わがかたみ みつつしのはせ あらたまの としのをながく われもしのはむ

[注解]

歌 [西] 謌

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答 枕詞

588

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

白鳥能 飛羽山松之 待乍曽 吾戀度 此月比乎

[訓読]

白鳥の飛羽山松の待ちつつぞ我が恋ひわたるこの月ごろを

[仮名]

しらとりの とばやままつの まちつつぞ あがこひわたる このつきごろを

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答 枕詞 奈良 地名 序詞

589

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

衣手乎 打廻乃里尓 有吾乎 不知曽人者 待跡不来家留

[訓読]

衣手を打廻の里にある我れを知らにぞ人は待てど来ずける

[仮名]

ころもでを うちみのさとに あるわれを しらにぞひとは まてどこずける

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 待つ 恋情 枕詞 奈良 地名 贈答

590

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

荒玉 年之經去者 今師波登 勤与吾背子 吾<名>告為莫

[訓読]

あらたまの年の経ぬれば今しはとゆめよ我が背子我が名告らすな

[仮名]

あらたまの としのへぬれば いましはと ゆめよわがせこ わがなのらすな

[注解]

<>→ 名 [西(右書)][元][紀]

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 名 うわさ 贈答 枕詞

591

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

吾念乎 人尓令知哉 玉匣 開阿氣津跡 夢西所見

[訓読]

我が思ひを人に知るれか玉櫛笥開きあけつと夢にし見ゆる

[仮名]

わがおもひを ひとにしるれか たまくしげ ひらきあけつと いめにしみゆる

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 うわさ 贈答 枕詞

592

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

闇夜尓 鳴奈流鶴之 外耳 聞乍可将有 相跡羽奈之尓

[訓読]

闇の夜に鳴くなる鶴の外のみに聞きつつかあらむ逢ふとはなしに

[仮名]

やみのよに なくなるたづの よそのみに ききつつかあらむ あふとはなしに

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恨み 贈答 動物 序詞

593

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

君尓戀 痛毛為便無見 楢山之 小松之下尓 立嘆鴨

[訓読]

君に恋ひいたもすべなみ奈良山の小松が下に立ち嘆くかも

[仮名]

きみにこひ いたもすべなみ ならやまの こまつがしたに たちなげくかも

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 待つ 奈良 地名 植物 贈答

594

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

吾屋戸之 暮陰草乃 白露之 消蟹本名 所念鴨

[訓読]

我がやどの夕蔭草の白露の消ぬがにもとな思ほゆるかも

[仮名]

わがやどの ゆふかげくさの しらつゆの けぬがにもとな おもほゆるかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 植物 序詞 贈答

595

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

吾命之 将全<牟>限 忘目八 弥日異者 念益十方

[訓読]

我が命の全けむ限り忘れめやいや日に異には思ひ増すとも

[仮名]

わがいのちの またけむかぎり わすれめや いやひにけには おもひますとも

[注解]

幸→ 牟 [元]

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

596

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

八百日徃 濱之沙毛 吾戀二 豈不益歟 奥嶋守

[訓読]

八百日行く浜の真砂も我が恋にあにまさらじか沖つ島守

[仮名]

やほかゆく はまのまなごも あがこひに あにまさらじか おきつしまもり

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答 掛詞

597

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

宇都蝉之 人目乎繁見 石走 間近<君>尓 戀度可聞

[訓読]

うつせみの人目を繁み石橋の間近き君に恋ひわたるかも

[仮名]

うつせみの ひとめをしげみ いしはしの まちかききみに こひわたるかも

[注解]

<> →君 [西(左書)][元][紀]

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 枕詞 贈答

598

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

戀尓毛曽 人者死為 水<無>瀬河 下従吾痩 月日異

[訓読]

恋にもぞ人は死にする水無瀬川下ゆ我れ痩す月に日に異に

[仮名]

こひにもぞ ひとはしにする みなせがは したゆわれやす つきにひにけに

[注解]

<>→ 無 [桂][元][紀]

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋病 恋情 贈答

599

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

朝霧之 欝相見之 人故尓 命可死 戀渡鴨

[訓読]

朝霧のおほに相見し人故に命死ぬべく恋ひわたるかも

[仮名]

あさぎりの おほにあひみし ひとゆゑに いのちしぬべく こひわたるかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

600

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

伊勢海之 礒毛動尓 因流波 恐人尓 戀渡鴨

[訓読]

伊勢の海の礒もとどろに寄する波畏き人に恋ひわたるかも

[仮名]

いせのうみの いそもとどろに よするなみ かしこきひとに こひわたるかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 三重 地名 序詞 贈答

601

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

従情毛 吾者不念寸 山河毛 隔莫國 如是戀常羽

[訓読]

心ゆも我は思はずき山川も隔たらなくにかく恋ひむとは

[仮名]

こころゆも わはおもはずき やまかはも へだたらなくに かくこひむとは

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

602

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

暮去者 物念益 見之人乃 言問為形 面景尓而

[訓読]

夕されば物思ひまさる見し人の言とふ姿面影にして

[仮名]

ゆふされば ものもひまさる みしひとの こととふすがた おもかげにして

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

603

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

念西 死為物尓 有麻世波 千遍曽吾者 死變益

[訓読]

思ふにし死にするものにあらませば千たびぞ我れは死にかへらまし

[仮名]

おもひにし しにするものに あらませば ちたびぞわれは しにかへらまし

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

604

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

劔大刀 身尓取副常 夢見津 何如之恠曽毛 君尓相為

[訓読]

剣大刀身に取り添ふと夢に見つ何のさがぞも君に逢はむため

[仮名]

つるぎたち みにとりそふと いめにみつ なにのさがぞも きみにあはむため

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 夢 恋情 贈答

605

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

天地之 神理 無者社 吾念君尓 不相死為目

[訓読]

天地の神の理なくはこそ我が思ふ君に逢はず死にせめ

[仮名]

あめつちの かみのことわり なくはこそ あがおもふきみに あはずしにせめ

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

606

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

吾毛念 人毛莫忘 多奈和丹 浦吹風之 止時無有

[訓読]

我れも思ふ人もな忘れおほなわに浦吹く風のやむ時もなし

[仮名]

われもおもふ ひともなわすれ おほなわに うらふくかぜの やむときもなし

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相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

607

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

皆人乎 宿与殿金者 打礼杼 君乎之念者 寐不勝鴨

[訓読]

皆人を寝よとの鐘は打つなれど君をし思へば寐ねかてぬかも

[仮名]

みなひとを ねよとのかねは うつなれど きみをしおもへば いねかてぬかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

608

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

不相念 人乎思者 大寺之 餓鬼之後尓 額衝如

[訓読]

相思はぬ人を思ふは大寺の餓鬼の後方に額つくごとし

[仮名]

あひおもはぬ ひとをおもふは おほてらの がきのしりへに ぬかつくごとし

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恨み 贈答

609

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

従情毛 我者不念寸 又更 吾故郷尓 将還来者

[訓読]

心ゆも我は思はずきまたさらに我が故郷に帰り来むとは

[仮名]

こころゆも わはおもはずき またさらに わがふるさとに かへりこむとは

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恨み 贈答

610

[題詞]

笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首

[原文]

近有者 雖不見在乎 弥遠 君之伊座者 有不勝<自>

[訓読]

近くあれば見ねどもあるをいや遠く君がいまさば有りかつましじ

[仮名]

ちかくあれば みねどもあるを いやとほく きみがいまさば ありかつましじ

[注解]

目→ 自 [西(訂正)][元][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:笠女郎 大伴家持 恋情 贈答

611

[題詞]

(笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)大伴宿祢家持和<歌>二首

[原文]

今更 妹尓将相八跡 念可聞 幾許吾胸 欝悒将有

[訓読]

今さらに妹に逢はめやと思へかもここだ我が胸いぶせくあるらむ

[仮名]

いまさらに いもにあはめやと おもへかも ここだあがむね いぶせくあるらむ

[注解]

<>→ 歌 [西(右書)][元][金]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 笠女郎 贈答

612

[題詞]

(笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)大伴宿祢家持和<歌>二首

[原文]

中々者 黙毛有益<乎> 何為跡香 相見始兼 不遂尓

[訓読]

なかなかに黙もあらましを何すとか相見そめけむ遂げざらまくに

[仮名]

なかなかに もだもあらましを なにすとか あひみそめけむ とげざらまくに

[注解]

呼 →乎 [金][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 笠女郎 悔恨 恨み 贈答

613

[題詞]

山口女王贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

物念跡 人尓不<所>見常 奈麻強<尓> 常念弊利 在曽金津流

[訓読]

もの思ふと人に見えじとなまじひに常に思へりありぞかねつる

[仮名]

ものもふと ひとにみえじと なまじひに つねにおもへり ありぞかねつる

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> → 所 [元][金][紀] / <>→ 尓 [元][金][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:山口女王 大伴家持 恋情 贈答

614

[題詞]

山口女王贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

不相念 人乎也本名 白細之 袖漬左右二 哭耳四泣裳

[訓読]

相思はぬ人をやもとな白栲の袖漬つまでに音のみし泣くも

[仮名]

あひおもはぬ ひとをやもとな しろたへの そでひつまでに ねのみしなくも

[検索用キーワード]

相聞 作者:山口女王 大伴家持 贈答 怨恨

615

[題詞]

山口女王贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

吾背子者 不相念跡裳 敷細乃 君之枕者 夢<所>見乞

[訓読]

我が背子は相思はずとも敷栲の君が枕は夢に見えこそ

[仮名]

わがせこは あひおもはずとも しきたへの きみがまくらは いめにみえこそ

[注解]

尓→ 所 [元][金][紀]

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相聞 作者:山口女王 大伴家持 恋情 贈答 枕詞 夢

616

[題詞]

山口女王贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

劔大刀 名惜雲 吾者無 君尓不相而 年之經去礼者

[訓読]

剣太刀名の惜しけくも我れはなし君に逢はずて年の経ぬれば

[仮名]

つるぎたち なのをしけくも われはなし きみにあはずて としのへぬれば

[検索用キーワード]

相聞 作者:山口女王 大伴家持 うわさ 名 恋情 贈答

617

[題詞]

山口女王贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

従蘆邊 満来塩乃 弥益荷 念歟君之 忘金鶴

[訓読]

葦辺より満ち来る潮のいや増しに思へか君が忘れかねつる

[仮名]

あしへより みちくるしほの いやましに おもへかきみが わすれかねつる

[検索用キーワード]

相聞 作者:山口女王 大伴家持 恋情 贈答 序詞

618

[題詞]

大神女郎贈大伴宿祢家持歌一首

[原文]

狭夜中尓 友喚千鳥 物念跡 和備居時二 鳴乍本名

[訓読]

