~ 雜 歌 ~

3221

[題詞]

雜歌

[原文]

冬<木>成 春去来者 朝尓波 白露置 夕尓波 霞多奈妣久 汗瑞能振 樹奴礼我之多尓 鴬鳴母

[訓読]

冬こもり 春さり来れば 朝には 白露置き 夕には 霞たなびく 汗瑞能振 木末が下に 鴬鳴くも

[仮名]

ふゆこもり はるさりくれば あしたには しらつゆおき ゆふへには かすみたなびく **** こぬれがしたに うぐひすなくも

[注解]

不→木 [元][天][類]

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国見歌 春

3222

[題詞]

[原文]

三諸者 人之守山 本邊者 馬酔木花開 末邊方 椿花開 浦妙 山曽 泣兒守山

[訓読]

みもろは 人の守る山 本辺は 馬酔木花咲き 末辺は 椿花咲く うらぐはし 山ぞ 泣く子守る山

[仮名]

みもろは ひとのもるやま もとへは あしびはなさき すゑへは つばきはなさく うらぐはし やまぞ なくこもるやま

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神山 三輪山 明日香 地名

3223

[題詞]

[原文]

霹靂之 日香天之 九月乃 <鍾>礼乃落者 鴈音文 未来鳴 甘南備乃 清三田屋乃 垣津田乃 池之堤<之> 百不足 <五十>槻枝丹 水枝指 秋赤葉 真割持 小鈴<文>由良尓 手弱女尓 吾者有友 引攀而 峯文十遠仁 に手折 吾者持而徃 公之頭刺荷

[訓読]

かむとけの 日香空の 九月の しぐれの降れば 雁がねも いまだ来鳴かぬ 神なびの 清き御田屋の 垣つ田の 池の堤の 百足らず 斎槻の枝に 瑞枝さす 秋の黄葉 まき持てる 小鈴もゆらに 手弱女に 我れはあれども 引き攀ぢて 枝もとををに ふさ手折り 我は持ちて行く 君がかざしに

[仮名]

かむとけの **そらの ながつきの しぐれのふれば かりがねも いまだきなかぬ かむなびの きよきみたやの かきつたの いけのつつみの ももたらず いつきのえだに みづえさす あきのもみちば まきもてる をすずもゆらに たわやめに われはあれども ひきよぢて えだもとををに ふさたをり わはもちてゆく きみがかざしに

[注解]

[天][類][紀] / <>→之 [西(左書)][元][天][類] / く→五十 [万葉考] / 父→文 [元][天][紀]

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神祭り 寿歌 秋 植物 宴席 三輪山 地名

3224

[題詞]

反歌

[原文]

獨耳 見者戀染 神名火乃 山黄葉 手折来君

[訓読]

ひとりのみ見れば恋しみ神なびの山の黄葉手折り来り君

[仮名]

ひとりのみ みればこほしみ かむなびの やまのもみちば たをりけりきみ

[検索用キーワード]

宴席 三輪山 地名

3225

[題詞]

[原文]

天雲之 影<塞>所見 隠来<矣> 長谷之河者 浦無蚊 船之依不来 礒無蚊 海部之釣不為 吉咲八師 浦者無友 吉畫矢寺 礒者無友 奥津浪 諍榜入来 白水郎之釣船

[訓読]

天雲の 影さへ見ゆる こもりくの 泊瀬の川は 浦なみか 舟の寄り来ぬ 礒なみか 海人の釣せぬ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 礒はなくとも 沖つ波 競ひ漕入り来 海人の釣舟

[仮名]

あまくもの かげさへみゆる こもりくの はつせのかはは うらなみか ふねのよりこぬ いそなみか あまのつりせぬ よしゑやし うらはなくとも よしゑやし いそはなくとも おきつなみ きほひこぎりこ あまのつりぶね

[注解]

[元][天] / 笑→矣 [西(訂正)][元][天][類] / 諍 [古][類][天] 淨

[検索用キーワード]

桜井 奈良 寿歌 土地讃美

3226

[題詞]

反歌

[原文]

沙邪礼浪 浮而流 長谷河 可依礒之 無蚊不怜也

[訓読]

さざれ波浮きて流るる泊瀬川寄るべき礒のなきが寂しさ

[仮名]

さざれなみ うきてながるる はつせがは よるべきいその なきがさぶしさ

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桜井 土地讃美 寿歌

3227

[題詞]

[原文]

葦原笶 水穂之國丹 手向為跡 天降座兼 五百万 千万神之 神代従 云續来在 甘南備乃 三諸山者 春去者 春霞立 秋徃者 紅丹穂經 <甘>甞備乃 三諸乃神之 帶為 明日香之河之 水尾速 生多米難 石枕 蘿生左右二 新夜乃 好去通牟 事計 夢尓令見社 劔刀 齊祭 神二師座者

[訓読]

葦原の 瑞穂の国に 手向けすと 天降りましけむ 五百万 千万神の 神代より 言ひ継ぎ来る 神なびの みもろの山は 春されば 春霞立つ 秋行けば 紅にほふ 神なびの みもろの神の 帯ばせる 明日香の川の 水脈早み 生しためかたき 石枕 苔生すまでに 新夜の 幸く通はむ 事計り 夢に見せこそ 剣太刀 斎ひ祭れる 神にしませば

[仮名]

あしはらの みづほのくにに たむけすと あもりましけむ いほよろづ ちよろづかみの かむよより いひつぎきたる かむなびの みもろのやまは はるされば はるかすみたつ あきゆけば くれなゐにほふ かむなびの みもろのかみの おばせる あすかのかはの みをはやみ むしためかたき いしまくら こけむすまでに あらたよの さきくかよはむ ことはかり いめにみせこそ つるぎたち いはひまつれる かみにしませば

[注解]

[西(訂正)][天][紀][細]

[検索用キーワード]

明日香 奈良 寿歌 神祭り 賀歌 新婚 永遠 婚礼

3228

[題詞]

反歌

[原文]

