3786
[題詞]
昔物有娘子 字曰櫻兒也 于時有二壮子 共誂此娘而捐生挌<競>貪死相敵 於是娘子戯欷曰 従古<来>今未聞未見一女之見徃適二門矣 方今壮子之意有難和平 不如妾死相害永息 尓乃尋入林中懸樹經死 其兩壮子不敢哀慟血泣漣襟 各陳心緒作歌二首
[原文]
春去者 挿頭尓将為跡 我念之 櫻花者 散去流香聞 [其一]
[訓読]
春さらばかざしにせむと我が思ひし桜の花は散りにけるかも [其一]
[仮名]
はるさらば かざしにせむと わがもひし さくらのはなは ちりにけるかも
[注解]
并 [西(削除)] / 竟→競 [尼][類][古] / 来于→来 [尼][類][古] / 散去 [尼][類](塙) 去]
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雑歌 歌語り 櫻児 恋愛 二男一女 物語 悲嘆 譬喩
3787
[題詞]
昔物有娘子 字曰櫻兒也 于時有二壮子 共誂此娘而捐生挌<競>貪死相敵 於是娘子戯欷曰 従古<来>今未聞未見一女之見徃適二門矣 方今壮子之意有難和平 不如妾死相害永息 尓乃尋入林中懸樹經死 其兩壮子不敢哀慟血泣漣襟 各陳心緒作歌二首
[原文]
妹之名尓 繋有櫻 花開者 常哉将戀 弥年之羽尓 [其二]
[訓読]
妹が名に懸けたる桜花咲かば常にや恋ひむいや年のはに [其二]
[仮名]
いもがなに かけたるさくら はなさかば つねにやこひむ いやとしのはに
[注解]
開 [尼] 散
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雑歌 歌語り 物語 恋愛 櫻児 二男一女 悲嘆 譬喩
3788
[題詞]
或曰 <昔>有三男同娉一女也 娘子嘆息曰 一女之身易滅如露 三雄之志難平如石 遂乃彷徨池上沈没水底 於時其壮士等不勝哀頽之至 各陳所心作歌三首 [娘子字曰<イ>兒也]
[原文]
無耳之 池羊蹄恨之 吾妹兒之 来乍潜者 水波将涸 [一]
[訓読]
耳成の池し恨めし我妹子が来つつ潜かば水は涸れなむ [一]
[仮名]
みみなしの いけしうらめし わぎもこが きつつかづかば みづはかれなむ
[注解]
<>→昔 [尼][類][紀] / イ [西(上書訂正)][尼][類][古]
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雑歌 歌語り 物語 恋愛 三男一女 悲嘆 地名 奈良 橿原
3789
[題詞]
或曰 <昔>有三男同娉一女也 娘子嘆息曰 一女之身易滅如露 三雄之志難平如石 遂乃彷徨池上沈没水底 於時其壮士等不勝哀頽之至 各陳所心作歌三首 [娘子字曰<イ>兒也]
[原文]
足曳之 山イ之兒 今日徃跡 吾尓告世婆 還来麻之乎 [二]
[訓読]
あしひきの山縵の子今日行くと我れに告げせば帰り来ましを [二]
[仮名]
あしひきの やまかづらのこ けふゆくと われにつげせば かへりきましを
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雑歌 枕詞 植物 歌物語 物語 三男一女 悲嘆 恋愛
3790
[題詞]
或曰 <昔>有三男同娉一女也 娘子嘆息曰 一女之身易滅如露 三雄之志難平如石 遂乃彷徨池上沈没水底 於時其壮士等不勝哀頽之至 各陳所心作歌三首 [娘子字曰<イ>兒也]
[原文]
足曳之 玉イ之兒 如今日 何隈乎 見管来尓監 [三]
[訓読]
あしひきの玉縵の子今日のごといづれの隈を見つつ来にけむ [三]
[仮名]
あしひきの たまかづらのこ けふのごと いづれのくまを みつつきにけむ
[注解]
玉 [万葉集童蒙抄](塙)(楓) 山
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雑歌 枕詞 植物 歌物語 物語 三男一女 悲嘆 恋愛
3791
[題詞]
昔有老翁 号曰竹取翁也 此翁季春之月登丘遠望 忽値煮羮之九箇女子也 百嬌無儔花容無止 于時娘子等呼老翁嗤曰 叔父来乎 吹此燭火也 於是翁曰唯<々> 漸T徐行著接座上 良久娘子等皆共含咲相推譲之曰 阿誰呼此翁哉尓乃竹取翁謝之曰 非慮之外偶逢神仙 迷惑之心無敢所禁 近狎之罪希贖以歌 即作歌一首[并短歌]
[原文]
緑子之 若子蚊見庭 垂乳為 母所懐 ウ襁 平<生>蚊見庭 結經方衣 水津裏丹縫服 頚著之 童子蚊見庭 結幡 袂著衣 服我矣 丹因 子等何四千庭 三名之綿 蚊黒為髪尾 信櫛持 於是蚊寸垂 取束 擧而裳纒見 解乱 童兒丹成見 羅丹津蚊經 色丹名著来 紫之 大綾之衣 墨江之 遠里小野之 真榛持 丹穂之為衣丹 狛錦 紐丹縫著 刺部重部 波累服 打十八為 麻續兒等 蟻衣之 寶之子等蚊 打栲者 經而織布 日曝之 朝手作尾 信巾裳成者之寸丹取為支屋所經 稲寸丁女蚊 妻問迹 我丹所来為 彼方之 二綾裏沓 飛鳥 飛鳥壮蚊 霖禁 縫為黒沓 刺佩而 庭立住 退莫立 禁尾迹女蚊 髣髴聞而 我丹所来為 水縹 絹帶尾 引帶成 韓帶丹取為 海神之 殿盖丹 飛翔 為軽如来 腰細丹 取餝氷 真十鏡 取雙懸而 己蚊果 還氷見乍 春避而 野邊尾廻者 面白見 我矣思經蚊 狭野津鳥 来鳴翔經 秋僻而 山邊尾徃者 名津蚊為迹 我矣思經蚊 天雲裳 行田菜引 還立 路尾所来者 打氷<刺> 宮尾見名 刺竹之 舎人壮裳 忍經等氷 還等氷見乍 誰子其迹哉 所思而在 如是 所為故為 古部 狭々寸為我哉 端寸八為 今日八方子等丹 五十狭邇迹哉 所思而在 如是 所為故為 古部之 賢人藻 後之世之 堅監将為迹 老人矣 送為車 持還来 <持還来>
[訓読]
みどり子の 若子髪には たらちし 母に抱かえ ひむつきの 稚児が髪には 木綿肩衣 純裏に縫ひ着 頚つきの 童髪には 結ひはたの 袖つけ衣 着し我れを 丹よれる 子らがよちには 蜷の腸 か黒し髪を ま櫛持ち ここにかき垂れ 取り束ね 上げても巻きみ 解き乱り 童になしみ さ丹つかふ 色になつける 紫の 大綾の衣 住吉の 遠里小野の ま榛持ち にほほし衣に 高麗錦 紐に縫ひつけ 刺部重部 なみ重ね着て 打麻やし 麻続の子ら あり衣の 財の子らが 打ちし栲 延へて織る布 日さらしの 麻手作りを 信巾裳成者之寸丹取為支屋所経 稲置娘子が 妻どふと 我れにおこせし 彼方の 二綾下沓 飛ぶ鳥 明日香壮士が 長雨禁へ 縫ひし黒沓 さし履きて 庭にたたずみ 退けな立ち 禁娘子が ほの聞きて 我れにおこせし 水縹の 絹の帯を 引き帯なす 韓帯に取らし わたつみの 殿の甍に 飛び翔ける すがるのごとき 腰細に 取り装ほひ まそ鏡 取り並め懸けて おのがなり かへらひ見つつ 春さりて 野辺を廻れば おもしろみ 我れを思へか さ野つ鳥 来鳴き翔らふ 秋さりて 山辺を行けば なつかしと 我れを思へか 天雲も 行きたなびく かへり立ち 道を来れば うちひさす 宮女 さす竹の 舎人壮士も 忍ぶらひ かへらひ見つつ 誰が子ぞとや 思はえてある かくのごと 所為故為 いにしへ ささきし我れや はしきやし 今日やも子らに いさとや 思はえてある かくのごと 所為故為 いにしへの 賢しき人も 後の世の 鑑にせむと 老人を 送りし車 持ち帰りけり 持ち帰りけり
[仮名]