さ夜中に友呼ぶ千鳥物思ふとわびをる時に鳴きつつもとな

[仮名]

さよなかに ともよぶちとり ものもふと わびをるときに なきつつもとな

[注解]

歌 [西] 謌

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相聞 作者:大神女郎 大伴家持 恋情 動物 贈答

619

[題詞]

大伴坂上郎女怨恨歌一首[并短歌]

[原文]

押照 難波乃菅之 根毛許呂尓 君之聞四<手> 年深 長四云者 真十鏡 磨師情乎 縦手師 其日之極 浪之共 靡珠藻乃 云々 意者不持 大船乃 憑有時丹 千磐破 神哉将離 空蝉乃 人歟禁良武 通為 君毛不来座 玉梓之 使母不所見 成奴礼婆 痛毛為便無三 夜干玉乃 夜者須我良尓 赤羅引 日母至闇 雖嘆 知師乎無三 雖念 田付乎白二 幼婦常 言雲知久 手小童之 哭耳泣管 俳徊 君之使乎 待八兼手六

[訓読]

おしてる 難波の菅の ねもころに 君が聞こして 年深く 長くし言へば まそ鏡 磨ぎし心を ゆるしてし その日の極み 波の共 靡く玉藻の かにかくに 心は持たず 大船の 頼める時に ちはやぶる 神か離くらむ うつせみの 人か障ふらむ 通はしし 君も来まさず 玉梓の 使も見えず なりぬれば いたもすべなみ ぬばたまの 夜はすがらに 赤らひく 日も暮るるまで 嘆けども 験をなみ 思へども たづきを知らに たわや女と 言はくもしるく たわらはの 音のみ泣きつつ た廻り 君が使を 待ちやかねてむ

[仮名]

おしてる なにはのすげの ねもころに きみがきこして としふかく ながくしいへば まそかがみ とぎしこころを ゆるしてし そのひのきはみ なみのむた なびくたまもの かにかくに こころはもたず おほぶねの たのめるときに ちはやぶる かみかさくらむ うつせみの ひとかさふらむ かよはしし きみもきまさず たまづさの つかひもみえず なりぬれば いたもすべなみ ぬばたまの よるはすがらに あからひく ひもくるるまで なげけども しるしをなみ おもへども たづきをしらに たわやめと いはくもしるく たわらはの ねのみなきつつ たもとほり きみがつかひを まちやかねてむ

[注解]

歌 [西] / 乎→ 手 [金]

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 怨恨 恋情 挽歌的手法 枕詞

620

[題詞]

(大伴坂上郎女怨恨歌一首[并短歌])反歌

[原文]

従元 長謂管 不<令>恃者 如是念二 相益物歟

[訓読]

初めより長く言ひつつ頼めずはかかる思ひに逢はましものか

[仮名]

はじめより ながくいひつつ たのめずは かかるおもひに あはましものか

[注解]

歌 [西] 謌 / 念→ 令 [紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 悔恨 怨恨

621

[題詞]

西海道節度使判官佐伯宿祢東人妻贈夫君歌一首

[原文]

無間 戀尓可有牟 草枕 客有公之 夢尓之所見

[訓読]

間なく恋ふれにかあらむ草枕旅なる君が夢にし見ゆる

[仮名]

あひだなく こふれにかあらむ くさまくら たびなるきみが いめにしみゆる

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:佐伯東人妻 羈旅 恋情 別離 贈答 枕詞

622

[題詞]

(西海道節度使判官佐伯宿祢東人妻贈夫君歌一首)佐伯宿祢東人和歌一首

[原文]

草枕 客尓久 成宿者 汝乎社念 莫戀吾妹

[訓読]

草枕旅に久しくなりぬれば汝をこそ思へな恋ひそ我妹

[仮名]

くさまくら たびにひさしく なりぬれば なをこそおもへ なこひそわぎも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:佐伯東人 和歌 羈旅 別離 慰め 恋情 贈答 枕詞

623

[題詞]

池邊王宴誦歌一首

[原文]

松之葉尓 月者由移去 黄葉乃 過哉君之 不相夜多焉

[訓読]

松の葉に月はゆつりぬ黄葉の過ぐれや君が逢はぬ夜ぞ多き

[仮名]

まつのはに つきはゆつりぬ もみちばの すぐれやきみが あはぬよぞおほき

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:池邊王 伝誦 転用 怨恨 宴席 枕詞 植物 誦詠

624

[題詞]

天皇思酒人女王御製歌一首 [女王者穂積皇子之孫女也]

[原文]

道相而 咲之柄尓 零雪乃 消者消香二 戀云君妹

[訓読]

道に逢ひて笑まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ我妹

[仮名]

みちにあひて ゑまししからに ふるゆきの けなばけぬがに こふといふわぎも

[注解]

歌 [西] 謌 / 咲 [元][金][紀] 嘆

[検索用キーワード]

相聞 作者:聖武天皇 酒人女王 難解

625

[題詞]

高安王L鮒贈娘子歌一首 [高安王者後賜姓大原真人氏]

[原文]

奥弊徃 邊去伊麻夜 為妹 吾漁有 藻臥束鮒

[訓読]

沖辺行き辺を行き今や妹がため我が漁れる藻臥束鮒

[仮名]

おきへゆき へをゆきいまや いもがため わがすなどれる もふしつかふな

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 弊 [元][紀] 幣

[検索用キーワード]

相聞 作者:高安王 贈り物 動物

626

[題詞]

八代女王獻天皇歌一首

[原文]

君尓因 言之繁乎 古郷之 明日香乃河尓 潔身為尓去 [一尾云龍田超 三津之濱邊尓 潔身四二由久]

[訓読]

君により言の繁きを故郷の明日香の川にみそぎしに行く [一尾云龍田越え御津の浜辺にみそぎしに行く]

[仮名]

きみにより ことのしげきを ふるさとの あすかのかはに みそぎしにゆく [たつたこえ みつのはまべに みそぎしにゆく]

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:八代女王 聖武天皇 うわさ 飛鳥 地名

627

[題詞]

娘子報贈佐伯宿祢赤麻呂歌一首

[原文]

吾手本 将巻跡念牟 大夫者 <變>水<f> 白髪生二有

[訓読]

我がたもとまかむと思はむ大夫は変若水求め白髪生ひにけり

[仮名]

わがたもと まかむとおもはむ ますらをは をちみづもとめ しらかおひにけり

[注解]

戀→ 變 [元] / 定→ f [岩波大系]

[検索用キーワード]

相聞 作者:娘子 佐伯赤麻呂 諧謔 贈答 戯笑

628

[題詞]

(娘子報贈佐伯宿祢赤麻呂歌一首)佐伯宿祢赤麻呂和歌一首

[原文]

白髪生流 事者不念 <變>水者 鹿煮藻闕二毛 求而将行

[訓読]

白髪生ふることは思はず変若水はかにもかくにも求めて行かむ

[仮名]

しらかおふる ことはおもはず をちみづは かにもかくにも もとめてゆかむ

[注解]

歌 [西] 謌 / 戀→ 變 [新訓]

[検索用キーワード]

相聞 作者:佐伯赤麻呂 娘子 和歌

629

[題詞]

大伴四綱宴席歌一首

[原文]

奈何鹿 使之来流 君乎社 左右裳 待難為礼

[訓読]

何すとか使の来つる君をこそかにもかくにも待ちかてにすれ

[仮名]

なにすとか つかひのきつる きみをこそ かにもかくにも まちかてにすれ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴四綱 遅参 怨恨 宴席

630

[題詞]

佐伯宿祢赤麻呂歌一首

[原文]

初花之 可散物乎 人事乃 繁尓因而 止息比者鴨

[訓読]

初花の散るべきものを人言の繁きによりてよどむころかも

[仮名]

はつはなの ちるべきものを ひとごとの しげきによりて よどむころかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:佐伯赤麻呂 比喩 うわさ 恋愛

631

[題詞]

湯原王贈娘子歌二首 [志貴皇子之子也]

[原文]

宇波弊無 物可聞人者 然許 遠家路乎 令還念者

[訓読]

うはへなきものかも人はしかばかり遠き家路を帰さく思へば

[仮名]

うはへなき ものかもひとは しかばかり とほきいへぢを かへさくおもへば

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

相聞 作者:湯原王 娘子 怨恨 贈答

632

[題詞]

湯原王贈娘子歌二首 [志貴皇子之子也]

[原文]

目二破見而 手二破不所取 月内之 楓如 妹乎奈何責

[訓読]

目には見て手には取らえぬ月の内の楓のごとき妹をいかにせむ

[仮名]

めにはみて てにはとらえぬ つきのうちの かつらのごとき いもをいかにせむ

[検索用キーワード]

相聞 作者:湯原王 娘子 贈答 植物 恋情

633

[題詞]

(湯原王贈娘子歌二首 [志貴皇子之子也])娘子報贈歌二首

[原文]

幾許 思異目鴨 敷細之 枕片去 夢所見来之

[訓読]

ここだくも思ひけめかも敷栲の枕片さる夢に見え来し

[仮名]

ここだくも おもひけめかも しきたへの まくらかたさる いめにみえこし

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 娘子 作者:湯原王 恋情 贈答 枕詞 恋情

634

[題詞]

(湯原王贈娘子歌二首 [志貴皇子之子也])娘子報贈歌二首

[原文]

家二四手 雖見不飽乎 草枕 客毛妻与 有之乏左

[訓読]

家にして見れど飽かぬを草枕旅にも妻とあるが羨しさ

[仮名]

いへにして みれどあかぬを くさまくら たびにもつまと あるがともしさ

[検索用キーワード]

相聞 作者:娘子 湯原王 揶揄 恋情 枕詞 贈答

635

[題詞]

湯原王亦贈歌二首

[原文]

草枕 客者嬬者 雖率有 匣内之 珠社所念

[訓読]

草枕旅には妻は率たれども櫛笥のうちの玉をこそ思へ

[仮名]

くさまくら たびにはつまは ゐたれども くしげのうちの たまをこそおもへ

[注解]

念 [紀] 見

[検索用キーワード]

相聞 作者:湯原王 娘子 二重 曖昧 枕詞 贈答

636

[題詞]

湯原王亦贈歌二首

[原文]

余衣 形見尓奉 布細之 枕不離 巻而左宿座

[訓読]

我が衣形見に奉る敷栲の枕を放けずまきてさ寝ませ

[仮名]

あがころも かたみにまつる しきたへの まくらをさけず まきてさねませ

[検索用キーワード]

相聞 作者:湯原王 娘子 形見 枕詞 贈答

637

[題詞]

娘子復報贈歌一首

[原文]

吾背子之 形見之衣 嬬問尓 <余>身者不離 事不問友

[訓読]