神名備能 三諸之山丹 隠蔵杉 思将過哉 蘿生左右

[訓読]

神なびの三諸の山に斎ふ杉思ひ過ぎめや苔生すまでに

[仮名]

かむなびの みもろのやまに いはふすぎ おもひすぎめや こけむすまでに

[検索用キーワード]

睥奈良 寿歌 賀歌 新婚 永遠 婚礼

3229

[題詞]

(反歌)

[原文]

五十串立 神酒座奉 神主部之 雲聚<玉>蔭 見者乏文

[訓読]

斎串立てみわ据ゑ奉る祝部がうずの玉かげ見ればともしも

[仮名]

いぐしたて みわすゑまつる はふりへが うずのたまかげ みればともしも

[注解]

[元][天][類]

[検索用キーワード]

寿歌 新婚

3230

[題詞]

[原文]

帛S 楢従出而 水蓼 穂積至 鳥網張 坂手乎過 石走 甘南備山丹 朝宮 仕奉而 吉野部登 入座見者 古所念

[訓読]

みてぐらを 奈良より出でて 水蓼 穂積に至り 鳥網張る 坂手を過ぎ 石走る 神なび山に 朝宮に 仕へ奉りて 吉野へと 入ります見れば いにしへ思ほゆ

[仮名]

みてぐらを ならよりいでて みづたで ほづみにいたり となみはる さかてをすぎ いはばしる かむなびやまに あさみやに つかへまつりて よしのへと いりますみれば いにしへおもほゆ

[検索用キーワード]

地名 明日香 吉野 奈良 聖武天皇

3231

[題詞]

(反歌)右二首 但或本歌曰

[原文]

故王都跡津宮地

[訓読]

古き都の離宮ところ

[仮名]

ふるきみやこの とつみやところ

[検索用キーワード]

蔑宮廷讃美 聖武天皇 寿歌

3231

[題詞]

反歌

[原文]

月日 攝友 久經流 三諸之山 礪津宮地

[訓読]

月は日は変らひぬとも久に経る三諸の山の離宮ところ

[仮名]

つきひは かはらひぬとも ひさにふる みもろのやまの とつみやところ

[検索用キーワード]

睥奈良 聖武天皇 宮廷讃美 寿歌

3232

[題詞]

[原文]

斧取而 丹生桧山 木折来而 筏尓作 二梶貫 礒榜廻乍 嶋傳 雖見不飽 三吉野乃 瀧動々 落白浪

[訓読]

斧取りて 丹生の桧山の 木伐り来て 筏に作り 真楫貫き 礒漕ぎ廻つつ 島伝ひ 見れども飽かず み吉野の 瀧もとどろに 落つる白波

[仮名]

をのとりて にふのひやまの きこりきて いかだにつくり まかぢぬき いそこぎみつつ しまづたひ みれどもあかず みよしのの たきもとどろに おつるしらなみ

[検索用キーワード]

奈良 川讃美

3233

[題詞]

反歌

[原文]

三芳野 瀧動々 落白浪 留西 妹見<西>巻 欲白浪

[訓読]

み吉野の瀧もとどろに落つる白波留まりにし妹に見せまく欲しき白波

[仮名]

みよしのの たきもとどろに おつるしらなみ とまりにし いもにみせまく ほしきしらなみ

[注解]

西 [天][類]

[検索用キーワード]

奈良 旋頭歌 土地讃美 望郷

3234

[題詞]

[原文]

八隅知之 和期大皇 高照 日之皇子之 聞食 御食都國 神風之 伊勢乃國者 國見者之毛 山見者 高貴之 河見者 左夜氣久清之 水門成 海毛廣之 見渡 嶋名高之 己許乎志毛 間細美香母 <挂>巻毛 文尓恐 山邊乃 五十師乃原 尓内日刺 大宮都可倍 朝日奈須 目細毛 暮日奈須 浦細毛 春山之 四名比盛而 秋山之 色名付思吉 百礒城之 大宮人者 天地 与日月共 万代尓母我

[訓読]

やすみしし 我ご大君 高照らす 日の御子の きこしをす 御食つ国 神風の 伊勢の国は 国見ればしも 山見れば 高く貴し 川見れば さやけく清し 水門なす 海もゆたけし 見わたす 島も名高し ここをしも まぐはしみかも かけまくも あやに畏き 山辺の 五十師の原に うちひさす 大宮仕へ 朝日なす まぐはしも 夕日なす うらぐはしも 春山の しなひ栄えて 秋山の 色なつかしき ももしきの 大宮人は 天地 日月とともに 万代にもが

[仮名]

やすみしし わごおほきみ たかてらす ひのみこの きこしをす みけつくに かむかぜの いせのくには くにみればしも やまみれば たかくたふとし かはみれば さやけくきよし みなとなす うみもゆたけし みわたす しまもなたかし ここをしも まぐはしみかも かけまくも あやにかしこき やまのへの いしのはらに うちひさす おほみやつかへ あさひなす まぐはしも ゆふひなす うらぐはしも はるやまの しなひさかえて あきやまの いろなつかしき ももしきの おほみやひとは あめつち ひつきとともに よろづよにもが

[注解]

[西(訂正貼紙)][元][天][類]

[検索用キーワード]

三重県 枕詞 行幸従駕 宮廷讃美 土地讃美

3235

[題詞]

反歌

[原文]

山邊乃 五十師乃御井者 自然 成錦乎 張流山可母

[訓読]

山辺の五十師の御井はおのづから成れる錦を張れる山かも

[仮名]

やまのへの いしのみゐは おのづから なれるにしきを はれるやまかも

[検索用キーワード]

三重県 井戸 土地讃美 行幸従駕

3236

[題詞]

[原文]

空見津 倭國 青丹吉 常山越而 山代之 管木之原 血速舊 于遅乃渡 瀧屋之 阿後尼之原尾 千歳尓 闕事無 万歳尓 有通将得 山科之 石田之社之 須馬神尓 奴左取向而 吾者越徃 相坂山遠

[訓読]