みどりこの わかごかみには たらちし ははにむだかえ ひむつきの ちごがかみには ゆふかたぎぬ ひつらにぬひき うなつきの わらはかみには ゆひはたの そでつけごろも きしわれを によれる こらがよちには みなのわた かぐろしかみを まくしもち ここにかきたれ とりつかね あげてもまきみ ときみだり わらはになしみ さにつかふ いろになつける むらさきの おほあやのきぬ すみのえの とほさとをのの まはりもち にほほしきぬに こまにしき ひもにぬひつけ ***** なみかさねきて うちそやし をみのこら ありきぬの たからのこらが うちしたへ はへておるぬの ひさらしの あさてづくりを ***** ******* ***** いなきをとめが つまどふと われにおこせし をちかたの ふたあやしたぐつ とぶとり あすかをとこが ながめさへ ぬひしくろぐつ さしはきて にはにたたずみ そけなたち いさめをとめが ほのききて われにおこせし みなはだの きぬのおびを ひきおびなす からおびにとらし わたつみの とののいらかに とびかける すがるのごとき こしほそに とりよそほひ まそかがみ とりなめかけて おのがなり かへらひみつつ はるさりて のへをめぐれば おもしろみ われをおもへか さのつとり きなきかけらふ あきさりて やまへをゆけば なつかしと われをおもへか あまくもも ゆきたなびく かへりたち みちをくれば うちひさす みやをみな さすたけの とねりをとこも しのぶらひ かへらひみつつ たがこぞとや おもはえてある かくのごと ******* いにしへ ささきしわれや はしきやし けふやもこらに いさとや おもはえてある かくのごと ******* いにしへの さかしきひとも のちのよの かがみにせむと おいひとを おくりしくるま もちかへりけり もちかへりけり
[注解]
唯→々 [類][矢][京] / 歌 [西] 謌 / 生之→生 [紀][細] / 判→刺 [尼][類][紀] /<>→持還来 [尼]
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雑歌 歌物語 物語 作者:竹取翁 神仙 枕詞 難訓 植物 地名 堺市 大阪 教訓 嘆老
3792
[題詞]
昔有老翁 号曰竹取翁也 此翁季春之月登丘遠望 忽値煮羮之九箇女子也 百嬌無儔花容無止 于時娘子等呼老翁嗤曰 叔父来乎 吹此燭火也 於是翁曰唯<々> 漸T徐行著接座上 良久娘子等皆共含咲相推譲之曰 阿誰呼此翁哉尓乃竹取翁謝之曰 非慮之外偶逢神仙 迷惑之心無敢所禁 近狎之罪希贖以歌 即作歌一首[并短歌]
[原文]
死者木苑 相不見在目 生而在者 白髪子等丹 不生在目八方
[訓読]
死なばこそ相見ずあらめ生きてあらば白髪子らに生ひずあらめやも
[仮名]
しなばこそ あひみずあらめ いきてあらば しろかみこらに おひずあらめやも
[検索用キーワード]
雑歌 歌物語 物語 作者:竹取翁 神仙 嘆老
3793
[題詞]
昔有老翁 号曰竹取翁也 此翁季春之月登丘遠望 忽値煮羮之九箇女子也 百嬌無儔花容無止 于時娘子等呼老翁嗤曰 叔父来乎 吹此燭火也 於是翁曰唯<々> 漸T徐行著接座上 良久娘子等皆共含咲相推譲之曰 阿誰呼此翁哉尓乃竹取翁謝之曰 非慮之外偶逢神仙 迷惑之心無敢所禁 近狎之罪希贖以歌 即作歌一首[并短歌]
[原文]
白髪為 子等母生名者 如是 将若異子等丹 所詈金目八
[訓読]
白髪し子らに生ひなばかくのごと若けむ子らに罵らえかねめや
[仮名]
しろかみし こらにおひなば かくのごと わかけむこらに のらえかねめや
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雑歌 歌物語 物語 作者:竹取翁 神仙 嘆老
3794
[題詞]
娘子等和歌九首
[原文]
端寸八為 老夫之歌丹 大欲寸 九兒等哉 蚊間毛而将居 [一]
[訓読]
はしきやし翁の歌におほほしき九の子らや感けて居らむ [一]
[仮名]
はしきやし おきなのうたに おほほしき ここののこらや かまけてをらむ
[注解]
歌 [西] 謌 / 歌 [西] 哥
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雑歌 女歌 歌物語 物語 竹取翁 神仙 作者:娘子
3795
[題詞]
娘子等和歌九首
[原文]
辱尾忍 辱尾黙 無事 物不言先丹 我者将依 [二]
[訓読]
恥を忍び恥を黙して事もなく物言はぬさきに我れは寄りなむ [二]
[仮名]
はぢをしのび はぢをもだして こともなく ものいはぬさきに われはよりなむ
[検索用キーワード]
雑歌 女歌 歌物語 物語 竹取翁 神仙 作者:娘子
3796
[題詞]
娘子等和歌九首
[原文]
否藻諾藻 随欲 可赦 皃所見哉 我藻将依 [三]
[訓読]
否も諾も欲しきまにまに許すべき顔見ゆるかも我れも寄りなむ [三]
[仮名]
いなもをも ほしきまにまに ゆるすべき かほみゆるかも われもよりなむ
[検索用キーワード]
雑歌 女歌 歌物語 物語 竹取翁 神仙 作者:娘子
3797
[題詞]
娘子等和歌九首
[原文]
死藻生藻 同心迹 結而為 友八違 我藻将依 [四]
[訓読]
死にも生きも同じ心と結びてし友や違はむ我れも寄りなむ [四]
[仮名]
しにもいきも おなじこころと むすびてし ともやたがはむ われもよりなむ
[検索用キーワード]
雑歌 女歌 歌物語 物語 竹取翁 神仙 作者:娘子
3798
[題詞]
娘子等和歌九首
[原文]
何為迹 違将居 否藻諾藻 友之波々 我裳将依 [五]
[訓読]
何すと違ひは居らむ否も諾も友のなみなみ我れも寄りなむ [五]
[仮名]
なにすと たがひはをらむ いなもをも とものなみなみ われもよりなむ
[検索用キーワード]
雑歌 女歌 歌物語 物語 竹取翁 神仙 作者:娘子
3799
[題詞]
娘子等和歌九首
[原文]
豈藻不在 自身之柄 人子之 事藻不盡 我藻将依 [六]
[訓読]
あにもあらじおのが身のから人の子の言も尽さじ我れも寄りなむ [六]
[仮名]
あにもあらじ おのがみのから ひとのこの こともつくさじ われもよりなむ
[検索用キーワード]
雑歌 女歌 歌物語 物語 竹取翁 神仙 作者:娘子
3800
[題詞]
娘子等和歌九首
[原文]
者田為々寸 穂庭莫出 思而有 情者所知 我藻将依 [七]
[訓読]
はだすすき穂にはな出でそ思ひたる心は知らゆ我れも寄りなむ [七]
[仮名]
はだすすき ほにはないでそ おもひたる こころはしらゆ われもよりなむ
[検索用キーワード]
雑歌 女歌 歌物語 物語 竹取翁 神仙 作者:娘子
3801
[題詞]
娘子等和歌九首
[原文]
墨之江之 岸野之榛丹 々穂所經迹 丹穂葉寐我八 丹穂氷而将居 [八]
[訓読]
住吉の岸野の榛ににほふれどにほはぬ我れやにほひて居らむ [八]
[仮名]
すみのえの きしののはりに にほふれど にほはぬわれや にほひてをらむ
[検索用キーワード]
雑歌 女歌 歌物語 物語 竹取翁 神仙 地名 住吉 大阪 歌垣 作者:娘子
3802
[題詞]
娘子等和歌九首
[原文]
春之野乃 下草靡 我藻依 丹穂氷因将 友之随意 [九]
[訓読]
春の野の下草靡き我れも寄りにほひ寄りなむ友のまにまに [九]
[仮名]
はるののの したくさなびき われもより にほひよりなむ とものまにまに
[検索用キーワード]
雑歌 女歌 歌物語 物語 竹取翁 神仙 作者:娘子
3803
[題詞]
昔者有壮士與美女也[姓名未詳] 不告二親竊為交接 於時娘子之意欲親令知 因作歌詠送與其夫歌曰
[原文]
隠耳 戀<者>辛苦 山葉従 出来月之 顕者如何
[訓読]
隠りのみ恋ふれば苦し山の端ゆ出でくる月の顕さばいかに
[仮名]
こもりのみ こふればくるし やまのはゆ いでくるつきの あらはさばいかに
[注解]
<>→者 [類][古][温] / 歌 [西] 謌
[検索用キーワード]
雑歌 物語 歌物語 密会 婚姻 女歌 人目 作者:娘子
3804
[題詞]
昔者有壮士 新成婚礼也 未經幾時忽為驛使被遣遠境 公事有限會期無日 於是娘子 感慟悽愴沈臥疾エ 累<年>之後壮士還来覆命既了 乃詣相視而娘子之姿容疲羸甚異言語哽咽 于時壮士哀嘆流涙裁歌口号 其歌一首
[原文]
如是耳尓 有家流物乎 猪名川之 奥乎深目而 吾念有来
[訓読]
かくのみにありけるものを猪名川の沖を深めて我が思へりける
[仮名]
かくのみに ありけるものを ゐながはの おきをふかめて わがもへりける
[注解]
羊→年 [類][古][紀] / 歌 [西] 謌
[検索用キーワード]