我が背子が形見の衣妻どひに我が身は離けじ言とはずとも

[仮名]

わがせこが かたみのころも つまどひに あがみはさけじ こととはずとも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> → 余 [西(右書)][元][金][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:娘子 湯原王 形見 贈答

638

[題詞]

湯原王亦贈歌一首

[原文]

直一夜 隔之可良尓 荒玉乃 月歟經去跡 心遮

[訓読]

ただ一夜隔てしからにあらたまの月か経ぬると心惑ひぬ

[仮名]

ただひとよ へだてしからに あらたまの つきかへぬると こころまどひぬ

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

相聞 作者:湯原王 娘子 恋情 枕詞 贈答

639

[題詞]

娘子復報贈歌一首

[原文]

吾背子我 如是戀礼許曽 夜干玉能 夢所見管 寐不所宿家礼

[訓読]

我が背子がかく恋ふれこそぬばたまの夢に見えつつ寐ねらえずけれ

[仮名]

わがせこが かくこふれこそ ぬばたまの いめにみえつつ いねらえずけれ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:娘子 湯原王 夢 恋情 枕詞 贈答

640

[題詞]

波之家也思 不遠里乎 雲<居>尓也 戀管将居 月毛不經國

[原文]

はしけやし間近き里を雲居にや恋ひつつ居らむ月も経なくに

[訓読]

はしけやし まちかきさとを くもゐにや こひつつをらむ つきもへなくに

[仮名]

[注解]

歌 [西] 謌 / 井→ 居 [元][金][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:湯原王 娘子 恋情 贈答

641

[題詞]

娘子復報贈<歌>一首

[原文]

絶常云者 和備染責跡 焼大刀乃 隔付經事者 幸也吾君

[訓読]

絶ゆと言はばわびしみせむと焼大刀のへつかふことは幸くや我が君

[仮名]

たゆといはば わびしみせむと やきたちの へつかふことは さきくやあがきみ

[注解]

和歌→ 歌 [元][金][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:娘子 湯原王 怨恨 離別 枕詞

642

[題詞]

湯原王歌一首

[原文]

吾妹兒尓 戀而乱<者> 久流部寸二 懸而縁与 余戀始

[訓読]

我妹子に恋ひて乱ればくるべきに懸けて寄せむと我が恋ひそめし

[仮名]

わぎもこに こひてみだれば くるべきに かけてよせむと あがこひそめし

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 在→ 者 [略解] / 懸 [金][元] 縣

[検索用キーワード]

相聞 作者:湯原王 娘子 恋情 枕詞

643

[題詞]

紀郎女怨恨歌三首 [鹿人大夫之女名曰小鹿也安貴王之妻也]

[原文]

世間之 女尓思有者 吾渡 痛背乃河乎 渡金目八

[訓読]

世の中の女にしあらば我が渡る痛背の川を渡りかねめや

[仮名]

よのなかの をみなにしあらば わがわたる あなせのかはを わたりかねめや

[注解]

歌 [西] 謌

[検索用キーワード]

相聞 作者:紀郎女 河渡り 怨恨

644

[題詞]

紀郎女怨恨歌三首 [鹿人大夫之女名曰小鹿也安貴王之妻也]

[原文]

今者吾羽 和備曽四二結類 氣乃緒尓 念師君乎 縦左<久>思者

[訓読]

今は我はわびぞしにける息の緒に思ひし君をゆるさく思へば

[仮名]

いまはわは わびぞしにける いきのをに おもひしきみを ゆるさくおもへば

[注解]

<> → 久 [元][金][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:紀郎女 怨恨 離別

645

[題詞]

紀郎女怨恨歌三首 [鹿人大夫之女名曰小鹿也安貴王之妻也]

[原文]

白<細乃> 袖可別 日乎近見 心尓咽飯 哭耳四所泣

[訓読]

白栲の袖別るべき日を近み心にむせひ音のみし泣かゆ

[仮名]

しろたへの そでわかるべき ひをちかみ こころにむせひ ねのみしなかゆ

[注解]

妙之→ 細乃 [元][金][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:紀郎女 離別 枕詞

646

[題詞]

大伴宿祢駿河麻呂歌一首

[原文]

大夫之 思和備乍 遍多 嘆久嘆乎 不負物可聞

[訓読]

ますらをの思ひわびつつたびまねく嘆く嘆きを負はぬものかも

[仮名]

ますらをの おもひわびつつ たびまねく なげくなげきを おはぬものかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴駿河麻呂 恋情

647

[題詞]

大伴坂上郎女歌一首

[原文]

心者 忘日無久 雖念 人之事社 繁君尓阿礼

[訓読]

心には忘るる日なく思へども人の言こそ繁き君にあれ

[仮名]

こころには わするるひなく おもへども ひとのことこそ しげききみにあれ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 遊戯的 うわさ

648

[題詞]

大伴宿祢駿河麻呂歌一首

[原文]

不相見而 氣長久成奴 比日者 奈何好去哉 言借吾妹

[訓読]

相見ずて日長くなりぬこの頃はいかに幸くやいふかし我妹

[仮名]

あひみずて けながくなりぬ このころは いかにさきくや いふかしわぎも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴駿河麻呂

649

[題詞]

大伴坂上郎女歌一首

[原文]

夏葛之 不絶使乃 不通<有>者 言下有如 念鶴鴨

[訓読]

夏葛の絶えぬ使のよどめれば事しもあるごと思ひつるかも

[仮名]

なつくずの たえぬつかひの よどめれば ことしもあるごと おもひつるかも

[注解]

歌 [西] 謌 / <> →有 [元][金][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 停滞 使い 不安 枕詞 植物

650

[題詞]

大伴宿祢三依離復相歡歌一首

[原文]

吾妹兒者 常世國尓 住家<良>思 昔見従 變若益尓家利

[訓読]

我妹子は常世の国に住みけらし昔見しより変若ましにけり

[仮名]

わぎもこは とこよのくにに すみけらし むかしみしより をちましにけり

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌 / 郎→ 良 [元][金][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴三依 恋愛

651

[題詞]

大伴坂上郎女歌二首

[原文]

久堅乃 天露霜 置二家里 宅有人毛 待戀奴濫

[訓読]

ひさかたの天の露霜置きにけり家なる人も待ち恋ひぬらむ

[仮名]

ひさかたの あめのつゆしも おきにけり いへなるひとも まちこひぬらむ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 枕詞

652

[題詞]

大伴坂上郎女歌二首

[原文]

玉主尓 珠者授而 勝且毛 枕与吾者 率二将宿

[訓読]

玉守に玉は授けてかつがつも枕と我れはいざふたり寝む

[仮名]

たまもりに たまはさづけて かつがつも まくらとわれは いざふたりねむ

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 比喩 諦念

653

[題詞]

大伴宿祢駿河麻呂歌三首

[原文]

情者 不忘物乎 <儻> 不見日數多 月曽經去来

[訓読]

心には忘れぬものをたまさかに見ぬ日さまねく月ぞ経にける

[仮名]

こころには わすれぬものを たまさかに みぬひさまねく つきぞへにける

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 儻 [西(訂正)][元][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴駿河麻呂 弁解

654

[題詞]

大伴宿祢駿河麻呂歌三首

[原文]

相見者 月毛不經尓 戀云者 乎曽呂登吾乎 於毛保寒毳

[訓読]

相見ては月も経なくに恋ふと言はばをそろと我れを思ほさむかも

[仮名]

あひみては つきもへなくに こふといはば をそろとわれを おもほさむかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴駿河麻呂 恋愛

655

[題詞]

大伴宿祢駿河麻呂歌三首

[原文]

不念乎 思常云者 天地之 神祇毛知寒 邑礼左變

[訓読]

思はぬを思ふと言はば天地の神も知らさむ邑礼左変

[仮名]

おもはぬを おもふといはば あめつちの かみもしらさむ ****

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴駿河麻呂 難訓 恋愛

656

[題詞]

大伴坂上郎女歌六首

[原文]

吾耳曽 君尓者戀流 吾背子之 戀云事波 言乃名具左曽

[訓読]

我れのみぞ君には恋ふる我が背子が恋ふといふことは言のなぐさぞ

[仮名]

あれのみぞ きみにはこふる わがせこが こふといふことは ことのなぐさぞ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 恋情

657

[題詞]

大伴坂上郎女歌六首

[原文]

不念常 日手師物乎 翼酢色之 變安寸 吾意可聞

[訓読]

思はじと言ひてしものをはねず色のうつろひやすき我が心かも

[仮名]

おもはじと いひてしものを はねずいろの うつろひやすき あがこころかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 煩悶 植物 枕詞

658

[題詞]

大伴坂上郎女歌六首

[原文]

雖念 知僧裳無跡 知物乎 奈何幾許 吾戀渡

[訓読]

思へども験もなしと知るものを何かここだく我が恋ひわたる

[仮名]

おもへども しるしもなしと しるものを なにかここだく あがこひわたる

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 恋情

659

[題詞]

大伴坂上郎女歌六首

[原文]

豫 人事繁 如是有者 四恵也吾背子 奥裳何如荒海藻

[訓読]

あらかじめ人言繁しかくしあらばしゑや我が背子奥もいかにあらめ

[仮名]

あらかじめ人言繁しかくしあらばしゑや我が背子奥もいかにあらめ

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 うわさ

660

[題詞]

大伴坂上郎女歌六首

[原文]

汝乎与吾乎 人曽離奈流 乞吾君 人之中言 聞起名湯目

[訓読]

汝をと我を人ぞ離くなるいで我が君人の中言聞きこすなゆめ

[仮名]

なをとあを ひとぞさくなる いであがきみ ひとのなかごと ききこすなゆめ

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 うわさ

661

[題詞]

大伴坂上郎女歌六首

[原文]

戀々而 相有時谷 愛寸 事盡手四 長常念者

[訓読]

恋ひ恋ひて逢へる時だにうるはしき言尽してよ長くと思はば

[仮名]

こひこひて あへるときだに うるはしき ことつくしてよ ながくとおもはば

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 恋情

662

[題詞]

市原王歌一首

[原文]

網兒之山 五百重隠有 佐堤乃埼 左手蝿師子之 夢二四所見

[訓読]

網児の山五百重隠せる佐堤の崎さで延へし子が夢にし見ゆる

[仮名]

あごのやま いほへかくせる さでのさき さではへしこが いめにしみゆる

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:市原王 恋情 地名 三重県 夢

663

[題詞]

安<都>宿祢年足歌一首

[原文]

佐穂度 吾家之上二 鳴鳥之 音夏可思吉 愛妻之兒

[訓読]

佐保渡り我家の上に鳴く鳥の声なつかしきはしき妻の子

[仮名]