そらみつ 大和の国 あをによし 奈良山越えて 山背の 管木の原 ちはやぶる 宇治の渡り 瀧つ屋の 阿後尼の原を 千年に 欠くることなく 万代に あり通はむと 山科の 石田の杜の すめ神に 幣取り向けて 我れは越え行く 逢坂山を

[仮名]

そらみつ やまとのくに あをによし ならやまこえて やましろの つつきのはら ちはやぶる うぢのわたり たぎつやの あごねのはらを ちとせに かくることなく よろづよに ありがよはむと やましなの いはたのもりの すめかみに ぬさとりむけて われはこえゆく あふさかやまを

[検索用キーワード]

地名 奈良 京都 羈旅 土地讃美 安全祈願

3237

[題詞]

或本歌曰

[原文]

緑丹吉 平山過而 物部之 氏川渡 未通女等尓 相坂山丹 手向草 絲取置而 我妹子尓 相海之海之 奥浪 来因濱邊乎 久礼々々登 獨<曽>我来 妹之目乎欲

[訓読]

あをによし 奈良山過ぎて もののふの 宇治川渡り 娘子らに 逢坂山に 手向け草 幣取り置きて 我妹子に 近江の海の 沖つ波 来寄る浜辺を くれくれと ひとりぞ我が来る 妹が目を欲り

[仮名]

あをによし ならやますぎて もののふの うぢかはわたり をとめらに あふさかやまに たむけくさ ぬさとりおきて わぎもこに あふみのうみの おきつなみ きよるはまへを くれくれと ひとりぞわがくる いもがめをほり

[注解]

塙) 青 / 雷→曽 [元][天][紀]

[検索用キーワード]

地名 奈良 京都 羈旅 滋賀 琵琶湖 望郷

3238

[題詞]

反歌

[原文]

相坂乎 打出而見者 淡海之海 白木綿花尓 浪立渡

[訓読]

逢坂をうち出でて見れば近江の海白木綿花に波立ちわたる

[仮名]

あふさかを うちいでてみれば あふみのうみ しらゆふばなに なみたちわたる

[検索用キーワード]

琵琶湖 地名 羈旅 土地讃美 叙景

3239

[題詞]

[原文]

近江之海 泊八十有 八十嶋之 嶋之埼邪伎 安利立有 花橘乎 末枝尓 毛知引懸 仲枝尓 伊加流我懸 下枝尓 <比>米乎懸 己之母乎 取久乎不知 己之父乎 取久乎思良尓 伊蘇婆比座与 伊可流我等<比>米登

[訓読]

近江の海 泊り八十あり 八十島の 島の崎々 あり立てる 花橘を ほつ枝に もち引き懸け 中つ枝に 斑鳩懸け 下枝に 比米を懸け 汝が母を 取らくを知らに 汝が父を 取らくを知らに いそばひ居るよ 斑鳩と比米と

[仮名]

あふみのうみ とまりやそあり やそしまの しまのさきざき ありたてる はなたちばなを ほつえに もちひきかけ なかつえに いかるがかけ しづえに ひめをかけ ながははを とらくをしらに ながちちを とらくをしらに いそばひをるよ いかるがとひめと

[注解]

[元][天][細] / 此→比 [元][天][細]

[検索用キーワード]

琵琶湖 動物 童謡 風喩 風俗 民謡

3240

[題詞]

[原文]

王 命恐 雖見不飽 楢山越而 真木積 泉河乃 速瀬 <竿>刺渡 千速振 氏渡乃 多企都瀬乎 見乍渡而 近江道乃 相坂山丹 手向為 吾越徃者 樂浪乃 志我能韓埼 幸有者 又反見 道前 八十阿毎 嗟乍 吾過徃者 弥遠丹 里離来奴 弥高二 山<文>越来奴 劔刀 鞘従拔出而 伊香胡山 如何吾将為 徃邊不知而

[訓読]

大君の 命畏み 見れど飽かぬ 奈良山越えて 真木積む 泉の川の 早き瀬を 棹さし渡り ちはやぶる 宇治の渡りの たきつ瀬を 見つつ渡りて 近江道の 逢坂山に 手向けして 我が越え行けば 楽浪の 志賀の唐崎 幸くあらば またかへり見む 道の隈 八十隈ごとに 嘆きつつ 我が過ぎ行けば いや遠に 里離り来ぬ いや高に 山も越え来ぬ 剣太刀 鞘ゆ抜き出でて 伊香胡山 いかにか我がせむ ゆくへ知らずて

[仮名]

おほきみの みことかしこみ みれどあかぬ ならやまこえて まきつむ いづみのかはの はやきせを さをさしわたり ちはやぶる うぢのわたりの たきつせを みつつわたりて あふみぢの あふさかやまに たむけして わがこえゆけば ささなみの しがのからさき さきくあらば またかへりみむ みちのくま やそくまごとに なげきつつ わがすぎゆけば いやとほに さとさかりきぬ いやたかに やまもこえきぬ つるぎたち さやゆぬきいでて いかごやま いかにかわがせむ ゆくへしらずて

[注解]

[元][天][紀] / 父→文 [西(訂正)][元][天][細]

[検索用キーワード]

道行き 奈良 京都 滋賀 序詞 羈旅 旅愁

3241

[題詞]

反歌

[原文]

[原文]天地乎 <歎>乞祷 幸有者 又<反>見 思我能韓埼

[訓読]

天地を嘆き祈ひ祷み幸くあらばまたかへり見む志賀の唐崎

[仮名]

あめつちを なげきこひのみ さきくあらば またかへりみむ しがのからさき

[注解]

[万葉考] / <>→反 [西(右書)][元][天][類] / 者 [西(朱書消去)]

[検索用キーワード]

羈旅 手向け 穂積老

3242

[題詞]

[原文]

百岐年 三野之國之 高北之 八十一隣之宮尓 日向尓 行靡闕矣 有登聞而 吾通<道>之 奥十山 <三>野之山 <靡>得 人雖跡 如此依等 人雖衝 無意山之 奥礒山 三野之山