雑歌 歌物語 物語 悲別 地名 兵庫 挽歌 怨恨
3805
[題詞]
娘子臥聞夫君之歌従枕擧頭應聲和歌一首
[原文]
烏玉之 黒髪所<沾>而 沫雪之 零也来座 幾許戀者
[訓読]
ぬばたまの黒髪濡れて沫雪の降るにや来ますここだ恋ふれば
[仮名]
ぬばたまの くろかみぬれて あわゆきの ふるにやきます ここだこふれば
[注解]
歌 [西] 謌 / 沽→沾 [矢][京]
[検索用キーワード]
雑歌 枕詞 歌物語 物語 女歌 恋情 悲別 作者:娘子
3806
[題詞]
[原文]
事之有者 小泊瀬山乃 石城尓母 隠者共尓 莫思吾背
[訓読]
事しあらば小泊瀬山の石城にも隠らばともにな思ひそ我が背
[仮名]
ことしあらば をばつせやまの いはきにも こもらばともに なおもひそわがせ
[注解]
預 [類][古](塙) 豫 / 裁 [西(上書訂正)][尼][類][古] / 歌 [西] 哥 / 歟→與 [尼][類][古]
[検索用キーワード]
雑歌 物語 歌物語 密会 結婚 地名 墳墓 人目 女歌 恋情 伝承 作者:娘子
3807
[題詞]
[原文]
安積香山 影副所見 山井之 淺心乎 吾念莫國
[訓読]
安積山影さへ見ゆる山の井の浅き心を我が思はなくに
[仮名]
あさかやま かげさへみゆる やまのゐの あさきこころを わがおもはなくに
[注解]
<>→國 [西(右書)][尼][類][古]
[検索用キーワード]
雑歌 物語 歌物語 伝承 地名 福島県 葛城王 女歌 橘諸兄 恋愛 序詞 作者:采女
3808
[題詞]
[原文]
墨江之 小集樂尓出而 寤尓毛 己妻尚乎 鏡登見津藻
[訓読]
住吉の小集楽に出でてうつつにもおの妻すらを鏡と見つも
[仮名]
すみのえの をづめにいでて うつつにも おのづますらを かがみとみつも
[注解]
歌 [西] 謌
[検索用キーワード]
雑歌 歌物語 物語 伝承 歌垣 野遊び 妻讃美 地名 住吉 大阪
3809
[題詞]
[原文]
商變 領為跡之御法 有者許曽 吾下衣 反賜米
[訓読]
商返しめすとの御法あらばこそ我が下衣返し給はめ
[仮名]
あきかへし めすとのみのり あらばこそ あがしたごろも かへしたまはめ
[注解]
<>→也 [尼][類][古] / <>→斯 [尼][類]
[検索用キーワード]
雑歌 歌物語 物語 伝承 女歌 怨恨 恋愛 失恋
3810
[題詞]
味飯乎 水尓醸成 吾待之 代者曽<无> 直尓之不有者
[原文]
味飯を水に醸みなし我が待ちしかひはかつてなし直にしあらねば
[訓読]
うまいひを みづにかみなし わがまちし かひはかつてなし ただにしあらねば
[仮名]
[注解]
無→无 [尼][類][古] / 羊→年 [類][古][紀] / 娶 取 [尼][類][古]
[検索用キーワード]
雑歌 歌物語 物語 伝承 怨恨 恋愛 失恋 女歌
3811
[題詞]
戀夫君歌一首[并短歌]
[原文]
左耳通良布 君之三言等 玉梓乃 使毛不来者 憶病 吾身一曽 千<磐>破 神尓毛莫負 卜部座 龜毛莫焼曽 戀之久尓 痛吾身曽 伊知白苦 身尓染<登>保里 村肝乃 心砕而 将死命 尓波可尓成奴 今更 君可吾乎喚 足千根乃 母之御事歟 百不足 八十乃衢尓 夕占尓毛 卜尓毛曽問 應死吾之故
[訓読]
さ丹つらふ 君がみ言と 玉梓の 使も来ねば 思ひ病む 我が身ひとつぞ ちはやぶる 神にもな負ほせ 占部据ゑ 亀もな焼きそ 恋ひしくに 痛き我が身ぞ いちしろく 身にしみ通り むらきもの 心砕けて 死なむ命 にはかになりぬ 今さらに 君か我を呼ぶ たらちねの 母のみ言か 百足らず 八十の衢に 夕占にも 占にもぞ問ふ 死ぬべき我がゆゑ
[仮名]
さにつらふ きみがみことと たまづさの つかひもこねば おもひやむ あがみひとつぞ ちはやぶる かみにもなおほせ うらへすゑ かめもなやきそ こひしくに いたきあがみぞ いちしろく みにしみとほり むらきもの こころくだけて しなむいのち にはかになりぬ いまさらに きみかわをよぶ たらちねの ははのみことか ももたらず やそのちまたに ゆふけにも うらにもぞとふ しぬべきわがゆゑ
[注解]
歌 [西] 謌 / 盤→磐 [尼][類][紀] / <> →登 [代匠記精撰本]
[検索用キーワード]
雑歌 枕詞 恋情 女歌 歌物語 伝承 作者:車持娘子
3812
[題詞]
(戀夫君歌一首[并短歌])反歌
[原文]
卜部乎毛 八十乃衢毛 占雖問 君乎相見 多時不知毛
[訓読]
占部をも八十の衢も占問へど君を相見むたどき知らずも
[仮名]
うらへをも やそのちまたも うらとへど きみをあひみむ たどきしらずも
[検索用キーワード]
雑歌 恋情 女歌 歌物語 伝承 作者:車持娘子
3813
[題詞]
(戀夫君歌一首[并短歌])或本反歌曰
[原文]
吾命者 惜雲不有 散<追>良布 君尓依而曽 長欲為
[訓読]
我が命は惜しくもあらずさ丹つらふ君によりてぞ長く欲りせし
[仮名]
わがいのちは をしくもあらず さにつらふ きみによりてぞ ながくほりせし
[注解]
退→追 [尼][類][古][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 歌物語 女歌 枕詞 恋情 伝承 作者:車持娘子
3814
[題詞]
贈歌一首
[原文]
真珠者 緒絶為尓伎登 聞之故尓 其緒復貫 吾玉尓将為
[訓読]
白玉は緒絶えしにきと聞きしゆゑにその緒また貫き我が玉にせむ
[仮名]
しらたまは をだえしにきと ききしゆゑに そのをまたぬき わがたまにせむ
[検索用キーワード]
雑歌 求婚 譬喩 歌物語 伝承 恋愛 贈答
3815
[題詞]
答歌一首
[原文]
白玉之 緒絶者信 雖然 其緒又貫 人持去家有
[訓読]
白玉の緒絶えはまことしかれどもその緒また貫き人持ち去にけり
[仮名]
しらたまの をだえはまこと しかれども そのをまたぬき ひともちいにけり
[注解]
歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 / 縁也 [尼][類][古][細](塙) 縁
[検索用キーワード]
雑歌 譬喩 歌物語 伝承 恋愛 贈答
3816
[題詞]
穂積親王御歌一首
[原文]
家尓有之 櫃尓カ刺 蔵而師 戀乃奴之 束見懸而
[訓読]
家にありし櫃にかぎさし蔵めてし恋の奴のつかみかかりて
[仮名]
いへにありし ひつにかぎさし をさめてし こひのやつこの つかみかかりて
[注解]
歌 [西] 謌
[検索用キーワード]
雑歌 作者:穂積皇子 宴席 伝承 誦詠 戯笑 恋愛
3817
[題詞]
[原文]
可流羽須波 田廬乃毛等尓 吾兄子者 二布夫尓咲而 立麻為所見 [田廬者多夫世<反>]
[訓読]
かるうすは田ぶせの本に我が背子はにふぶに笑みて立ちませり見ゆ [田廬者多夫世<反>]
[仮名]
かるうすは たぶせのもとに わがせこは にふぶにゑみて たちませりみゆ
[注解]
也 [西(訂正右書)]→反 [類][紀][古]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:河村王 誦詠 伝承 宴席 戯笑 恋愛
3818
[題詞]
[原文]
朝霞 香火屋之下乃 鳴川津 之努比管有常 将告兒毛欲得
[訓読]
朝霞鹿火屋が下の鳴くかはづ偲ひつつありと告げむ子もがも
[仮名]
あさかすみ かひやがしたの なくかはづ しのひつつありと つげむこもがも
[検索用キーワード]
雑歌 作者:河村王 誦詠 伝承 宴席 戯笑 恋愛
3819
[題詞]
[原文]
暮立之 雨打零者 春日野之 草花之末乃 白露於母保遊
[訓読]
夕立の雨うち降れば春日野の尾花が末の白露思ほゆ
[仮名]
ゆふだちの あめうちふれば かすがのの をばながうれの しらつゆおもほゆ
[検索用キーワード]
雑歌 作者:小鯛王 宴席 地名 奈良 譬喩 恋愛 伝承 誦詠 置始工 置始多久美 遊行女婦