さほわたり わぎへのうへに なくとりの こゑなつかしき はしきつまのこ

[注解]

部 → 都 [元] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:安都年足 恋情 奈良 地名 動物 序詞

664

[題詞]

大伴宿祢像見歌一首

[原文]

石上 零十方雨二 将關哉 妹似相武登 言義之鬼尾

[訓読]

石上降るとも雨につつまめや妹に逢はむと言ひてしものを

[仮名]

いそのかみ ふるともあめに つつまめや いもにあはむと いひてしものを

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴像見 枕詞 恋情

665

[題詞]

安倍朝臣蟲麻呂歌一首

[原文]

向座而 雖見不飽 吾妹子二 立離徃六 田付不知毛

[訓読]

向ひ居て見れども飽かぬ我妹子に立ち別れ行かむたづき知らずも

[仮名]

むかひゐて みれどもあかぬ わぎもこに たちわかれゆかむ たづきしらずも

[注解]

倍 [元] 陪 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:安倍蟲麻呂

666

[題詞]

大伴坂上郎女歌二首

[原文]

不相見者 幾久毛 不有國 幾許吾者 戀乍裳荒鹿

[訓読]

相見ぬは幾久さにもあらなくにここだく我れは恋ひつつもあるか

[仮名]

あひみぬは いくひささにも あらなくに ここだくあれは こひつつもあるか

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 恋情

667

[題詞]

大伴坂上郎女歌二首

[原文]

戀々而 相有物乎 月四有者 夜波隠良武 須臾羽蟻待

[訓読]

恋ひ恋ひて逢ひたるものを月しあれば夜は隠るらむしましはあり待て

[仮名]

こひこひて あひたるものを つきしあれば よはこもるらむ しましはありまて

[注解]

部→ 陪 [元][類] 部 [紀][温][矢]

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 引き留め

668

[題詞]

厚見王歌一首

[原文]

朝尓日尓 色付山乃 白雲之 可思過 君尓不有國

[訓読]

朝に日に色づく山の白雲の思ひ過ぐべき君にあらなくに

[仮名]

あさにけに いろづくやまの しらくもの おもひすぐべき きみにあらなくに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:厚見王 恋情

669

[題詞]

春日王歌一首 [志貴皇子之子母曰多紀皇女也]

[原文]

足引之 山橘乃 色丹出<与> 語言継而 相事毛将有

[訓読]

あしひきの山橘の色に出でよ語らひ継ぎて逢ふこともあらむ

[仮名]

あしひきの やまたちばなの いろにいでよ かたらひつぎて あふこともあらむ

[注解]

歌 [西] 謌 / 而 → 与 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:春日王 植物 序詞 うわさ

670

[題詞]

湯原王歌一首

[原文]

月讀之 光二来益 足疾乃 山<寸>隔而 不遠國

[訓読]

月読の光りに来ませあしひきの山きへなりて遠からなくに

[仮名]

つくよみの ひかりにきませ あしひきの やまきへなりて とほからなくに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乎 → 寸 [元][類][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:湯原王 勧誘

671

[題詞]

(湯原王歌一首)和歌一首 [不審作者]

[原文]

月讀之 光者清 雖照有 惑情 不堪念

[訓読]

月読の光りは清く照らせれど惑へる心思ひあへなくに

[仮名]

つくよみの ひかりはきよく てらせれど まとへるこころ おもひあへなくに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 惑 [紀] 或

[検索用キーワード]

相聞 湯原王

672

[題詞]

安倍朝臣蟲麻呂歌一首

[原文]

倭文手纒 數二毛不有 壽持 奈何幾許 吾戀渡

[訓読]

しつたまき数にもあらぬ命もて何かここだく我が恋ひわたる

[仮名]

しつたまき かずにもあらぬ いのちもて なにかここだく あがこひわたる

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:安倍蟲麻呂 恋情 枕詞

673

[題詞]

大伴坂上郎女歌二首

[原文]

真十鏡 磨師心乎 縦者 後尓雖云 驗将在八方

[訓読]

まそ鏡磨ぎし心をゆるしてば後に言ふとも験あらめやも

[仮名]

まそかがみ とぎしこころを ゆるしてば のちにいふとも しるしあらめやも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 枕詞 後悔

674

[題詞]

(大伴坂上郎女歌二首)

[原文]

真玉付 彼此兼手 言齒五十戸<常> 相而後社 悔二破有跡五十戸

[訓読]

真玉つくをちこち兼ねて言は言へど逢ひて後こそ悔にはありといへ

[仮名]

またまつく をちこちかねて ことはいへど あひてのちこそ くいにはありといへ

[注解]

當→常 [桂][元][類][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 後悔 枕詞

675

[題詞]

中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

娘子部四 咲澤二生流 花勝見 都毛不知 戀裳摺可聞

[訓読]

をみなへし佐紀沢に生ふる花かつみかつても知らぬ恋もするかも

[仮名]

をみなへし さきさはにおふる はなかつみ かつてもしらぬ こひもするかも

[注解]

歌 [西] 謌 / 摺 [桂][類](塙) 揩 / 可 [元][類][紀] 香

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相聞 作者:中臣女郎 大伴家持 恋情 植物 奈良 地名 序詞 贈答

676

[題詞]

中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

海底 奥乎深目手 吾念有 君二波将相 年者經十方

[訓読]

海の底奥を深めて我が思へる君には逢はむ年は経ぬとも

[仮名]

わたのそこ おくをふかめて あがおもへる きみにはあはむ としはへぬとも

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相聞 作者:中臣女郎 大伴家持 恋情 枕詞 贈答

677

[題詞]

中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

春日山 朝居雲乃 欝 不知人尓毛 戀物香聞

[訓読]

春日山朝居る雲のおほほしく知らぬ人にも恋ふるものかも

[仮名]

かすがやま あさゐるくもの おほほしく しらぬひとにも こふるものかも

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相聞 作者:中臣女郎 大伴家持 恨み 奈良 地名 序詞 贈答

678

[題詞]

中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

直相而 見而者耳社 霊剋 命向 吾戀止眼

[訓読]

直に逢ひて見てばのみこそたまきはる命に向ふ我が恋やまめ

[仮名]

ただにあひて みてばのみこそ たまきはる いのちにむかふ あがこひやまめ

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相聞 作者:中臣女郎 大伴家持 枕詞 贈答

679

[題詞]

中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首

[原文]

不欲常云者 将強哉吾背 菅根之 念乱而 戀管母将有

[訓読]

いなと言はば強ひめや我が背菅の根の思ひ乱れて恋ひつつもあらむ

[仮名]

いなといはば しひめやわがせ すがのねの おもひみだれて こひつつもあらむ

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相聞 作者:中臣女郎 大伴家持 恋情 枕詞 植物 贈答

680

[題詞]

大伴宿祢家持与交遊別歌三首

[原文]

盖毛 人之中言 聞可毛 幾許雖待 君之不来益

[訓読]

けだしくも人の中言聞かせかもここだく待てど君が来まさぬ

[仮名]

けだしくも ひとのなかごと きかせかも ここだくまてど きみがきまさぬ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴家持 交遊 怨恨 うわさ

681

[題詞]

大伴宿祢家持与交遊別歌三首

[原文]

中々尓 絶年云者 如此許 氣緒尓四而 吾将戀八方

[訓読]

なかなかに絶ゆとし言はばかくばかり息の緒にして我れ恋ひめやも

[仮名]

なかなかに たゆとしいはば かくばかり いきのをにして あれこひめやも

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相聞 作者:大伴家持 交遊 恋情

682

[題詞]

大伴宿祢家持与交遊別歌三首

[原文]

将念 人尓有莫國 懃 情盡而 戀流吾毳

[訓読]

思ふらむ人にあらなくにねもころに心尽して恋ふる我れかも

[仮名]

おもふらむ ひとにあらなくに ねもころに こころつくして こふるあれかも

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相聞 作者:大伴家持 交遊 恋情

683

[題詞]

大伴坂上郎女歌七首

[原文]

謂言之 恐國曽 紅之 色莫出曽 念死友

[訓読]

言ふ言の畏き国ぞ紅の色にな出でそ思ひ死ぬとも

[仮名]

いふことの かしこきくにぞ くれなゐの いろにないでそ おもひしぬとも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:坂上郎女 うわさ 枕詞

684

[題詞]

大伴坂上郎女歌七首

[原文]

今者吾波 将死与吾背 生十方 吾二可縁跡 言跡云莫苦荷

[訓読]

今は我は死なむよ我が背生けりとも我れに依るべしと言ふといはなくに

[仮名]

いまはわは しなむよわがせ いけりとも われによるべし といふといはなくに

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相聞 作者:坂上郎女 怨恨

685

[題詞]

大伴坂上郎女歌七首

[原文]

人事 繁哉君<之> 二鞘之 家乎隔而 戀乍将座

[訓読]

人言を繁みか君が二鞘の家を隔てて恋ひつつまさむ

[仮名]

ひとごとを しげみかきみが ふたさやの いへをへだてて こひつつまさむ

[注解]

乎→ 之 [元]

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相聞 作者:坂上郎女 うわさ 恋情

686

[題詞]

大伴坂上郎女歌七首

[原文]

比者 千歳八徃裳 過与 吾哉然念 欲見鴨

[訓読]

このころは千年や行きも過ぎぬると我れやしか思ふ見まく欲りかも

[仮名]

このころは ちとせやゆきも すぎぬると われかしかおもふ みまくほりかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 恋情

687

[題詞]

大伴坂上郎女歌七首

[原文]

愛常 吾念情 速河之 雖塞々友 猶哉将崩

[訓読]

うるはしと我が思ふ心速川の塞きに塞くともなほや崩えなむ

[仮名]

うるはしと あがもふこころ はやかはの せきにせくとも なほやくえなむ

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 恋情

688

[題詞]

大伴坂上郎女歌七首

[原文]

青山乎 横g雲之 灼然 吾共咲為而 人二所知名

[訓読]

青山を横ぎる雲のいちしろく我れと笑まして人に知らゆな

[仮名]

あをやまを よこぎるくもの いちしろく われとゑまして ひとにしらゆな

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相聞 作者:坂上郎女 うわさ 序詞

689

[題詞]

大伴坂上郎女歌七首

[原文]

海山毛 隔莫國 奈何鴨 目言乎谷裳 幾許乏寸

[訓読]

海山も隔たらなくに何しかも目言をだにもここだ乏しき

[仮名]

うみやまも へだたらなくに なにしかも めごとをだにも ここだともしき

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相聞 作者:坂上郎女 恋情

690

[題詞]

大伴宿祢三依悲別歌一首

[原文]

照<月>乎 闇尓見成而 哭涙 衣<沾>津 干人無二

[訓読]