[訓読]

ももきね 美濃の国の 高北の くくりの宮に 日向ひに 行靡闕矣 ありと聞きて 我が行く道の 奥十山 美濃の山 靡けと 人は踏めども かく寄れと 人は突けども 心なき山の 奥十山 美濃の山

[仮名]

ももきね みののくにの たかきたの くくりのみやに ひむかひに ******* ありとききて わがゆくみちの おきそやま みののやま なびけと ひとはふめども かくよれと ひとはつけども こころなきやまの おきそやま みののやま

[注解]

?機・[元][天][紀] / <> →三 [西(右書)][元][天][紀] / 靡 [西(上書訂正)][元][天][紀]

[検索用キーワード]

岐阜 羈旅 旅愁 難訓 景行天皇

3243

[題詞]

[原文]

處女等之 <麻>笥垂有 續麻成 長門之浦丹 朝奈祇尓 満来塩之 夕奈祇尓 依来波乃 <彼>塩乃 伊夜益舛二 彼浪乃 伊夜敷布二 吾妹子尓 戀乍来者 阿胡乃海之 荒礒之於丹 濱菜採 海部處女等 纓有 領巾文光蟹 手二巻流 玉毛湯良羅尓 白栲乃 袖振所見津 相思羅霜

[訓読]

娘子らが 麻笥に垂れたる 続麻なす 長門の浦に 朝なぎに 満ち来る潮の 夕なぎに 寄せ来る波の その潮の いやますますに その波の いやしくしくに 我妹子に 恋ひつつ来れば 阿胡の海の 荒礒の上に 浜菜摘む 海人娘子らが うながせる 領布も照るがに 手に巻ける 玉もゆららに 白栲の 袖振る見えつ 相思ふらしも

[仮名]

をとめらが をけにたれたる うみをなす ながとのうらに あさなぎに みちくるしほの ゆふなぎに よせくるなみの そのしほの いやますますに そのなみの いやしくしくに わぎもこに こひつつくれば あごのうみの ありそのうへに はまなつむ あまをとめらが うなげる ひれもてるがに てにまける たまもゆららに しろたへの そでふるみえつ あひおもふらしも

[注解]

[元][天][類] / 波→彼 [類] / 舛 [元][天][類](塙) 升

[検索用キーワード]

広島 山口 倉橋島 桂浜 望郷 土地讃美 恋情 羈旅

3244

[題詞]

反歌

[原文]

阿胡乃海之 荒礒之上之 少浪 吾戀者 息時毛無

[訓読]

阿胡の海の荒礒の上のさざれ波我が恋ふらくはやむ時もなし

[仮名]

あごのうみの ありそのうへの さざれなみ あがこふらくは やむときもなし

[検索用キーワード]

呉市 広島 望郷 羈旅 恋情

3245

[題詞]

[原文]

天橋<文> 長雲鴨 高山<文> 高雲鴨 月夜見乃 持有越水 伊取来而 公奉而 越得之<旱>物

[訓読]

天橋も 長くもがも 高山も 高くもがも 月夜見の 持てるをち水 い取り来て 君に奉りて をち得てしかも

[仮名]

あまはしも ながくもがも たかやまも たかくもがも つくよみの もてるをちみづ いとりきて きみにまつりて をちえてしかも

[注解]

[西(訂正)][元][天][紀] / 父→文 [西(訂正)][元][天][紀] / 早→旱 [元]

[検索用キーワード]

3246

[題詞]

反歌

[原文]

天有哉 月日如 吾思有 君之日異 老落惜文

[訓読]

天なるや月日のごとく我が思へる君が日に異に老ゆらく惜しも

[仮名]

あめなるや つきひのごとく あがおもへる きみがひにけに おゆらくをしも

[注解]

濕(塙)(楓) 公

[検索用キーワード]

3247

[題詞]

[原文]

沼名河之 底奈流玉 求而 得之玉可毛 拾而 得之玉可毛 安多良思吉 君之 老落惜毛

[訓読]

沼名川の 底なる玉 求めて 得し玉かも 拾ひて 得し玉かも あたらしき 君が 老ゆらく惜しも

[仮名]

ぬながはの そこなるたま もとめて えしたまかも ひりひて えしたまかも あたらしき きみが おゆらくをしも

[検索用キーワード]

姫川 序詞 寿歌 老

~ 相 聞 ~

3248

[題詞]

相聞

[原文]

式嶋之 山跡之土丹 人多 満而雖有 藤浪乃 思纒 若草乃 思就西 君<目>二 戀八将明 長此夜乎

[訓読]

磯城島の 大和の国に 人さはに 満ちてあれども 藤波の 思ひまつはり 若草の 思ひつきにし 君が目に 恋ひや明かさむ 長きこの夜を

[仮名]

しきしまの やまとのくにに ひとさはに みちてあれども ふぢなみの おもひまつはり わかくさの おもひつきにし きみがめに こひやあかさむ ながきこのよを

[注解]

[元][類]

[検索用キーワード]

日本 嘆息 恋情

3249

[題詞]

反歌

[原文]

式嶋乃 山跡乃土丹 人二 有年念者 難可将嗟

[訓読]

磯城島の大和の国に人ふたりありとし思はば何か嘆かむ

[仮名]

しきしまの やまとのくにに ひとふたり ありとしおもはば なにかなげかむ

[検索用キーワード]

女歌 嘆息 恋情

3250

[題詞]

[原文]

蜻嶋 倭之國者 神柄跡 言擧不為國 雖然 吾者事上為 天地之 神<文>甚 吾念 心不知哉 徃影乃 月<文>經徃者 玉限 日<文>累 念戸鴨 胸不安 戀烈鴨 心痛 末逐尓 君丹不會者 吾命乃 生極 戀乍<文> 吾者将度 犬馬鏡 正目君乎 相見天者社 吾戀八鬼目

[訓読]