3820
[題詞]
[原文]
夕附日 指哉河邊尓 構屋之 形乎宜美 諾所因来
[訓読]
夕づく日さすや川辺に作る屋の形をよろしみうべ寄そりけり
[仮名]
ゆふづくひ さすやかはへに つくるやの かたをよろしみ うべよそりけり
[検索用キーワード]
雑歌 作者:小鯛王 置始工 置始多久美 誦詠 宴席 伝承 遊行女婦 恋愛
3821
[題詞]
兒部女王嗤歌一首
[原文]
美麗物 何所不飽矣 坂門等之 角乃布久礼尓 四具比相尓計六
[訓読]
うましものいづく飽かじをさかとらが角のふくれにしぐひ合ひにけむ
[仮名]
うましもの いづくあかじを さかとらが つののふくれに しぐひあひにけむ
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雑歌 作者:児部女王 兒部女王 尺度 大阪 坂門氏 嘲笑 伝承 戯笑 恋愛
3822
[題詞]
古歌曰
[原文]
橘 寺之長屋尓 吾率宿之 童女波奈理波 髪上都良武可
[訓読]
橘の寺の長屋に我が率寝し童女放髪は髪上げつらむか
[仮名]
たちばなの てらのながやに わがゐねし うなゐはなりは かみあげつらむか
[注解]
艸→丱 [類][紀][温] / 脉 [万葉集拾穂抄](塙) 説 / 腰 [西(訂正左書)] →腹
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雑歌 地名 明日香 奈良 古歌 伝承 誦詠 椎野長年 恋愛
3823
[題詞]
决<曰>
[原文]
橘之 光有長屋尓 吾率宿之 宇奈為放尓 髪擧都良武香
[訓読]
橘の照れる長屋に我が率ねし童女放髪に髪上げつらむか
[仮名]
たちばなの てれるながやに わがゐねし うなゐはなりに かみあげつらむか
[注解]
云→曰 [尼][類][古]
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雑歌 推敲 異伝 伝承 宴席 転用 改作 恋愛 植物
3824
[題詞]
長忌寸意吉麻呂歌八首
[原文]
刺名倍尓 湯和可世子等 櫟津乃 桧橋従来許武 狐尓安牟佐武
[訓読]
さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津の桧橋より来む狐に浴むさむ
[仮名]
さしなべに ゆわかせこども いちひつの ひばしよりこむ きつねにあむさむ
[注解]
會→集 [尼][類][紀] / 是→時 [尼][類] / 歌 [西] 哥
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雑歌 物名 宴席 作者:長意吉麻呂 戯笑 即興 伝承 誦詠
3825
[題詞]
詠行騰蔓菁食薦屋a歌
[原文]
食薦敷 蔓菁煮将来 a尓 行騰懸而 息此公
[訓読]
食薦敷き青菜煮て来む梁にむかばき懸けて休むこの君
[仮名]
すごもしき あをなにてこむ うつはりに むかばきかけて やすむこのきみ
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雑歌 物名 宴席 作者:長意吉麻呂 戯笑 即興 誦詠 植物
3826
[題詞]
詠荷葉歌
[原文]
蓮葉者 如是許曽有物 意吉麻呂之 家在物者 <宇>毛乃葉尓有之
[訓読]
蓮葉はかくこそあるもの意吉麻呂が家なるものは芋の葉にあらし
[仮名]
はちすばは かくこそあるもの おきまろが いへなるものは うものはにあらし
[注解]
キ→宇 [尼][類][古]
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雑歌 物名 宴席 作者:長意吉麻呂 戯笑 即興 誦詠 植物
3827
[題詞]
詠雙六頭歌
[原文]
一二之目 耳不有 五六三 四佐倍有<来> 雙六乃佐叡
[訓読]
一二の目のみにはあらず五六三四さへありけり双六のさえ
[仮名]
いちにのめ のみにはあらず ごろくさむ しさへありけり すぐろくのさえ
[注解]
<> →来 [古]
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雑歌 物名 宴席 作者:長意吉麻呂 戯笑 即興 誦詠
3828
[題詞]
詠香塔厠<屎>鮒奴歌
[原文]
香塗流 塔尓莫依 川隈乃 屎鮒喫有 痛女奴
[訓読]
香塗れる塔にな寄りそ川隈の屎鮒食めるいたき女奴
[仮名]
かうぬれる たふになよりそ かはくまの くそふなはめる いたきめやつこ
[注解]
屎 [西(上書訂正)][尼][類][古]
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雑歌 物名 宴席 作者:長意吉麻呂 戯笑 即興 誦詠 動物
3829
[題詞]
詠酢醤蒜鯛水ク歌
[原文]
醤酢尓 蒜都伎合而 鯛願 吾尓勿所見 水ク乃煮物
[訓読]
醤酢尓 蒜都伎合而 鯛願 吾尓勿所見 水ク乃煮物
[仮名]
ひしほすに ひるつきかてて たひねがふ われになみえそ なぎのあつもの
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雑歌 物名 宴席 作者:長意吉麻呂 戯笑 即興 誦詠 植物 動物
3830
[題詞]
詠玉掃鎌天木香棗歌
[原文]
玉掃 苅来鎌麻呂 室乃樹 與棗本 可吉将掃為
[訓読]
玉掃刈り来鎌麻呂むろの木と棗が本とかき掃かむため
[仮名]
たまばはき かりこかままろ むろのきと なつめがもとと かきはかむため
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雑歌 物名 宴席 作者:長意吉麻呂 戯笑 即興 誦詠 植物
3831
[題詞]
詠白鷺啄木飛歌
[原文]
池神 力土N可母 白鷺乃 桙啄持而 飛渡良武
[訓読]
池神の力士舞かも白鷺の桙啄ひ持ちて飛び渡るらむ
[仮名]
いけがみの りきじまひかも しらさぎの ほこくひもちて とびわたるらむ
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雑歌 物名 宴席 作者:長意吉麻呂 戯笑 即興 誦詠 動物
3832
[題詞]
忌部首詠數種物歌一首 [名忘失也]
[原文]
枳 蕀原苅除曽氣 倉将立 屎遠麻礼 櫛造刀自
[訓読]
からたちと茨刈り除け倉建てむ屎遠くまれ櫛造る刀自
[仮名]
からたちと うばらかりそけ くらたてむ くそとほくまれ くしつくるとじ
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雑歌 作者:忌部首 物名 宴席 戯笑 誦詠 即興 植物
3833
[題詞]
境部王詠數種物歌一首 [穂積親王之子也]
[原文]
虎尓乗 古屋乎越而 青淵尓 鮫龍取将来 劒刀毛我
[訓読]
虎に乗り古屋を越えて青淵に蛟龍捕り来む剣太刀もが
[仮名]
とらにのり ふるやをこえて あをふちに みつちとりこむ つるぎたちもが
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雑歌 動物 作者:境部王 物名 宴席 即興 穂積王 誦詠
3834
[題詞]
作主未詳歌一首
[原文]
成棗 寸三二粟嗣 延田葛乃 後毛将相跡 葵花咲
[訓読]
梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く
[仮名]
なしなつめ きみにあはつぎ はふくずの のちもあはむと あふひはなさく
[検索用キーワード]
雑歌 植物 物名 宴席 誦詠 戯笑 譬喩 掛詞 序詞
3835
[題詞]
獻新田部親王歌一首 [未詳]
[原文]
勝間田之 池者我知 蓮無 然言君之 鬚無如之
[訓読]
勝間田の池は我れ知る蓮なししか言ふ君が鬚なきごとし
[仮名]