照る月を闇に見なして泣く涙衣濡らしつ干す人なしに

[仮名]

てるつきを やみにみなして なくなみだ ころもぬらしつ ほすひとなしに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 日 →月 [略解(宣長説)] / 沽 →沾 [紀][温][京

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相聞 作者:大伴三依 離別 悲別

691

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌二首

[原文]

百礒城之 大宮人者 雖多有 情尓乗而 所念妹

[訓読]

ももしきの大宮人は多かれど心に乗りて思ほゆる妹

[仮名]

ももしきの おほみやひとは おほかれど こころにのりて おもほゆるいも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴家持 娘子 恋情 枕詞 贈答

692

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌二首

[原文]

得羽重無 妹二毛有鴨 如此許 人情乎 令盡念者

[訓読]

うはへなき妹にもあるかもかくばかり人の心を尽さく思へば

[仮名]

うはへなき いもにもあるかも かくばかり ひとのこころを つくさくおもへば

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相聞 作者:大伴家持 娘子 怨恨 贈答

693

[題詞]

大伴宿祢千室歌一首 [未詳]

[原文]

如此耳 戀哉将度 秋津野尓 多奈引雲能 過跡者無二

[訓読]

かくのみし恋ひやわたらむ秋津野にたなびく雲の過ぐとはなしに

[仮名]

かくのみし こひやわたらむ あきづのに たなびくくもの すぐとはなしに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴千室 和歌山 吉野 地名 序詞 恋情

694

[題詞]

廣河女王歌二首 [穂積皇子之孫女上道王之女也]

[原文]

戀草呼 力車二 七車 積而戀良苦 吾心柄

[訓読]

恋草を力車に七車積みて恋ふらく我が心から

[仮名]

こひくさを ちからくるまに ななくるま つみてこふらく わがこころから

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:廣河女王 恋情 比喩

695

[題詞]

廣河女王歌二首 [穂積皇子之孫女上道王之女也]

[原文]

戀者今葉 不有常吾羽 念乎 何處戀其 附見繋有

[訓読]

恋は今はあらじと我れは思へるをいづくの恋ぞつかみかかれる

[仮名]

こひはいまは あらじとわれは おもへるを いづくのこひぞ つかみかかれる

[検索用キーワード]

相聞 作者:廣河女王 自嘲

696

[題詞]

石川朝臣廣成歌一首 [後賜<姓>高圓朝臣氏也]

[原文]

家人尓 戀過目八方 川津鳴 泉之里尓 年之歴去者

[訓読]

家人に恋過ぎめやもかはづ鳴く泉の里に年の経ぬれば

[仮名]

いへびとに こひすぎめやも かはづなく いづみのさとに としのへぬれば

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <>→ 姓 [西(右書)][紀][古]

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相聞 作者:石川廣成 京都 地名 恋情

697

[題詞]

大伴宿祢像見歌三首

[原文]

吾聞尓 繋莫言 苅薦之 乱而念 君之直香曽

[訓読]

我が聞きに懸けてな言ひそ刈り薦の乱れて思ふ君が直香ぞ

[仮名]

わがききに かけてないひそ かりこもの みだれておもふ きみがただかぞ

[注解]

歌 [西] 謌

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相聞 作者:大伴像見 恋情 枕詞

698

[題詞]

大伴宿祢像見歌三首

[原文]

春日野尓 朝居雲之 敷布二 吾者戀益 月二日二異二

[訓読]

春日野に朝居る雲のしくしくに我れは恋ひ増す月に日に異に

[仮名]

かすがのに あさゐるくもの しくしくに あれはこひます つきにひにけに

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相聞 作者:大伴像見 恋情 奈良 地名 序詞

699

[題詞]

大伴宿祢像見歌三首

[原文]

一瀬二波 千遍障良比 逝水之 後毛将相 今尓不有十方

[訓読]

一瀬には千たび障らひ行く水の後にも逢はむ今にあらずとも

[仮名]

ひとせには ちたびさはらひ ゆくみづの のちにもあはむ いまにあらずとも

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相聞 作者:大伴像見 序詞 恋愛

700

[題詞]

大伴宿祢家持到娘子之門作歌一首

[原文]

如此為而哉 猶八将退 不近 道之間乎 煩参来而

[訓読]

かくしてやなほや罷らむ近からぬ道の間をなづみ参ゐ来て

[仮名]

かくしてや なほやまからむ ちかからぬ みちのあひだを なづみまゐきて

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 娘子 怨恨

701

[題詞]

河内百枝娘子贈大伴宿祢家持歌二首

[原文]

波都波都尓 人乎相見而 何将有 何日二箇 又外二将見

[訓読]

はつはつに人を相見ていかにあらむいづれの日にかまた外に見む

[仮名]

はつはつに ひとをあひみて いかにあらむ いづれのひにか またよそにみむ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:河内百枝娘子 大伴家持 恋情

702

[題詞]

河内百枝娘子贈大伴宿祢家持歌二首

[原文]

夜干玉之 其夜乃月夜 至于今日 吾者不忘 無間苦思念者

[訓読]

ぬばたまのその夜の月夜今日までに我れは忘れず間なくし思へば

[仮名]

ぬばたまの そのよのつくよ けふまでに われはわすれず まなくしおもへば

[検索用キーワード]

相聞 作者:河内百枝娘子 大伴家持 恋情 枕詞

703

[題詞]

巫部麻蘇娘子歌二首

[原文]

吾背子乎 相見之其日 至于今日 吾衣手者 乾時毛奈志

[訓読]

我が背子を相見しその日今日までに我が衣手は干る時もなし

[仮名]

わがせこを あひみしそのひ けふまでに わがころもでは ふるときもなし

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:巫部麻蘇娘子 恋情 涙

704

[題詞]

(巫部麻蘇娘子歌二首)

[原文]

栲縄之 永命乎 欲苦波 不絶而人乎 欲見社

[訓読]

栲縄の長き命を欲りしくは絶えずて人を見まく欲りこそ

[仮名]

たくなはの ながきいのちを ほりしくは たえずてひとを みまくほりこそ

[検索用キーワード]

相聞 作者:巫部麻蘇娘子 恋情 枕詞

705

[題詞]

大伴宿祢家持贈童女歌一首

[原文]

葉根蘰 今為妹乎 夢見而 情内二 戀<渡>鴨

[訓読]

はねかづら今する妹を夢に見て心のうちに恋ひわたるかも

[仮名]

はねかづら いまするいもを いめにみて こころのうちに こひわたるかも

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 童女 恋情 夢 贈答

706

[題詞]

童女来報歌一首

[原文]

葉根蘰 今為妹者 無四呼 何妹其 幾許戀多類

[訓読]

はねかづら今する妹はなかりしをいづれの妹ぞここだ恋ひたる

[仮名]

はねかづら いまするいもは なかりしを いづれのいもぞ ここだこひたる

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:童女 大伴家持 掛け合い 贈答

707

[題詞]

粟田<女>娘子贈大伴宿祢家持歌二首

[原文]

思遣 為便乃不知者 片h之 底曽吾者 戀成尓家類 <[注土h之中]>

[訓読]

思ひ遣るすべの知らねば片もひの底にぞ我れは恋ひ成りにける <[注土h之中]>

[仮名]

おもひやる すべのしらねば かたもひの そこにぞあれは こひなりにける

[注解]

<> → 女 [元][紀][古] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <>→ 注土h之中 [桂][元]

[検索用キーワード]

相聞 作者:粟田女娘子 大伴家持 恋情 枕詞 贈答

708

[題詞]

粟田<女>娘子贈大伴宿祢家持歌二首

[原文]

復毛将相 因毛有奴可 白細之 我衣手二 齊留目六

[訓読]

またも逢はむよしもあらぬか白栲の我が衣手にいはひ留めむ

[仮名]

またもあはむ よしもあらぬか しろたへの わがころもでに いはひとどめむ

[検索用キーワード]

相聞 作者:粟田女娘子 大伴家持 恋情 再会 枕詞 贈答

709

[題詞]

豊前國娘子大宅女の歌一首 [未審姓氏]

[原文]

夕闇者 路多豆<多>頭四 待月而 行吾背子 其間尓母将見

[訓読]

夕闇は道たづたづし月待ちて行ませ我が背子その間にも見む

[仮名]

ゆふやみは みちたづたづし つきまちて いませわがせこ そのまにもみむ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <>→ 多 [西(右書)][元][紀][温]

[検索用キーワード]

相聞 作者:豊前國娘子大宅女 後朝

710

[題詞]

安都扉娘子歌一首

[原文]

三空去 月之光二 直一目 相三師人<之> 夢西所見

[訓読]

み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる

[仮名]

みそらゆく つきのひかりに ただひとめ あひみしひとの いめにしみゆる

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> → 之 [西(右書)][元][紀][温]

[検索用キーワード]

相聞 作者:安都扉娘子 夢

711

[題詞]

丹波大女娘子歌三首

[原文]

鴨鳥之 遊此池尓 木葉落而 浮心 吾不念國

[訓読]

鴨鳥の遊ぶこの池に木の葉落ちて浮きたる心我が思はなくに

[仮名]

かもどりの あそぶこのいけに このはおちて うきたるこころ わがおもはなくに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:丹波大女娘子 動物 恋情 序詞

712

[題詞]

丹波大女娘子歌三首

[原文]

味酒呼 三輪之祝我 忌杉 手觸之罪歟 君二遇難寸

[訓読]

味酒を三輪の祝がいはふ杉手触れし罪か君に逢ひかたき

[仮名]

うまさけを みわのはふりが いはふすぎ てふれしつみか きみにあひかたき

[検索用キーワード]

相聞 作者:丹波大女娘子 枕詞 恋情

713

[題詞]

丹波大女娘子歌三首

[原文]

垣穂成 人辞聞而 吾背子之 情多由多比 不合頃者

[訓読]

垣ほなす人言聞きて我が背子が心たゆたひ逢はぬこのころ

[仮名]

かきほなす ひとごとききて わがせこが こころたゆたひ あはぬこのころ

[検索用キーワード]

相聞 作者:丹波大女娘子 うわさ

714

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌七首

[原文]

情尓者 思渡跡 縁乎無三 外耳為而 嘆曽吾為

[訓読]

心には思ひわたれどよしをなみ外のみにして嘆きぞ我がする

[仮名]

こころには おもひわたれど よしをなみ よそのみにして なげきぞわがする

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 娘子 贈答

715

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌七首

[原文]

千鳥鳴 佐保乃河門之 清瀬乎 馬打和多思 何時将通

[訓読]

千鳥鳴く佐保の川門の清き瀬を馬うち渡しいつか通はむ

[仮名]

ちどりなく さほのかはとの きよきせを うまうちわたし いつかかよはむ

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 娘子 川渡り 奈良 地名 動物 贈答

716

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌七首

[原文]