蜻蛉島 大和の国は 神からと 言挙げせぬ国 しかれども 我れは言挙げす 天地の 神もはなはだ 我が思ふ 心知らずや 行く影の 月も経ゆけば 玉かぎる 日も重なりて 思へかも 胸の苦しき 恋ふれかも 心の痛き 末つひに 君に逢はずは 我が命の 生けらむ極み 恋ひつつも 我れは渡らむ まそ鏡 直目に君を 相見てばこそ 我が恋やまめ

[仮名]

あきづしま やまとのくには かむからと ことあげせぬくに しかれども われはことあげす あめつちの かみもはなはだ わがおもふ こころしらずや ゆくかげの つきもへゆけば たまかぎる ひもかさなりて おもへかも むねのくるしき こふれかも こころのいたき すゑつひに きみにあはずは わがいのちの いけらむきはみ こひつつも われはわたらむ まそかがみ ただめにきみを あひみてばこそ あがこひやまめ

[注解]

[元][天][紀] / 父→文 [西(訂正)]

[検索用キーワード]

女歌 恋情 送別

3251

[題詞]

反歌

[原文]

大舟能 思憑 君故尓 盡心者 惜雲梨

[訓読]

大船の思ひ頼める君ゆゑに尽す心は惜しけくもなし

[仮名]

おほぶねの おもひたのめる きみゆゑに つくすこころは をしけくもなし

[検索用キーワード]

枕詞 送別

3252

[題詞]

[原文]

久堅之 王都乎置而 草枕 羈徃君乎 何時可将待

[訓読]

ひさかたの都を置きて草枕旅行く君をいつとか待たむ

[仮名]

ひさかたの みやこをおきて くさまくら たびゆくきみを いつとかまたむ

[検索用キーワード]

女歌 恋情

3253

[題詞]

柿本朝臣人麻呂歌集歌曰

[原文]

葦原 水穂國者 神在随 事擧不為國 雖然 辞擧叙吾為 言幸 真福座跡 恙無 福座者 荒礒浪 有毛見登 百重波 千重浪尓敷 言上為吾 <[言上為吾]>

[訓読]

葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙げせぬ国 しかれども 言挙げぞ我がする 言幸く ま幸くませと 障みなく 幸くいまさば 荒礒波 ありても見むと 百重波 千重波しきに 言挙げす我れは <[言挙げす我れは]>

[仮名]

あしはらの みづほのくには かむながら ことあげせぬくに しかれども ことあげぞわがする ことさきく まさきくませと つつみなく さきくいまさば ありそなみ ありてもみむと ももへなみ ちへなみしきに ことあげすわれは [ことあげすわれは]

[注解]

[言上為吾] [元][天][類](塙)(楓)

[検索用キーワード]

人麻呂歌集 非略体 枕詞 送別 遣唐使

3254

[題詞]

反歌

[原文]

志貴嶋 倭國者 事霊之 所佐國叙 真福在与具

[訓読]

磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸くありこそ

[仮名]

しきしまの やまとのくには ことだまの たすくるくにぞ まさきくありこそ

[注解]

三→五 [西(訂正)][元][天]

[検索用キーワード]

С阻椰曜穗げ僚・非略体 送別 遣唐使

3255

[題詞]

[原文]

従古 言續来口 戀為者 不安物登 玉緒之 継而者雖云 處女等之 心乎胡粉 其将知 因之無者 夏麻引 命<方>貯 借薦之 心文小竹荷 人不知 本名曽戀流 氣之緒丹四天

[訓読]

古ゆ 言ひ継ぎけらく 恋すれば 苦しきものと 玉の緒の 継ぎては言へど 娘子らが 心を知らに そを知らむ よしのなければ 夏麻引く 命かたまけ 刈り薦の 心もしのに 人知れず もとなぞ恋ふる 息の緒にして

[仮名]

いにしへゆ いひつぎけらく こひすれば くるしきものと たまのをの つぎてはいへど をとめらが こころをしらに そをしらむ よしのなければ なつそびく いのちかたまけ かりこもの こころもしのに ひとしれず もとなぞこふる いきのをにして

[注解]

[元][天]

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3256

[題詞]

反歌

[原文]

數々丹 不思人z 雖有 ま<文>吾者 忘枝沼鴨

[訓読]

しくしくに思はず人はあるらめどしましくも我は忘らえぬかも

[仮名]

しくしくに おもはずひとは あるらめど しましくもわは わすらえぬかも

[注解]

[元][天][紀]

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3257

[題詞]

或本以此歌一首為之

[原文]

紀伊國之 濱尓縁云 鰒珠 拾尓登謂而 徃之君 何時到来

[訓読]

紀の国の 浜に寄るとふ あわび玉 拾ひにと言ひて 行きし君 いつ来まさむ

[仮名]

きのくにの はまによるとふ あはびたま ひりひにといひて ゆきしきみ いつきまさむ

[注解]

[西(朱書訂正)][元][天]

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肝異伝

3257

[題詞]

[原文]

直不来 自此巨勢道柄 石椅跡 名積序吾来 戀天窮見

[訓読]

直に来ずこゆ巨勢道から岩せ踏みなづみぞ我が来し恋ひてすべなみ

[仮名]

ただにこず こゆこせぢから いはせふみ なづみぞわがこし こひてすべなみ

[注解]

但 [元][天][古] / 累 [西(上書訂正)][元][天][古]

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恋情 異伝

3258

[題詞]

[原文]

荒玉之 年者来去而 玉梓之 使之不来者 霞立 長春日乎 天地丹 思足椅 帶乳根笶 母之養蚕之 眉隠 氣衝渡 吾戀 心中<少> 人丹言 物西不有者 松根 松事遠 天傳 日之闇者 白木綿之 吾衣袖裳 通手沾沼

[訓読]

あらたまの 年は来ゆきて 玉梓の 使の来ねば 霞立つ 長き春日を 天地に 思ひ足らはし たらちねの 母が飼ふ蚕の 繭隠り 息づきわたり 我が恋ふる 心のうちを 人に言ふ ものにしあらねば 松が根の 待つこと遠み 天伝ふ 日の暮れぬれば 白栲の 我が衣手も 通りて濡れぬ