かつまたの いけはわれしる はちすなし しかいふきみが ひげなきごとし
[注解]
<>→間 [古][温][矢][京]
[検索用キーワード]
雑歌 伝承 新田部皇子 植物 地名 奈良 物名 戯笑 宴席
3836
[題詞]
謗<侫>人歌一首
[原文]
奈良山乃 兒手柏之 兩面尓 左毛右毛 <侫>人之友
[訓読]
奈良山の児手柏の両面にかにもかくにも侫人の伴
[仮名]
ならやまの このてかしはの ふたおもに かにもかくにも こびひとがとも
[注解]
ケ 侫 [尼][細][温] / ケ 侫 [尼]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:消奈行文 嘲笑 戯笑 宴席 地名 奈良 植物
3837
[題詞]
[原文]
久堅之 雨毛落奴可 蓮荷尓 渟在水乃 玉似<有将>見
[訓読]
ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に溜まれる水の玉に似たる見む
[仮名]
ひさかたの あめもふらぬか はちすばに たまれるみづの たまににたるみむ
[注解]
将有→有将 [代匠記初稿本] / 歌 [西] 哥 / 歌 [西] 哥 / 開→關 [温] / 此歌→歌
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雑歌 枕詞 宴席 誦詠 物名 即興 伝承
3838
[題詞]
無心所著歌二首
[原文]
吾妹兒之 額尓生<流> 雙六乃 事負乃牛之 倉上之瘡
[訓読]
我妹子が額に生ふる双六のこと負の牛の鞍の上の瘡
[仮名]
わぎもこが ひたひにおふる すぐろくの ことひのうしの くらのうへのかさ
[注解]
<>→流 [尼][類][古][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:安倍子祖父 舎人親王 即興 宴席 報償 伝承 誦詠
3839
[題詞]
(無心所著歌二首)
[原文]
吾兄子之 犢鼻尓為流 都夫礼石之 吉野乃山尓 氷魚曽懸有 [懸有反云 佐<我>礼流]
[訓読]
我が背子が犢鼻にするつぶれ石の吉野の山に氷魚ぞ下がれる [懸有反云 佐<我>礼流]
[仮名]
わがせこが たふさきにする つぶれいしの よしののやまに ひをぞさがれる
[注解]
家→我 [類][古] (塙) [尼] 義 / 歌 [西] 哥
[検索用キーワード]
雑歌 作者:安倍子祖父 舎人親王 即興 宴席 報償 伝承 誦詠 地名 吉野 奈良
3840
[題詞]
池田朝臣嗤大神朝臣奥守歌一首 [池田朝臣名忘失也]
[原文]
寺々之 女餓鬼申久 大神乃 男餓鬼被給而 其子将播
[訓読]
寺々の女餓鬼申さく大神の男餓鬼賜りてその子産まはむ
[仮名]
てらてらの めがきまをさく おほかみの をがきたばりて そのこうまはむ
[検索用キーワード]
雑歌 作者:池田真枚 大神奥守 嘲笑 戯笑 誦詠
3841
[題詞]
大神朝臣奥守報嗤歌一首
[原文]
大神朝臣奥守報嗤歌一首
[訓読]
仏造るま朱足らずは水溜まる池田の朝臣が鼻の上を掘れ
[仮名]
ほとけつくる まそほたらずは みづたまる いけだのあそが はなのうへをほれ
[注解]
歌 [西] 哥
[検索用キーワード]
雑歌 作者:大神奥守 池田真枚 嘲笑 戯笑 誦詠
3842
[題詞]
或云 / 平群朝臣<嗤>歌一首
[原文]
小兒等 草者勿苅 八穂蓼乎 穂積乃阿曽我 腋草乎可礼
[訓読]
童ども草はな刈りそ八穂蓼を穂積の朝臣が腋草を刈れ
[仮名]
わらはども くさはなかりそ やほたでを ほづみのあそが わきくさをかれ
[注解]
<>→嗤 [尼][古][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:平群広成 穂積老人 嘲笑 戯笑 誦詠 枕詞
3843
[題詞]
穂積朝臣和歌一首
[原文]
何所曽 真朱穿岳 薦疊 平群乃阿曽我 鼻上乎穿礼
[訓読]
いづくにぞま朱掘る岡薦畳平群の朝臣が鼻の上を掘れ
[仮名]
いづくにぞ まそほほるをか こもたたみ へぐりのあそが はなのうへをほれ
[注解]
歌 [西] 謌
[検索用キーワード]
雑歌 作者:穂積老人 平群広成 嘲笑 戯笑 誦詠 枕詞
3844
[題詞]
嗤咲黒色歌一首
[原文]
烏玉之 斐太乃大黒 毎見 巨勢乃小黒之 所念可聞
[訓読]
ぬばたまの斐太の大黒見るごとに巨勢の小黒し思ほゆるかも
[仮名]
ぬばたまの ひだのおほぐろ みるごとに こせのをぐろし おもほゆるかも
[検索用キーワード]
雑歌 枕詞 作者:土師水通 巨勢斐太 巨勢豊人 嘲笑 戯笑 誦詠
3845
[題詞]
答歌一首
[原文]
造駒 土師乃志婢麻呂 白<久>有者 諾欲将有 其黒色乎
[訓読]
駒造る土師の志婢麻呂白くあればうべ欲しからむその黒色を
[仮名]
こまつくる はじのしびまろ しろくあれば うべほしからむ そのくろいろを
[注解]
尓→久 [尼][類][古] / <>→嗤 [西(右書)][尼][類][紀] / <>→而 [尼][類][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 土師水通 巨勢斐太 作者:巨勢豊人 嘲笑 戯笑 誦詠
3846
[題詞]
戯嗤僧歌一首
[原文]
法師等之 鬚乃剃杭 馬繋 痛勿引曽 僧半甘
[訓読]
法師らが鬚の剃り杭馬繋いたくな引きそ法師は泣かむ
[仮名]
ほふしらが ひげのそりくひ うまつなぎ いたくなひきそ ほふしはなかむ
[検索用キーワード]
雑歌 戯笑 嘲笑
3847
[題詞]
法師報歌一首
[原文]
檀越也 然勿言 <五十>戸<長>我 課役徴者 汝毛半甘
[訓読]
壇越やしかもな言ひそ里長が課役徴らば汝も泣かむ
[仮名]
だにをちや しかもないひそ さとをさが えだちはたらば いましもなかむ
[注解]
弖→五十 [万葉集古義] / 等→長 [万葉集新考]
[検索用キーワード]
雑歌 報贈 作者:僧 戯笑 嘲笑
3848
[題詞]
夢裏作歌一首
[原文]
荒城田乃 子師田乃稲乎 倉尓擧蔵而 阿奈干稲<々々>志 吾戀良久者
[訓読]
あらき田の鹿猪田の稲を倉に上げてあなひねひねし我が恋ふらくは
[仮名]
あらきたの ししだのいねを くらにあげて あなひねひねし あがこふらくは
[注解]
干稲 →々々 [尼][類][古] / 不→令 [西(訂正左書)][矢][京]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:忌部黒麻呂 伝承 序詞 恋情 説話
3849
[題詞]
Q世間無常歌二首
[原文]
生死之 二海乎 Q見 潮干乃山乎 之努比鶴鴨
[訓読]
生き死にの二つの海を厭はしみ潮干の山を偲ひつるかも
[仮名]
いきしにの ふたつのうみを いとはしみ しほひのやまを しのひつるかも
[検索用キーワード]
雑歌 無常 厭世 仏教 須弥山 華厳経 川原寺 明日香 奈良
3850
[題詞]
Q世間無常歌二首
[原文]
世間之 繁借廬尓 住々而 将至國之 多附不知聞
[訓読]
世間の繁き刈廬に住み住みて至らむ国のたづき知らずも
[仮名]
よのなかの しげきかりほに すみすみて いたらむくにの たづきしらずも
[検索用キーワード]
雑歌 仏教 厭世 世間虚仮 極楽 川原寺 明日香 奈良
3851
[題詞]
[原文]
心乎之 無何有乃郷尓 置而有者 藐狐射能山乎 見末久知香谿務
[訓読]
心をし無何有の郷に置きてあらば藐孤射の山を見まく近けむ
[仮名]
こころをし むがうのさとに おきてあらば はこやのやまを みまくちかけむ
[検索用キーワード]
雑歌 荘子 遁世 無心
3852
[題詞]
[原文]
鯨魚取 海哉死為流 山哉死為流 死許曽 海者潮干而 山者枯為礼
[訓読]
鯨魚取り海や死にする山や死にする死ぬれこそ海は潮干て山は枯れすれ
[仮名]