夜晝 云別不知 吾戀 情盖 夢所見寸八

[訓読]

夜昼とい別き知らず我が恋ふる心はけだし夢に見えきや

[仮名]

よるひると いふわきしらず あがこふる こころはけだし いめにみえきや

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 娘子 恋情 夢 恋情 贈答

717

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌七首

[原文]

都礼毛無 将有人乎 獨念尓 吾念者 惑毛安流香

[訓読]

つれもなくあるらむ人を片思に我れは思へばわびしくもあるか

[仮名]

つれもなく あるらむひとを かたもひに われはおもへば わびしくもあるか

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 娘子 恨み 贈答

718

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌七首

[原文]

不念尓 妹之咲N乎 夢見而 心中二 燎管曽呼留

[訓読]

思はぬに妹が笑ひを夢に見て心のうちに燃えつつぞ居る

[仮名]

おもはぬに いもがゑまひを いめにみて こころのうちに もえつつぞをる

[注解]

呼 [元] 乎

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 娘子 夢 恋情 贈答

719

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌七首

[原文]

大夫跡 念流吾乎 如此許 三礼二見津礼 片<念>男責

[訓読]

ますらをと思へる我れをかくばかりみつれにみつれ片思をせむ

[仮名]

ますらをと おもへるわれを かくばかり みつれにみつれ かたもひをせむ

[注解]

思 →念 [元][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 娘子 怨恨 贈答

720

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌七首

[原文]

村肝之 情揣而 如此許 余戀良<苦>乎 不知香安類良武

[訓読]

むらきもの心砕けてかくばかり我が恋ふらくを知らずかあるらむ

[仮名]

むらきもの こころくだけて かくばかり あがこふらくを しらずかあるらむ

[注解]

久 →苦 [元][紀][温]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 娘子 枕詞 恋情 贈答

721

[題詞]

獻天皇歌一首 [大伴坂上郎女在佐保宅作也]

[原文]

足引乃 山二四居者 風流無三 吾為類和射乎 害目賜名

[訓読]

あしひきの山にしをれば風流なみ我がするわざをとがめたまふな

[仮名]

あしひきの やまにしをれば みやびなみ わがするわざを とがめたまふな

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 聖武天皇 佐保 枕詞 地名 贈答

722

[題詞]

大伴宿祢家持歌一首

[原文]

如是許 戀乍不有者 石木二毛 成益物乎 物不思四手

[訓読]

かくばかり恋ひつつあらずは石木にもならましものを物思はずして

[仮名]

かくばかり こひつつあらずは いはきにも ならましものを ものもはずして

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 恋情

723

[題詞]

大伴坂上郎女従跡見庄<賜>留宅女子大嬢歌一首[并短歌]

[原文]

常呼二跡 吾行莫國 小金門尓 物悲良尓 念有之 吾兒乃刀自緒 野干玉之 夜晝跡不言 念二思 吾身者痩奴 嘆丹師 袖左倍<沾>奴 如是許 本名四戀者 古郷尓 此月期呂毛 有勝益土

[訓読]

常世にと 我が行かなくに 小金門に もの悲しらに 思へりし 我が子の刀自を ぬばたまの 夜昼といはず 思ふにし 我が身は痩せぬ 嘆くにし 袖さへ濡れぬ かくばかり もとなし恋ひば 故郷に この月ごろも 有りかつましじ

[仮名]

とこよにと わがゆかなくに をかなどに ものかなしらに おもへりし あがこのとじを ぬばたまの よるひるといはず おもふにし あがみはやせぬ なげくにし そでさへぬれぬ かくばかり もとなしこひば ふるさとに このつきごろも ありかつましじ

[注解]

贈賜→ 賜 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 沽→ 沾 [紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 坂上大嬢 愛情 枕詞 桜井

724

[題詞]

(大伴坂上郎女従跡見庄<賜>留宅女子大嬢歌一首[并短歌])反歌

[原文]

朝髪之 念乱而 如是許 名姉之戀曽 夢尓所見家留

[訓読]

朝髪の思ひ乱れてかくばかり汝姉が恋ふれぞ夢に見えける

[仮名]

あさかみの おもひみだれて かくばかり なねがこふれぞ いめにみえける

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 右歌 [西] 右謌 [西(訂正)] 右歌 / 進歌 [西] 進謌 [西(訂正)] 進歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 坂上大嬢 愛情 夢 枕詞 桜井

725

[題詞]

獻天皇歌二首 [大伴坂上郎女在春日里作也]

[原文]

二寶鳥乃 潜池水 情有者 君尓吾戀 情示左祢

[訓読]

にほ鳥の潜く池水心あらば君に我が恋ふる心示さね

[仮名]

にほどりの かづくいけみづ こころあらば きみにあがこふる こころしめさね

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 聖武天皇 動物 恋情 奈良

726

[題詞]

獻天皇歌二首 [大伴坂上郎女在春日里作也]

[原文]

外居而 戀乍不有者 君之家乃 池尓住云 鴨二有益雄

[訓読]

外に居て恋ひつつあらずは君が家の池に住むといふ鴨にあらましを

[仮名]

よそにゐて こひつつあらずは きみがいへの いけにすむといふ かもにあらましを

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 聖武天皇 動物 恋情 奈良

727

[題詞]

大伴宿祢家持贈坂上家大嬢歌二首 [<離>絶數年復會相聞徃来]

[原文]

萱草 吾下紐尓 著有跡 鬼乃志許草 事二思安利家理

[訓読]

忘れ草我が下紐に付けたれど醜の醜草言にしありけり

[仮名]

わすれくさ わがしたひもに つけたれど しこのしこくさ ことにしありけり

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 雖 → 離 [桂][元][紀] / 復 [元][類] 後

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 植物

728

[題詞]

大伴宿祢家持贈坂上家大嬢歌二首 [<離>絶數年復會相聞徃来]

[原文]

人毛無 國母有粳 吾妹子与 携行而 副而将座

[訓読]

人もなき国もあらぬか我妹子とたづさはり行きて副ひて居らむ

[仮名]

ひともなき くにもあらぬか わぎもこと たづさはりゆきて たぐひてをらむ

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 贈答

729

[題詞]

大伴坂上大嬢贈大伴宿祢家持歌三首

[原文]

玉有者 手二母将巻乎 欝瞻乃 世人有者 手二巻難石

[訓読]

玉ならば手にも巻かむをうつせみの世の人なれば手に巻きかたし

[仮名]

たまならば てにもまかむを うつせみの よのひとなれば てにまきかたし

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 枕詞 贈答

730

[題詞]

大伴坂上大嬢贈大伴宿祢家持歌三首

[原文]

将相夜者 何時将有乎 何如為常香 彼夕相而 事之繁裳

[訓読]

逢はむ夜はいつもあらむを何すとかその宵逢ひて言の繁きも

[仮名]

あはむよは いつもあらむを なにすとか そのよひあひて ことのしげきも

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 うわさ 贈答

731

[題詞]

大伴坂上大嬢贈大伴宿祢家持歌三首

[原文]

吾名者毛 千名之五百名尓 雖立 君之名立者 惜社泣

[訓読]

我が名はも千名の五百名に立ちぬとも君が名立たば惜しみこそ泣け

[仮名]

わがなはも ちなのいほなに たちぬとも きみがなたたば をしみこそなけ

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 うわさ 名前 贈答

732

[題詞]

又大伴宿祢家持和歌三首

[原文]

今時者四 名之惜雲 吾者無 妹丹因者 千遍立十方

[訓読]

今しはし名の惜しけくも我れはなし妹によりては千たび立つとも

[仮名]

いましはし なのをしけくも われはなし いもによりては ちたびたつとも

[注解]

歌 [西] 謌

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 和歌 名前 うわさ 贈答

733

[題詞]

又大伴宿祢家持和歌三首

[原文]

空蝉乃 代也毛二行 何為跡鹿 妹尓不相而 吾獨将宿

[訓読]

うつせみの世やも二行く何すとか妹に逢はずて我がひとり寝む

[仮名]

うつせみの よやもふたゆく なにすとか いもにあはずて わがひとりねむ

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 和歌 枕詞 贈答

734

[題詞]

又大伴宿祢家持和歌三首

[原文]

吾念 如此而不有者 玉二毛我 真毛妹之 手二所纒<乎>

[訓読]

我が思ひかくてあらずは玉にもがまことも妹が手に巻かれなむ

[仮名]

わがおもひ かくてあらずは たまにもが まこともいもが てにまかれなむ

[注解]

牟 → 乎 [元][類][紀]

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 贈答

735

[題詞]

同坂上大嬢贈家持歌一首

[原文]

春日山 霞多奈引 情具久 照月夜尓 獨鴨念

[訓読]

春日山霞たなびき心ぐく照れる月夜にひとりかも寝む

[仮名]

かすがやま かすみたなびき こころぐく てれるつくよに ひとりかもねむ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 奈良 地名 鬱屈 恋情 贈答

736

[題詞]

又家持和坂上大嬢歌一首

[原文]

月夜尓波 門尓出立 夕占問 足卜乎曽為之 行乎欲焉

[訓読]

月夜には門に出で立ち夕占問ひ足占をぞせし行かまくを欲り

[仮名]

つくよには かどにいでたち ゆふけとひ あしうらをぞせし ゆかまくをほり

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴家持 大伴坂上大嬢 贈答

737

[題詞]

同大嬢贈家持歌二首

[原文]

云々 人者雖云 若狭道乃 後瀬山之 後毛将<會>君

[訓読]

かにかくに人は言ふとも若狭道の後瀬の山の後も逢はむ君

[仮名]

かにかくに ひとはいふとも わかさぢの のちせのやまの のちもあはむきみ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 念 會 [万葉考]

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 福井 地名 歌枕 贈答

738

[題詞]

同大嬢贈家持歌二首

[原文]

世間之 苦物尓 有家良<之> 戀尓不勝而 可死念者

[訓読]

世の中の苦しきものにありけらし恋にあへずて死ぬべき思へば

[仮名]

よのなかの くるしきものに ありけらし こひにあへずて しぬべきおもへば

[注解]

久 →之 [元]

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相聞 作者:坂上大嬢 大伴家持 恋情 贈答

739

[題詞]

又家持和坂上大嬢歌二首

[原文]

後湍山 後毛将相常 念社 可死物乎 至今日<毛>生有

[訓読]

後瀬山後も逢はむと思へこそ死ぬべきものを今日までも生けれ

[仮名]

のちせやま のちもあはむと おもへこそ しぬべきものを けふまでもいけれ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <>→ 毛 [西(右書)][桂][元][紀]

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 和歌 枕詞 福井 地名 歌枕 恋情 贈答

740

[題詞]