[仮名]

あらたまの としはきゆきて たまづさの つかひのこねば かすみたつ ながきはるひを あめつちに おもひたらはし たらちねの ははがかふこの まよごもり いきづきわたり あがこふる こころのうちを ひとにいふ ものにしあらねば まつがねの まつこととほみ あまつたふ ひのくれぬれば しろたへの わがころもでも とほりてぬれぬ

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恋情 片思い

3259

[題詞]

反歌

[原文]

如是耳師 相不思有者 天雲之 外衣君者 可有々来

[訓読]

かくのみし相思はずあらば天雲の外にぞ君はあるべくありける

[仮名]

かくのみし あひおもはずあらば あまくもの よそにぞきみは あるべくありける

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女歌

3260

[題詞]

[原文]

小<治>田之 年魚道之水乎 問無曽 人者は云 時自久曽 人者飲云 は人之 無間之如 飲人之 不時之如 吾妹子尓 吾戀良久波 已時毛無

[訓読]

小治田の 年魚道の水を 間なくぞ 人は汲むといふ 時じくぞ 人は飲むといふ 汲む人の 間なきがごと 飲む人の 時じきがごと 我妹子に 我が恋ふらくは やむ時もなし

[仮名]

をはりだの あゆぢのみづを まなくぞ ひとはくむといふ ときじくぞ ひとはのむといふ くむひとの まなきがごと のむひとの ときじきがごと わぎもこに あがこふらくは やむときもなし

[注解]

[元][天][類]

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地名 明日香 恋情

3261

[題詞]

(反歌)今案 此反歌謂之於君不相者於理不合也

[原文]

妹不相

[訓読]

妹に会わず

[仮名]

いもにあはず

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編纂者

3261

[題詞]

[原文]

思遣 為便乃田付毛 今者無 於君不相而 <年>之歴去者

[訓読]

思ひ遣るすべのたづきも今はなし君に逢はずて年の経ぬれば

[仮名]

おもひやる すべのたづきも いまはなし きみにあはずて としのへぬれば

[注解]

[西(訂正)][元][天][紀]

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3262

[題詞]

或本反歌曰

[原文]

ゐ垣 久時従 戀為者 吾帶緩 朝夕毎

[訓読]

瑞垣の久しき時ゆ恋すれば我が帯緩ふ朝宵ごとに

[仮名]

みづかきの ひさしきときゆ こひすれば わがおびゆるふ あさよひごとに

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恋情 遊仙窟 中国文学

3263

[題詞]

[原文]

己母理久乃 泊瀬之河之 上瀬尓 伊杭乎打 下湍尓 真杭乎挌 伊杭尓波 鏡乎懸 真杭尓波 真玉乎懸 真珠奈須 我念妹毛 鏡成 我念妹毛 有跡謂者社 國尓毛 家尓毛由可米 誰故可将行

[訓読]

こもりくの 泊瀬の川の 上つ瀬に 斎杭を打ち 下つ瀬に 真杭を打ち 斎杭には 鏡を懸け 真杭には 真玉を懸け 真玉なす 我が思ふ妹も 鏡なす 我が思ふ妹も ありといはばこそ 国にも 家にも行かめ 誰がゆゑか行かむ

[仮名]

こもりくの はつせのかはの かみつせに いくひをうち しもつせに まくひをうち いくひには かがみをかけ まくひには またまをかけ またまなす あがおもふいもも かがみなす あがおもふいもも ありといはばこそ くににも いへにもゆかめ たがゆゑかゆかむ

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奈良 歌語り 悲別 恋情 木梨軽太子 伝承

3264

[題詞]

反歌

[原文]

年渡 麻弖尓毛人者 有云乎 何時之間曽母 吾戀尓来

[訓読]

年渡るまでにも人はありといふをいつの間にぞも我が恋ひにける

[仮名]

としわたる までにもひとは ありといふを いつのまにぞも あがこひにける

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3265

[題詞]

或書反歌曰

[原文]

世間乎 倦迹思而 家出為 吾哉難二加 還而将成

[訓読]

世の中を憂しと思ひて家出せし我れや何にか還りてならむ

[仮名]

よのなかを うしとおもひて いへでせし われやなににか かへりてならむ

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3266

[題詞]

[原文]

春去者 花咲乎呼里 秋付者 丹之穂尓黄色 味酒乎 神名火山之 帶丹為留 明日香之河乃 速瀬尓 生玉藻之 打靡 情者因而 朝露之 消者可消 戀久毛 知久毛相 隠都麻鴨

[訓読]

春されば 花咲ををり 秋づけば 丹のほにもみつ 味酒を 神奈備山の 帯にせる 明日香の川の 早き瀬に 生ふる玉藻の うち靡き 心は寄りて 朝露の 消なば消ぬべく 恋ひしくも しるくも逢へる 隠り妻かも

[仮名]

はるされば はなさきををり あきづけば にのほにもみつ うまさけを かむなびやまの おびにせる あすかのかはの はやきせに おふるたまもの うちなびき こころはよりて あさつゆの けなばけぬべく こひしくも しるくもあへる こもりづまかも

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明日香 奈良 枕詞 序詞

3267

[題詞]

反歌

[原文]

明日香河 瀬湍之珠藻之 打靡 情者妹尓 <因>来鴨

[訓読]

明日香川瀬々の玉藻のうち靡き心は妹に寄りにけるかも

[仮名]

あすかがは せぜのたまもの うちなびき こころはいもに よりにけるかも

[注解]

[天][類][紀]

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睥奈良 恋情 序詞

3268

[題詞]

[原文]

三諸之 神奈備山従 登能陰 雨者落来奴 雨霧相 風左倍吹奴 大口乃 真神之原従 思管 還尓之人 家尓到伎也

[訓読]

みもろの 神奈備山ゆ との曇り 雨は降り来ぬ 天霧らひ 風さへ吹きぬ 大口の 真神の原ゆ 思ひつつ 帰りにし人 家に至りきや

[仮名]