いさなとり うみやしにする やまやしにする しぬれこそ うみはしほひて やまはかれすれ
[検索用キーワード]
雑歌 枕詞 仏教 輪廻 無常 旋頭歌 譬喩
3853
[題詞]
嗤咲痩人歌二首
[原文]
石麻呂尓 吾物申 夏痩尓 <吉>跡云物曽 武奈伎取<喫> [賣世反也]
[訓読]
石麻呂に我れ物申す夏痩せによしといふものぞ鰻捕り食せ [賣世反也]
[仮名]
いはまろに われものまをす なつやせに よしといふものぞ むなぎとりめせ
[注解]
告→吉 [類][古][紀] / 食 喫 [尼][類]
[検索用キーワード]
雑歌 吉田老 作者:大伴家持 戯笑 嘲笑 動物
3854
[題詞]
嗤咲痩人歌二首
[原文]
痩々母 生有者将在乎 波多也波多 武奈伎乎漁取跡 河尓流勿
[訓読]
痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた鰻を捕ると川に流るな
[仮名]
やすやすも いけらばあらむを はたやはた むなぎをとると かはにながるな
[注解]
漁取 [尼][類] 漁 / 教→敬 [尼][類][古] / <>→因 [西(右書)][尼][類][古]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:大伴家持 吉田老 戯笑 嘲笑 動物
3855
[題詞]
高宮王詠數首物歌二首
[原文]
コ莢尓 延於保登礼流 屎葛 絶事無 宮将為
[訓読]
さう莢に延ひおほとれる屎葛絶ゆることなく宮仕へせむ
[仮名]
さうけふに はひおほとれる くそかづら たゆることなく みやつかへせむ
[検索用キーワード]
雑歌 作者:高宮王 物名 宴席 即興 植物
3856
[題詞]
高宮王詠數首物歌二首
[原文]
波羅門乃 作有流小田乎 喫烏 <瞼>腫而 幡幢尓居
[訓読]
波羅門の作れる小田を食む烏瞼腫れて幡桙に居り
[仮名]
ばらもにの つくれるをだを はむからす まなぶたはれて はたほこにをり
[注解]
サ→瞼 [古][紀][矢][京]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:高宮王 物名 宴席 即興 動物
3857
[題詞]
戀夫君歌一首
[原文]
飯喫騰 味母不在 雖行徃 安久毛不有 赤根佐須 君之情志 忘可祢津藻
[訓読]
飯食めど うまくもあらず 行き行けど 安くもあらず あかねさす 君が心し 忘れかねつも
[仮名]
いひはめど うまくもあらず ゆきゆけど やすくもあらず あかねさす きみがこころし わすれかねつも
[注解]
採→探 [尼][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 枕詞 伝承 佐為王婢 遊仙窟 恋情 誦詠
3858
[題詞]
[原文]
比来之 吾戀力 記集 功尓申者 五位乃冠
[訓読]
このころの我が恋力記し集め功に申さば五位の冠
[仮名]
このころの あがこひぢから しるしあつめ くうにまをさば ごゐのかがふり
[検索用キーワード]
雑歌 恋情 戯笑 嘲笑 誦詠 宴席
3859
[題詞]
[原文]
<頃>者之 吾戀力 不給者 京兆尓 出而将訴
[訓読]
このころの我が恋力賜らずはみさとづかさに出でて訴へむ
[仮名]
このころの あがこひぢから たばらずは みさとづかさに いでてうれへむ
[注解]
項→頃 [温][細]
[検索用キーワード]
雑歌 恋情 戯笑 嘲笑 誦詠 宴席
3860
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
王之 不遣尓 情進尓 行之荒雄良 奥尓袖振
[訓読]
大君の遣はさなくにさかしらに行きし荒雄ら沖に袖振る
[仮名]
おほきみの つかはさなくに さかしらに ゆきしあらをら おきにそでふる
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 代作 福岡 志賀島 神亀 年紀
3861
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
荒雄良乎 将来可不来可等 飯盛而 門尓出立 雖待来不座
[訓読]
荒雄らを来むか来じかと飯盛りて門に出で立ち待てど来まさず
[仮名]
あらをらを こむかこじかと いひもりて かどにいでたち まてどきまさず
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 悲別 代作 荒雄妻 女歌 福岡 志賀島 神亀 年紀
3862
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
志賀乃山 痛勿伐 荒雄良我 余須可乃山跡 見管将偲
[訓読]
志賀の山いたくな伐りそ荒雄らがよすかの山と見つつ偲はむ
[仮名]
しかのやま いたくなきりそ あらをらが よすかのやまと みつつしのはむ
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 悲別 代作 荒雄妻 女歌 地名 志賀島 福岡 神亀 年紀
3863
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
荒雄良我 去尓之日従 志賀乃安麻乃 大浦田沼者 不樂有哉
[訓読]
荒雄らが行きにし日より志賀の海人の大浦田沼は寂しくもあるか
[仮名]
あらをらが ゆきにしひより しかのあまの おほうらたぬは さぶしくもあるか
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 悲別 代作 荒雄妻 女歌 地名 志賀島 福岡 神亀 年紀
3864
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
官許曽 指弖毛遣米 情出尓 行之荒雄良 波尓袖振
[訓読]
官こそさしても遣らめさかしらに行きし荒雄ら波に袖振る
[仮名]
つかさこそ さしてもやらめ さかしらに ゆきしあらをら なみにそでふる
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 悲別 代作 志賀島 福岡 神亀 年紀
3865
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
荒雄良者 妻子之産業乎波 不念呂 年之八歳乎 将騰来不座
[訓読]
荒雄らは妻子の業をば思はずろ年の八年を待てど来まさず
[仮名]
あらをらは めこのなりをば おもはずろ としのやとせを まてどきまさず
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 悲別 代作 荒雄妻 女歌 地名 志賀島 福岡 神亀 年紀
3866
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
奥鳥 鴨云船之 還来者 也良乃<埼>守 早告許曽
[訓読]
沖つ鳥鴨とふ船の帰り来ば也良の崎守早く告げこそ
[仮名]
おきつとり かもとふふねの かへりこば やらのさきもり はやくつげこそ
[注解]
崎→埼 [尼][類][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 悲別 代作 荒雄妻 女歌 地名 志賀島 福岡 神亀 年紀
3867
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
奥鳥 鴨云舟者 也良乃<埼> 多未弖榜来跡 所<聞>許奴可聞
[訓読]
沖つ鳥鴨とふ船は也良の崎廻みて漕ぎ来と聞こえ来ぬかも
[仮名]
おきつとり かもとふふねは やらのさき たみてこぎくと きこえこぬかも
[注解]