又家持和坂上大嬢歌二首

[原文]

事耳乎 後毛相跡 懃 吾乎令憑而 不相可聞

[訓読]

言のみを後も逢はむとねもころに我れを頼めて逢はざらむかも

[仮名]

ことのみを のちもあはむと ねもころに われをたのめて あはざらむかも

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 怨恨 贈答

741

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

夢之相者 苦有家里 覺而 掻探友 手二毛不所觸者

[訓読]

夢の逢ひは苦しかりけりおどろきて掻き探れども手にも触れねば

[仮名]

いめのあひは くるしかりけり おどろきて かきさぐれども てにもふれねば

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 遊仙窟 夢 贈答

742

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

一重耳 妹之将結 帶乎尚 三重可結 吾身者成

[訓読]

一重のみ妹が結ばむ帯をすら三重結ぶべく我が身はなりぬ

[仮名]

ひとへのみ いもがむすばむ おびをすら みへむすぶべく わがみはなりぬ

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 遊仙窟 贈答

743

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

吾戀者 千引乃石乎 七許 頚二将繋母 神之諸伏

[訓読]

我が恋は千引の石を七ばかり首に懸けむも神のまにまに

[仮名]

あがこひは ちびきのいはを ななばかり くびにかけむも かみのまにまに

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 比喩 贈答

744

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

暮去者 屋戸開設而 吾将待 夢尓相見二 将来云比登乎

[訓読]

夕さらば屋戸開け設けて我れ待たむ夢に相見に来むといふ人を

[仮名]

ゆふさらば やとあけまけて われまたむ いめにあひみに こむといふひとを

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 遊仙窟 夢 贈答

745

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

朝夕二 将見時左倍也 吾妹之 雖見如不見 由戀四家武

[訓読]

朝夕に見む時さへや我妹子が見れど見ぬごとなほ恋しけむ

[仮名]

あさよひに みむときさへや わぎもこが みれどみぬごと なほこほしけむ

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 贈答 恋情

746

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

生有代尓 吾者未見 事絶而 如是A怜 縫流嚢者

[訓読]

生ける世に我はいまだ見ず言絶えてかくおもしろく縫へる袋は

[仮名]

いけるよに われはいまだみず ことたえて かくおもしろく ぬへるふくろは

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 贈答

747

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

吾妹兒之 形見乃服 下著而 直相左右者 吾将脱八方

[訓読]

我妹子が形見の衣下に着て直に逢ふまでは我れ脱かめやも

[仮名]

わぎもこが かたみのころも したにきて ただにあふまでは われぬかめやも

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 贈答

748

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

戀死六 其毛同曽 奈何為二 人目他言 辞痛吾将為

[訓読]

恋ひ死なむそこも同じぞ何せむに人目人言言痛み我がせむ

[仮名]

こひしなむ そこもおやじぞ なにせむに ひとめひとごと こちたみわがせむ

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 うわさ 贈答

749

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

夢二谷 所見者社有 如此許 不所見有者 戀而死跡香

[訓読]

夢にだに見えばこそあらめかくばかり見えずしあるは恋ひて死ねとか

[仮名]

いめにだに みえばこそあれ かくばかり みえずてあるは こひてしねとか

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 夢 贈答

750

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

念絶 和備西物尾 中々<荷> 奈何辛苦 相見始兼

[訓読]

思ひ絶えわびにしものを中々に何か苦しく相見そめけむ

[仮名]

おもひたえ わびにしものを なかなかに なにかくるしく あひみそめけむ

[注解]

尓 → 荷 [桂][紀]

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 怨恨 後悔 恋情

751

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

相見而者 幾日毛不經乎 幾許久毛 <久>流比尓久流必 所念鴨

[訓読]

相見ては幾日も経ぬをここだくもくるひにくるひ思ほゆるかも

[仮名]

あひみては いくかもへぬを ここだくも くるひにくるひ おもほゆるかも

[注解]

<>→ 久 [西(右書)][桂][紀][温]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 贈答

752

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

如是許 面影耳 所念者 何如将為 人目繁而

[訓読]

かくばかり面影にのみ思ほえばいかにかもせむ人目繁くて

[仮名]

かくばかり おもかげにのみ おもほえば いかにかもせむ ひとめしげくて

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 うわさ 贈答

753

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

相見者 須臾戀者 奈木六香登 雖念弥 戀益来

[訓読]

相見てはしましも恋はなぎむかと思へどいよよ恋ひまさりけり

[仮名]

あひみては しましもこひは なぎむかと おもへどいよよ こひまさりけり

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 恋情 贈答

754

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

夜之穂杼呂 吾出而来者 吾妹子之 念有四九四 面影二三湯

[訓読]

夜のほどろ我が出でて来れば我妹子が思へりしくし面影に見ゆ

[仮名]

よのほどろ わがいでてくれば わぎもこが おもへりしくし おもかげにみゆ

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 贈答 恋情

755

[題詞]

更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首

[原文]

夜之穂杼呂 出都追来良久 遍多數 成者吾胸 截焼如

[訓読]

夜のほどろ出でつつ来らくたび数多くなれば我が胸断ち焼くごとし

[仮名]

よのほどろ いでつつくらく たびまねく なればあがむね たちやくごとし

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 遊仙窟 恋情

756

[題詞]

大伴田村家之大嬢贈妹坂上大嬢歌四首

[原文]

外居而 戀者苦 吾妹子乎 次相見六 事計為与

[訓読]

外に居て恋ふれば苦し我妹子を継ぎて相見む事計りせよ

[仮名]

よそにゐて こふればくるし わぎもこを つぎてあひみむ ことはかりせよ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴田村大嬢 坂上大嬢 贈答

757

[題詞]

大伴田村家之大嬢贈妹坂上大嬢歌四首

[原文]

遠有者 和備而毛有乎 里近 有常聞乍 不見之為便奈沙

[訓読]

遠くあらばわびてもあらむを里近くありと聞きつつ見ぬがすべなさ

[仮名]

とほくあらば わびてもあらむを さとちかく ありとききつつ みぬがすべなさ

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴田村大嬢 坂上大嬢 贈答

758

[題詞]

大伴田村家之大嬢贈妹坂上大嬢歌四首

[原文]

白雲之 多奈引山之 高々二 吾念妹乎 将見因毛我母

[訓読]

白雲のたなびく山の高々に我が思ふ妹を見むよしもがも

[仮名]

しらくもの たなびくやまの たかだかに あがおもふいもを みむよしもがも

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴田村大嬢 坂上大嬢 贈答

759

[題詞]

大伴田村家之大嬢贈妹坂上大嬢歌四首

[原文]

何 時尓加妹乎 牟具良布能 穢屋戸尓 入将座

[訓読]

いかならむ時にか妹を葎生の汚なきやどに入りいませてむ

[仮名]

いかならむ ときにかいもを むぐらふの きたなきやどに いりいませてむ

[注解]

<>→ 大 [西(右書)][桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:田村大嬢 大伴坂上大嬢 植物 贈答

760

[題詞]

大伴坂上郎女従竹田庄<贈>女子大嬢歌二首

[原文]

打渡 竹田之原尓 鳴鶴之 間無時無 吾戀良久波

[訓読]

うち渡す武田の原に鳴く鶴の間なく時なし我が恋ふらくは

[仮名]

うちわたす たけたのはらに なくたづの まなくときなし あがこふらくは

[注解]

贈賜 → 贈 [桂][元][古] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:坂上郎女 大伴坂上大嬢 桜井 地名 動物 恋情 贈答

761

[題詞]

大伴坂上郎女従竹田庄<贈>女子大嬢歌二首

[原文]

早河之 湍尓居鳥之 縁乎奈弥 念而有師 吾兒羽裳A怜

[訓読]

早川の瀬に居る鳥のよしをなみ思ひてありし我が子はもあはれ

[仮名]

はやかはの せにゐるとりの よしをなみ おもひてありし あがこはもあはれ

[検索用キーワード]

相聞 作者:坂上郎女 大伴坂上大嬢 序詞 恋情 贈答

762

[題詞]

紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首 [女郎名曰小鹿也]

[原文]

神左夫跡 不欲者不有 八<多也八多> 如是為而後二 佐夫之家牟可聞

[訓読]

神さぶといなにはあらずはたやはたかくして後に寂しけむかも

[仮名]

かむさぶと いなにはあらず はたやはた かくしてのちに さぶしけむかも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 也多八→ 多也八多 [略解] 也八多 [西(右書)]

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相聞 作者:紀女郎 大伴家持 贈答 恋愛

763

[題詞]

紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首 [女郎名曰小鹿也]

[原文]

玉緒乎 沫緒二搓而 結有者 在手後二毛 不相在目八方

[訓読]

玉の緒を沫緒に搓りて結べらばありて後にも逢はざらめやも

[仮名]

たまのをを あわをによりて むすべらば ありてのちにも あはざらめやも

[検索用キーワード]

相聞 作者:紀女郎 大伴家持 恋愛

764

[題詞]

(紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首 [女郎名曰小鹿也])大伴宿祢家持和歌一首

[原文]

百年尓 老舌出而 与余牟友 吾者不Q 戀者益友

[訓読]

百年に老舌出でてよよむとも我れはいとはじ恋ひは増すとも

[仮名]

ももとせに おいしたいでて よよむとも われはいとはじ こひはますとも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 紀女郎 作者:大伴家持 老 恋情

765

[題詞]

在久邇京思留寧樂宅坂上大嬢大伴宿祢家持作歌一首

[原文]

一隔山 重成物乎 月夜好見 門尓出立 妹可将待

[訓読]

一重山へなれるものを月夜よみ門に出で立ち妹か待つらむ

[仮名]

ひとへやま へなれるものを つくよよみ かどにいでたち いもかまつらむ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 恋愛

766

[題詞]

(在久邇京思留寧樂宅坂上大嬢大伴宿祢家持作歌一首)藤原郎女聞之即和歌一首

[原文]

路遠 不来常波知有 物可良尓 然曽将待 君之目乎保利

[訓読]

道遠み来じとは知れるものからにしかぞ待つらむ君が目を欲り

[仮名]

みちとほみ こじとはしれる ものからに しかぞまつらむ きみがめをほり

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相聞 大伴家持 坂上大嬢 久邇京 作者:藤原郎女

767

[題詞]

大伴宿祢家持更贈大嬢歌二首

[原文]

都路乎 遠哉妹之 比来者 得飼飯而雖宿 夢尓不所見来

[訓読]

都路を遠みか妹がこのころはうけひて寝れど夢に見え来ぬ

[仮名]

みやこぢを とほみかいもが このころは うけひてぬれど いめにみえこぬ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 夢 贈答

768

[題詞]