みもろの かむなびやまゆ とのぐもり あめはふりきぬ あまぎらひ かぜさへふきぬ おほくちの まかみのはらゆ おもひつつ かへりにしひと いへにいたりきや

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明日香 奈良 女歌

3269

[題詞]

反歌

[原文]

還尓之 人乎念等 野干玉之 彼夜者吾毛 宿毛寐金<手>寸

[訓読]

帰りにし人を思ふとぬばたまのその夜は我れも寐も寝かねてき

[仮名]

かへりにし ひとをおもふと ぬばたまの そのよはわれも いもねかねてき

[注解]

?機・[元][天][紀]

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女歌

3270

[題詞]

[原文]

刺将焼 小屋之四忌屋尓 掻将棄 破薦乎敷而 所<挌>将折 鬼之四忌手乎 指易而 将宿君故 赤根刺 晝者終尓 野干玉之 夜者須柄尓 此床乃 比師跡鳴左右 嘆鶴鴨

[訓読]

さし焼かむ 小屋の醜屋に かき棄てむ 破れ薦を敷きて 打ち折らむ 醜の醜手を さし交へて 寝らむ君ゆゑ あかねさす 昼はしみらに ぬばたまの 夜はすがらに この床の ひしと鳴るまで 嘆きつるかも

[仮名]

さしやかむ こやのしこやに かきうてむ やれごもをしきて うちをらむ しこのしこてを さしかへて ぬらむきみゆゑ あかねさす ひるはしみらに ぬばたまの よるはすがらに このとこの ひしとなるまで なげきつるかも

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恋情 戯笑 宴席

3271

[題詞]

反歌

[原文]

我情 焼毛吾有 愛八師 君尓戀毛 我之心柄

[訓読]

我が心焼くも我れなりはしきやし君に恋ふるも我が心から

[仮名]

わがこころ やくもわれなり はしきやし きみにこふるも わがこころから

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3272

[題詞]

[原文]

打延而 思之小野者 不遠 其里人之 標結等 聞手師日従 立良久乃 田付毛不知 居久乃 於久鴨不知 親<之> 己<之>家尚乎 草枕 客宿之如久 思空 不安物乎 嗟空 過之不得物乎 天雲之 行莫々 蘆垣乃 思乱而 乱麻乃 麻笥乎無登 吾戀流 千重乃一重母 人不令知 本名也戀牟 氣之緒尓為而

[訓読]

うちはへて 思ひし小野は 遠からぬ その里人の 標結ふと 聞きてし日より 立てらくの たづきも知らず 居らくの 奥処も知らず にきびにし 我が家すらを 草枕 旅寝のごとく 思ふそら 苦しきものを 嘆くそら 過ぐしえぬものを 天雲の ゆくらゆくらに 葦垣の 思ひ乱れて 乱れ麻の をけをなみと 我が恋ふる 千重の一重も 人知れず もとなや恋ひむ 息の緒にして

[仮名]

うちはへて おもひしをのは とほからぬ そのさとびとの しめゆふと ききてしひより たてらくの たづきもしらず をらくの おくかもしらず にきびにし わがいへすらを くさまくら たびねのごとく おもふそら くるしきものを なげくそら すぐしえぬものを あまくもの ゆくらゆくらに あしかきの おもひみだれて みだれをの をけをなみと あがこふる ちへのひとへも ひとしれず もとなやこひむ いきのをにして

[注解]

[類] / <>→之 [元][天] / 麻笥 [元][天][類] 司

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枕詞

3273

[題詞]

反歌

[原文]

二無 戀乎思為者 常帶乎 三重可結 我身者成

[訓読]

二つなき恋をしすれば常の帯を三重結ぶべく我が身はなりぬ

[仮名]

ふたつなき こひをしすれば つねのおびを みへむすぶべく あがみはなりぬ

[検索用キーワード]

遊仙窟

3274

[題詞]

[原文]

為須部乃 田付S不知 石根乃 興凝敷道乎 石床笶 根延門S 朝庭 出居而嘆 夕庭 入居而思 白桍乃 吾衣袖S 折反 獨之寐者 野干玉 黒髪布而 人寐 味眠不睡而 大舟乃 徃良行羅二 思乍 吾睡夜等呼 <讀文>将敢鴨

[訓読]

為むすべの たづきを知らに 岩が根の こごしき道を 岩床の 根延へる門を 朝には 出で居て嘆き 夕には 入り居て偲ひ 白栲の 我が衣手を 折り返し ひとりし寝れば ぬばたまの 黒髪敷きて 人の寝る 味寐は寝ずて 大船の ゆくらゆくらに 思ひつつ 我が寝る夜らを 数みもあへむかも

[仮名]

せむすべの たづきをしらに いはがねの こごしきみちを いはとこの ねばへるかどを あしたには いでゐてなげき ゆふへには いりゐてしのひ しろたへの わがころもでを をりかへし ひとりしぬれば ぬばたまの くろかみしきて ひとのぬる うまいはねずて おほぶねの ゆくらゆくらに おもひつつ わがぬるよらを よみもあへむかも

[注解]

文 [元][類]

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孤独 枕詞

3275

[題詞]

反歌

[原文]

一眠 夜t跡 雖思 戀茂二 情利文梨

[訓読]

ひとり寝る夜を数へむと思へども恋の繁きに心どもなし

[仮名]

ひとりぬる よをかぞへむと おもへども こひのしげきに こころどもなし

[検索用キーワード]

孤独

3276

[題詞]

[原文]

百不足 山田道乎 浪雲乃 愛妻跡 不語 別之来者 速川之 徃<文>不知 衣袂笶 反裳不知 馬自物 立而爪衝 為須部乃 田付乎白粉 物部乃 八十乃心S 天地二 念足橋 玉相者 君来益八跡 吾嗟 八尺之嗟 玉<桙>乃 道来人乃 立留 何常問者 答遣 田付乎不知 散釣相 君名日者 色出 人<可>知 足日木能 山従出 月待跡 人者云而 君待吾乎