崎→埼 [尼][類][紀] / 聞礼→聞 [尼]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 悲別 代作 荒雄妻 女歌 地名 志賀島 福岡 神亀 年紀
3868
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
奥去哉 赤羅小船尓 L遣者 若人見而 解披見鴨
[訓読]
沖行くや赤ら小舟につと遣らばけだし人見て開き見むかも
[仮名]
おきゆくや あからをぶねに つとやらば けだしひとみて ひらきみむかも
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 悲別 代作 荒雄妻 女歌 地名 志賀島 福岡 神亀 年紀
3869
[題詞]
筑前國志賀白水郎歌十首
[原文]
大船尓 小船引副 可豆久登毛 志賀乃荒雄尓 潜将相八方
[訓読]
大船に小舟引き添へ潜くとも志賀の荒雄に潜き逢はめやも
[仮名]
おほぶねに をぶねひきそへ かづくとも しかのあらをに かづきあはめやも
[注解]
崎→埼 [尼][類][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:山上憶良 志賀白水郎 荒雄 伝承 同情 恋情 功績 悲別 代作 荒雄妻 女歌 地名 志賀島 福岡 神亀 年紀
3870
[題詞]
[原文]
紫乃 粉滷乃海尓 潜鳥 珠潜出者 吾玉尓将為
[訓読]
紫の粉潟の海に潜く鳥玉潜き出ば我が玉にせむ
[仮名]
むらさきの こがたのうみに かづくとり たまかづきでば わがたまにせむ
[検索用キーワード]
雑歌 地名 枕詞 動物 民謡 歌謡 恋愛 譬喩
3871
[題詞]
角嶋之 迫門乃稚海藻者 人之共 荒有之可杼 吾共者和海藻
[原文]
角島の瀬戸のわかめは人の共荒かりしかど我れとは和海藻
[訓読]
つのしまの せとのわかめは ひとのむた あらかりしかど われとはにきめ
[仮名]
[検索用キーワード]
雑歌 地名 山口 植物 民謡 歌謡 歌垣 譬喩
3872
[題詞]
[原文]
吾門之 榎實毛利喫 百千鳥 々々者雖来 君曽不来座
[訓読]
我が門の榎の実もり食む百千鳥千鳥は来れど君ぞ来まさぬ
[仮名]
わがかどの えのみもりはむ ももちとり ちとりはくれど きみぞきまさぬ
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雑歌 植物 動物 女歌 怨恨 恋情 民謡 歌謡
3873
[題詞]
[原文]
吾門尓 千鳥數鳴 起余々々 我一夜妻 人尓所知名
[訓読]
我が門に千鳥しば鳴く起きよ起きよ我が一夜夫人に知らゆな
[仮名]
わがかどに ちとりしばなく おきよおきよ わがひとよづま ひとにしらゆな
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雑歌 動物 女歌 遊行女婦 歌謡
3874
[題詞]
[原文]
所射鹿乎 認河邊之 和草 身若可倍尓 佐宿之兒等波母
[訓読]
射ゆ鹿を認ぐ川辺のにこ草の身の若かへにさ寝し子らはも
[仮名]
いゆししを つなぐかはへの にこぐさの みのわかかへに さねしこらはも
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雑歌 恋愛 回想 歌謡 動物 序詞
3875
[題詞]
琴酒乎 押垂小野従 出流水 奴流久波不出 寒水之 心毛計夜尓 所念 音之少寸 道尓相奴鴨 少寸四 道尓相佐婆 伊呂雅世流 菅笠小笠 吾宇奈雅流 珠乃七條 取替毛 将申物乎 少寸 道尓相奴鴨
[原文]
琴酒を 押垂小野ゆ 出づる水 ぬるくは出でず 寒水の 心もけやに 思ほゆる 音の少なき 道に逢はぬかも 少なきよ 道に逢はさば 色げせる 菅笠小笠 我がうなげる 玉の七つ緒 取り替へも 申さむものを 少なき道に 逢はぬかも
[訓読]
ことさけを おしたれをのゆ いづるみづ ぬるくはいでず さむみづの こころもけやに おもほゆる おとのすくなき みちにあはぬかも すくなきよ みちにあはさば いろげせる すげかさをがさ わがうなげる たまのななつを とりかへも まをさむものを すくなきみちに あはぬかも
[仮名]
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雑歌 序詞 問答 恋愛
3876
[題詞]
豊前國白水郎歌一首
[原文]
豊國 企玖乃池奈流 菱之宇礼乎 採跡也妹之 御袖所沾計武
[訓読]
豊国の企救の池なる菱の末を摘むとや妹がみ袖濡れけむ
[仮名]
とよくにの きくのいけなる ひしのうれを つむやといもが みそでぬれけむ
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雑歌 福岡 採菱 労働 民謡 地名
3877
[題詞]
豊後國白水郎歌一首
[原文]
紅尓 染而之衣 雨零而 尓保比波雖為 移波米也毛
[訓読]
紅に染めてし衣雨降りてにほひはすともうつろはめやも
[仮名]
くれなゐに そめてしころも あめふりて にほひはすとも うつろはめやも
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雑歌 大分 民謡 恋愛 歌謡
3878
[題詞]
能登國歌三首
[原文]
<シ>楯 熊来乃夜良尓 新羅斧 堕入 和之 河毛R河毛R 勿鳴為曽弥 浮出流夜登将見 和之
[訓読]
はしたての 熊来のやらに 新羅斧 落し入れ わし かけてかけて な泣かしそね 浮き出づるやと見む わし
[仮名]
はしたての くまきのやらに しらきをの おとしいれ わし かけてかけて ななかしそね うきいづるやとみむ わし
[検索用キーワード]
楷→シ [尼][類][紀] / 河 [類](塙) 阿
3879
[題詞]
能登國歌三首
[原文]
シ楯 熊来酒屋尓 真奴良留奴 和之 佐須比立 率而来奈麻之乎 真奴良留奴 和之
[訓読]
はしたての 熊来酒屋に まぬらる奴 わし さすひ立て 率て来なましを まぬらる奴 わし
[仮名]
はしたての くまきさかやに まぬらるやつこ わし さすひたて ゐてきなましを まぬらるやつこ わし
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雑歌 石川 枕詞 中島町 民謡 歌謡 嘲笑 戯笑
3880
[題詞]
能登國歌三首
[原文]
所聞多祢乃 机之嶋能 小螺乎 伊拾持来而 石以 都追伎破夫利 早川尓 洗濯 辛塩尓 古胡登毛美 高坏尓盛 机尓立而 母尓奉都也 目豆兒乃<ス> 父尓獻都也 身女兒乃<ス>
[訓読]
鹿島嶺の 机の島の しただみを い拾ひ持ち来て 石もち つつき破り 早川に 洗ひ濯ぎ 辛塩に こごと揉み 高坏に盛り 机に立てて 母にあへつや 目豆児の刀自 父にあへつや 身女児の刀自
[仮名]
かしまねの つくゑのしまの しただみを いひりひもちきて いしもち つつきやぶり はやかはに あらひすすぎ からしほに こごともみ たかつきにもり つくゑにたてて ははにあへつや めづこのとじ ちちにあへつや みめこのとじ
[注解]
屓→ス [尼]
[検索用キーワード]
雑歌 石川 地名 能登島 民謡 歌謡
3881
[題詞]
越中國歌四首
[原文]
大野路者 繁道森p 之氣久登毛 君志通者 p者廣計武
[訓読]
大野道は茂道茂路茂くとも君し通はば道は広けむ
[仮名]
おほのぢは しげちしげみち しげくとも きみしかよはば みちはひろけむ
[検索用キーワード]
雑歌 富山 転用 女歌 恋愛 民謡 歌謡
3882
[題詞]
越中國歌四首
[原文]
澁谿乃 二上山尓 鷲曽子産跡云 指羽尓毛 君之御為尓 鷲曽子生跡云
[訓読]
渋谿の二上山に鷲ぞ子産むといふ翳にも君のみために鷲ぞ子産むといふ
[仮名]
しぶたにの ふたがみやまに わしぞこむといふ さしはにも きみのみために わしぞこむといふ