大伴宿祢家持更贈大嬢歌二首

[原文]

今所知 久邇乃京尓 妹二不相 久成 行而早見奈

[訓読]

今知らす久迩の都に妹に逢はず久しくなりぬ行きて早見な

[仮名]

いましらす くにのみやこに いもにあはず ひさしくなりぬ ゆきてはやみな

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 久邇京 地名 贈答

769

[題詞]

大伴宿祢家持報贈紀女郎歌一首

[原文]

久堅之 雨之落日乎 直獨 山邊尓居者 欝有来

[訓読]

ひさかたの雨の降る日をただ独り山辺に居ればいぶせかりけり

[仮名]

ひさかたの あめのふるひを ただひとり やまへにをれば いぶせかりけり

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 紀女郎 久邇京 鬱屈 贈答

770

[題詞]

大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首

[原文]

人眼多見 不相耳曽 情左倍 妹乎忘而 吾念莫國

[訓読]

人目多み逢はなくのみぞ心さへ妹を忘れて我が思はなくに

[仮名]

ひとめおほみ あはなくのみぞ こころさへ いもをわすれて わがおもはなくに

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 久邇京 贈答

771

[題詞]

大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首

[原文]

偽毛 似付而曽為流 打布裳 真吾妹兒 吾尓戀目八

[訓読]

偽りも似つきてぞするうつしくもまこと我妹子我れに恋ひめや

[仮名]

いつはりも につきてぞする うつしくも まことわぎもこ われにこひめや

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 久邇京 怨恨 贈答

772

[題詞]

大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首

[原文]

夢尓谷 将所見常吾者 保杼毛友 不相志思<者> 諾不所見<有>武

[訓読]

夢にだに見えむと我れはほどけども相し思はねばうべ見えずあらむ

[仮名]

いめにだに みえむとわれは ほどけども あひしおもはねば うべみえずあらむ

[注解]

<>→ 者 [桂][元][紀] / <>→ 有 [桂][元][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 久邇京 夢 怨恨 贈答

773

[題詞]

大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首

[原文]

事不問 木尚味狭藍 諸<弟>等之 練乃村戸二 所詐来

[訓読]

言とはぬ木すらあじさゐ諸弟らが練りのむらとにあざむかえけり

[仮名]

こととはぬ きすらあじさゐ もろとらが ねりのむらとに あざむかえけり

[注解]

茅 → 弟 [桂][古][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 久邇京 難解 植物 贈答 怨恨

774

[題詞]

大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首

[原文]

百千遍 戀跡云友 諸<弟>等之 練乃言羽<者> 吾波不信

[訓読]

百千たび恋ふと言ふとも諸弟らが練りのことばは我れは頼まじ

[仮名]

ももちたび こふといふとも もろとらが ねりのことばは われはたのまじ

[注解]

茅→ 弟 [桂] / 志 者 [桂][元][紀]

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 坂上大嬢 久邇京 怨恨

775

[題詞]

大伴宿祢家持贈紀女郎歌一首

[原文]

鶉鳴 故郷従 念友 何如裳妹尓 相縁毛無寸

[訓読]

鶉鳴く古りにし里ゆ思へども何ぞも妹に逢ふよしもなき

[仮名]

うづらなく ふりにしさとゆ おもへども なにぞもいもに あふよしもなき

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 紀女郎 動物 枕詞 贈答

776

[題詞]

紀女郎報贈家持歌一首

[原文]

事出之者 誰言尓有鹿 小山田之 苗代水乃 中与杼尓四手

[訓読]

言出しは誰が言にあるか小山田の苗代水の中淀にして

[仮名]

ことでしは たがことにあるか をやまだの なはしろみづの なかよどにして

[検索用キーワード]

相聞 作者:紀女郎 大伴家持 贈答

777

[題詞]

大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首

[原文]

吾妹子之 屋戸乃籬乎 見尓徃者 盖従門 将返却可聞

[訓読]

我妹子がやどの籬を見に行かばけだし門より帰してむかも

[仮名]

わぎもこが やどのまがきを みにゆかば けだしかどより かへしてむかも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 紀女郎 怨恨

778

[題詞]

大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首

[原文]

打妙尓 前垣乃酢堅 欲見 将行常云哉 君乎見尓許曽

[訓読]

うつたへに籬の姿見まく欲り行かむと言へや君を見にこそ

[仮名]

うつたへに まがきのすがた みまくほり ゆかむといへや きみをみにこそ

[検索用キーワード]

相聞 作者:大伴家持 紀女郎 恋情

779

[題詞]

大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首

[原文]

板盖之 黒木乃屋根者 山近之 明日取而 持将参来

[訓読]

板葺の黒木の屋根は山近し明日の日取りて持ちて参ゐ来む

[仮名]

いたぶきの くろきのやねは やまちかし あすのひとりて もちてまゐこむ

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相聞 作者:大伴家持 紀女郎 恋愛

780

[題詞]

大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首

[原文]

黒樹取 草毛苅乍 仕目利 勤<和>氣登 将譽十方不有 [一云仕登母]

[訓読]

黒木取り草も刈りつつ仕へめどいそしきわけとほめむともあらず [一云仕ふとも]

[仮名]

くろきとり かやもかりつつ つかへめど いそしきわけと ほめむともあらず [つかふとも]

[注解]

知→ 和 [万葉考] / 母 [元][類] 毛

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相聞 作者:大伴家持 紀女郎 恋愛 戯笑

781

[題詞]

大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首

[原文]

野干玉能 昨夜者令還 今夜左倍 吾乎還莫 路之長手<呼>

[訓読]

ぬばたまの昨夜は帰しつ今夜さへ我れを帰すな道の長手を

[仮名]

ぬばたまの きぞはかへしつ こよひさへ われをかへすな みちのながてを

[注解]

乎→ 呼 [桂][元][紀]

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相聞 作者:大伴家持 紀女郎 枕詞 恋愛

782

[題詞]

紀女郎L物贈友歌一首 [女郎名曰小鹿也]

[原文]

風高 邊者雖吹 為妹 袖左倍所<沾>而 苅流玉藻焉

[訓読]

風高く辺には吹けども妹がため袖さへ濡れて刈れる玉藻ぞ

[仮名]

かぜたかく へにはふけども いもがため そでさへぬれて かれるたまもぞ

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 沽→ 沾 [元][紀]

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相聞 作者:紀女郎 贈り物 植物

783

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌三首

[原文]

前年之 先年従 至今年 戀跡奈何毛 妹尓相難

[訓読]

をととしの先つ年より今年まで恋ふれどなぞも妹に逢ひかたき

[仮名]

をととしの さきつとしより ことしまで こふれどなぞも いもにあひかたき

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴家持 娘子 贈答 恋情

784

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌三首

[原文]

打乍二波 更毛不得言 夢谷 妹之<手>本乎 纒宿常思見者

[訓読]

うつつにはさらにもえ言はず夢にだに妹が手本を卷き寝とし見ば

[仮名]

うつつには さらにもえいはず いめにだに いもがたもとを まきぬとしみば

[注解]

牟→ 手 [西(右書)][桂][元][紀]

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相聞 作者:大伴家持 娘子 夢 恋情

785

[題詞]

大伴宿祢家持贈娘子歌三首

[原文]

吾屋戸之 草上白久 置露乃 壽母不有惜 妹尓不相有者

[訓読]

我がやどの草の上白く置く露の身も惜しからず妹に逢はずあれば

[仮名]

わがやどの くさのうへしろく おくつゆの みもをしくあらず いもにあはずあれば

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相聞 作者:大伴家持 娘子 恋情

786

[題詞]

大伴宿祢家持報贈藤原朝臣久須麻呂歌三首

[原文]

春之雨者 弥布落尓 梅花 未咲久 伊等若美可聞

[訓読]

春の雨はいやしき降るに梅の花いまだ咲かなくいと若みかも

[仮名]

はるのあめは いやしきふるに うめのはな いまださかなく いとわかみかも

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴家持 藤原久須麻呂 比喩 求婚 植物 贈答

787

[題詞]

大伴宿祢家持報贈藤原朝臣久須麻呂歌三首

[原文]

如夢 所念鴨 愛八師 君之使乃 麻祢久通者

[訓読]

夢のごと思ほゆるかもはしきやし君が使の数多く通へば

[仮名]

いめのごと おもほゆるかも はしきやし きみがつかひの まねくかよへば

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相聞 作者:大伴家持 藤原久須麻呂 贈答

788

[題詞]

大伴宿祢家持報贈藤原朝臣久須麻呂歌三首

[原文]

浦若見 花咲難寸 梅乎殖而 人之事重三 念曽吾為類

[訓読]

うら若み花咲きかたき梅を植ゑて人の言繁み思ひぞ我がする

[仮名]

うらわかみ はなさきかたき うめをうゑて ひとのことしげみ おもひぞわがする

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相聞 作者:大伴家持 藤原久須麻呂 比喩 うわさ 植物 贈答

789

[題詞]

又家持贈藤原朝臣久須麻呂歌二首

[原文]

情八十一 所念可聞 春霞 軽引時二 事之通者

[訓読]

心ぐく思ほゆるかも春霞たなびく時に言の通へば

[仮名]

こころぐく おもほゆるかも はるかすみ たなびくときに ことのかよへば

[注解]

歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌

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相聞 作者:大伴家持 藤原久須麻呂 贈答

790

[題詞]

又家持贈藤原朝臣久須麻呂歌二首

[原文]

春風之 聲尓四出名者 有去而 不有今友 君之随意

[訓読]

春風の音にし出なばありさりて今ならずとも君がまにまに

[仮名]

はるかぜの おとにしいでなば ありさりて いまならずとも きみがまにまに

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相聞 作者:大伴家持 藤原久須麻呂 贈答

791

[題詞]

藤原朝臣久須麻呂来報歌二首

[原文]

奥山之 磐影尓生流 菅根乃 懃吾毛 不相念有哉

[訓読]

奥山の岩蔭に生ふる菅の根のねもころ我れも相思はざれや

[仮名]

おくやまの いはかげにおふる すがのねの ねもころわれも あひおもはざれや

[注解]

歌 [西] 謌

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相聞 作者:藤原久須麻呂 大伴家持 植物 序詞 贈答

792

[題詞]

藤原朝臣久須麻呂来報歌二首

[原文]

春雨乎 待<常>二師有四 吾屋戸之 若木乃梅毛 未含有

[訓読]

春雨を待つとにしあらし我がやどの若木の梅もいまだふふめり

[仮名]

はるさめを まつとにしあらし わがやどの わかきのうめも いまだふふめり

[注解]

<> →常 [西(右書)][元][類][紀]

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相聞 作者:藤原久須麻呂 大伴家持 比喩 植物 贈答