[検索用キーワード]
雑歌 富山 地名 民謡 歌謡 旋頭歌
3883
[題詞]
越中國歌四首
[原文]
伊夜彦 於能礼神佐備 青雲乃 田名引日<須>良 X曽保零 [一云 安奈尓可武佐備]
[訓読]
弥彦おのれ神さび青雲のたなびく日すら小雨そほ降る [一云 あなに神さび]
[仮名]
いやひこ おのれかむさび あをくもの たなびくひすら こさめそほふる [あなにかむさび]
[注解]
<>→須 [代匠記精撰本]
[検索用キーワード]
雑歌 越後 新潟 地名 神事 歌謡
3884
[題詞]
越中國歌四首
[原文]
伊夜彦 神乃布本 今日良毛加 鹿乃伏<良>武 皮服著而 角附奈我良
[訓読]
弥彦神の麓に今日らもか鹿の伏すらむ皮衣着て角つきながら
[仮名]
いやひこ かみのふもとに けふらもか しかのふすらむ かはころもきて つのつきながら
[注解]
<>→良 [西(左書)][尼][紀][温]
[検索用キーワード]
雑歌 越後 新潟 仏足石歌体 神事 歌謡
3885
[題詞]
乞食者<詠>二首
[原文]
伊刀古 名兄乃君 居々而 物尓伊行跡波 韓國乃 虎神乎 生取尓 八頭取持来 其皮乎 多々弥尓刺 八重疊 平群乃山尓 四月 与五月間尓 藥猟 仕流時尓 足引乃 此片山尓 二立 伊智比何本尓 梓弓 八多婆佐弥 比米加夫良 八多婆左弥 完待跡 吾居時尓 佐男鹿乃 来<立>嘆久 頓尓 吾可死 王尓 吾仕牟 吾角者 御笠乃<波>夜詩 吾耳者 御墨坩 吾目良波 真墨乃鏡 吾爪者 御弓之弓波受 吾毛等者 御筆波夜斯 吾皮者 御箱皮尓 吾完者 御奈麻須波夜志 吾伎毛母 御奈麻須波夜之 吾美義波 御塩乃波夜之 耆矣奴 吾身一尓 七重花佐久 八重花生跡 白賞尼 <白賞尼>
[訓読]
いとこ 汝背の君 居り居りて 物にい行くとは 韓国の 虎といふ神を 生け捕りに 八つ捕り持ち来 その皮を 畳に刺し 八重畳 平群の山に 四月と 五月との間に 薬猟 仕ふる時に あしひきの この片山に 二つ立つ 櫟が本に 梓弓 八つ手挟み ひめ鏑 八つ手挟み 獣待つと 我が居る時に さを鹿の 来立ち嘆かく たちまちに 我れは死ぬべし 大君に 我れは仕へむ 我が角は み笠のはやし 我が耳は み墨の坩 我が目らは ますみの鏡 我が爪は み弓の弓弭 我が毛らは み筆はやし 我が皮は み箱の皮に 我が肉は み膾はやし 我が肝も み膾はやし 我がみげは み塩のはやし 老いたる奴 我が身一つに 七重花咲く 八重花咲くと 申しはやさね 申しはやさね
[仮名]
いとこ なせのきみ をりをりて ものにいゆくとは からくにの とらといふかみを いけどりに やつとりもちき そのかはを たたみにさし やへたたみ へぐりのやまに うづきと さつきとのまに くすりがり つかふるときに あしひきの このかたやまに ふたつたつ いちひがもとに あづさゆみ やつたばさみ ひめかぶら やつたばさみ ししまつと わがをるときに さをしかの きたちなげかく たちまちに われはしぬべし おほきみに われはつかへむ わがつのは みかさのはやし わがみみは みすみつほ わがめらは ますみのかがみ わがつめは みゆみのゆはず わがけらは みふみてはやし わがかはは みはこのかはに わがししは みなますはやし わがきもも みなますはやし わがみげは みしほのはやし おいたるやつこ あがみひとつに ななへはなさく やへはなさくと まをしはやさね まをしはやさね
[注解]
詠歌 [西(右書)] →詠 [類][紀][細] / 完 [類] 宍 / 立来→立 [尼] / 婆→波 [尼][類][紀] / 完 [類] 宍 / 々々々→白賞尼 [尼][類][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:乞食者 寿歌 枕詞 歌謡
3886
[題詞]
乞食者<詠>二首
[原文]
忍照八 難波乃小江尓 廬作 難麻理弖居 葦河尓乎 王召跡 何為牟尓 吾乎召良米夜 明久 <吾>知事乎 歌人跡 和乎召良米夜 笛吹跡 和乎召良米夜 琴引跡 和乎召良米夜 彼<此>毛 <命>受牟跡 今日々々跡 飛鳥尓到 雖<置> <々>勿尓到雖不策 都久怒尓到 東 中門由 参納来弖 命受例婆 馬尓己曽 布毛太志可久物 牛尓己曽 鼻縄波久例 足引乃 此片山乃 毛武尓礼乎 五百枝波伎垂 天光夜 日乃異尓干 佐比豆留夜 辛碓尓舂 庭立 <手>碓子尓舂 忍光八 難波乃小江乃 始垂乎 辛久垂来弖 陶人乃 所作龜乎 今日徃 明日取持来 吾目良尓 塩と給 <セ>賞毛 <セ賞毛>
[訓読]
おしてるや 難波の小江に 廬作り 隠りて居る 葦蟹を 大君召すと 何せむに 我を召すらめや 明けく 我が知ることを 歌人と 我を召すらめや 笛吹きと 我を召すらめや 琴弾きと 我を召すらめや かもかくも 命受けむと 今日今日と 飛鳥に至り 置くとも 置勿に至り つかねども 都久野に至り 東の 中の御門ゆ 参入り来て 命受くれば 馬にこそ ふもだしかくもの 牛にこそ 鼻縄はくれ あしひきの この片山の もむ楡を 五百枝剥き垂り 天照るや 日の異に干し さひづるや 韓臼に搗き 庭に立つ 手臼に搗き おしてるや 難波の小江の 初垂りを からく垂り来て 陶人の 作れる瓶を 今日行きて 明日取り持ち来 我が目らに 塩塗りたまひ きたひはやすも きたひはやすも
[仮名]
おしてるや なにはのをえに いほつくり なまりてをる あしがにを おほきみめすと なにせむに わをめすらめや あきらけく わがしることを うたひとと わをめすらめや ふえふきと わをめすらめや ことひきと わをめすらめや かもかくも みことうけむと けふけふと あすかにいたり おくとも おくなにいたり つかねども つくのにいたり ひむがしの なかのみかどゆ まゐりきて みことうくれば うまにこそ ふもだしかくもの うしにこそ はなづなはくれ あしひきの このかたやまの もむにれを いほえはきたり あまてるや ひのけにほし さひづるや からうすにつき にはにたつ てうすにつき おしてるや なにはのをえの はつたりを からくたりきて すゑひとの つくれるかめを けふゆきて あすとりもちき わがめらに しほぬりたまひ きたひはやすも きたひはやすも
[注解]
若→吾 [尼][類][紀] / <>→此 [万葉集古義] / 令→命 [尼][類] / 立 置 (塙) / 置→々 (塙) / <> →手 [尼][類] / 時→セ [尼][類] / 々々々→セ賞毛 [尼][類][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 作者:乞食者 寿歌 歌謡 枕詞
3887
[題詞]
怕物歌三首
[原文]
天尓有哉 神樂良能小野尓 茅草苅 々々<婆>可尓 鶉乎立毛
[訓読]
天にあるやささらの小野に茅草刈り草刈りばかに鶉を立つも
[仮名]
あめにあるや ささらのをのに ちがやかり かやかりばかに うづらをたつも
[注解]
波→婆 [尼][類][古]
[検索用キーワード]
雑歌 宴席 恐怖 動物 誦詠 異界
3888
[題詞]
怕物歌三首
[原文]
奥國 領君之 <と>屋形 黄<と>乃屋形 神之門<渡>
[訓読]
沖つ国うしはく君の塗り屋形丹塗りの屋形神の門渡る
[仮名]
おきつくに うしはくきみの ぬりやかた にぬりのやかた かみのとわたる
[注解]
染→と (塙) / 涙→渡 [尼][紀]
[検索用キーワード]
雑歌 宴席 恐怖 異界 誦詠
3889
[題詞]
怕物歌三首
[原文]
人魂乃 佐青有<公>之 但獨 相有之雨夜<乃> 葉非左思所念
[訓読]
人魂のさ青なる君がただひとり逢へりし雨夜の葉非左し思ほゆ
[仮名]
ひとたまの さをなるきみが ただひとり あへりしあまよの ***しおもほゆ
[注解]
君→公 [類][古][紀] / <>→乃 [尼][類][古]
[検索用キーワード]
雑歌 難訓 恐怖 宴席 誦詠