[訓読]

百足らず 山田の道を 波雲の 愛し妻と 語らはず 別れし来れば 早川の 行きも知らず 衣手の 帰りも知らず 馬じもの 立ちてつまづき 為むすべの たづきを知らに もののふの 八十の心を 天地に 思ひ足らはし 魂合はば 君来ますやと 我が嘆く 八尺の嘆き 玉桙の 道来る人の 立ち留まり いかにと問はば 答へ遣る たづきを知らに さ丹つらふ 君が名言はば 色に出でて 人知りぬべみ あしひきの 山より出づる 月待つと 人には言ひて 君待つ我れを

[仮名]

ももたらず やまたのみちを なみくもの うつくしづまと かたらはず わかれしくれば はやかはの ゆきもしらず ころもでの かへりもしらず うまじもの たちてつまづき せむすべの たづきをしらに もののふの やそのこころを あめつちに おもひたらはし たまあはば きみきますやと わがなげく やさかのなげき たまほこの みちくるひとの たちとまり いかにととはば こたへやる たづきをしらに さにつらふ きみがないはば いろにいでて ひとしりぬべみ あしひきの やまよりいづる つきまつと ひとにはいひて きみまつわれを

[注解]

[西(訂正)][元][天][類] / 杵→桙 [天][類][温] / 不→可 [類][紀][温]

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地名 桜井 奈良 女歌 歌劇

3277

[題詞]

反歌

[原文]

眠不睡 吾思君者 何處邊 今<夜>誰与可 雖待不来

[訓読]

寐も寝ずに我が思ふ君はいづくへに今夜誰れとか待てど来まさぬ

[仮名]

いもねずに あがおもふきみは いづくへに こよひたれとか まてどきまさぬ

[検索用キーワード]

3278

[題詞]

[原文]

赤駒 厩立 黒駒 厩立而 彼乎飼 吾徃如 思妻 心乗而 高山 峯之手折丹 射目立 十六待如 床敷而 吾待君 犬莫吠行<年>

[訓読]

赤駒を 馬屋に立て 黒駒を 馬屋に立てて そを飼ひ 我が行くがごと 思ひ妻 心に乗りて 高山の 嶺のたをりに 射目立てて 鹿猪待つがごと 床敷きて 我が待つ君を 犬な吠えそね

[仮名]

あかごまを うまやにたて くろこまを うまやにたてて そをかひ わがゆくがごと おもひづま こころにのりて たかやまの みねのたをりに いめたてて ししまつがごと とこしきて わがまつきみを いぬなほえそね

[注解]

濕(塙)(楓) 公 / 羊→年 [元][天][類]

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歌劇 女歌

3279

[題詞]

反歌

[原文]

蘆垣之 末掻別而 君越跡 人丹勿告 事者棚知

[訓読]

葦垣の末かき分けて君越ゆと人にな告げそ事はたな知れ

[仮名]

あしかきの すゑかきわけて きみこゆと ひとになつげそ ことはたなしれ

[検索用キーワード]

人目

3280

[題詞]

[原文]

<妾>背兒者 雖待来不益 天原 振左氣見者 黒玉之 夜毛深去来 左夜深而 荒風乃吹者 立<待留> 吾袖尓 零雪者 凍渡奴 今更 公来座哉 左奈葛 後毛相得 名草武類 心乎持而 <二>袖持 床打拂 卯管庭 君尓波不相 夢谷 相跡所見社 天之足夜<乎>

[訓読]

我が背子は 待てど来まさず 天の原 振り放け見れば ぬばたまの 夜も更けにけり さ夜更けて あらしの吹けば 立ち待てる 我が衣手に 降る雪は 凍りわたりぬ 今さらに 君来まさめや さな葛 後も逢はむと 慰むる 心を持ちて ま袖もち 床うち掃ひ うつつには 君には逢はず 夢にだに 逢ふと見えこそ 天の足り夜を

[仮名]

わがせこは まてどきまさず あまのはら ふりさけみれば ぬばたまの よもふけにけり さよふけて あらしのふけば たちまてる わがころもでに ふるゆきは こほりわたりぬ いまさらに きみきまさめや さなかづら のちもあはむと なぐさむる こころをもちて まそでもち とこうちはらひ うつつには きみにはあはず いめにだに あふとみえこそ あめのたりよを

[注解]

[元][天][紀] / 留待→待留 [新校] / 三 →二 (塙) / 于→乎 [元][天][類]

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恋情

3281

[題詞]

或本歌曰

[原文]

吾背子者 待跡不来 鴈音<文> 動而寒 烏玉乃 宵文深去来 左夜深跡 阿下乃吹者 立待尓 吾衣袖尓 置霜<文> 氷丹左叡渡 落雪母 凍渡奴 今更 君来目八 左奈葛 後<文>将會常 大舟乃 思憑迹 現庭 君者不相 夢谷 相所見欲 天之足夜尓

[訓読]

我が背子は 待てど来まさず 雁が音も 響みて寒し ぬばたまの 夜も更けにけり さ夜更くと あらしの更けば 立ち待つに 我が衣手に 置く霜も 氷にさえわたり 降る雪も 凍りわたりぬ 今さらに 君来まさめや さな葛 後も逢はむと 大船の 思ひ頼めど うつつには 君には逢はず 夢にだに 逢ふと見えこそ 天の足り夜に

[仮名]

わがせこは まてどきまさず かりがねも とよみてさむし ぬばたまの よもふけにけり さよふくと あらしのふけば たちまつに わがころもでに おくしもも ひにさえわたり ふるゆきも こほりわたりぬ いまさらに きみきまさめや さなかづら のちもあはむと おほぶねの おもひたのめど うつつには きみにはあはず いめにだに あふとみえこそ あめのたりよに

[注解]

[天][類][紀] / 父→文 [西(訂正)][天][紀][温] / 父→文 [西(訂正)][元][天][類]

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恋情 女歌

3282

[題詞]

反歌

[原文]

衣袖丹 山下吹而 寒夜乎 君不来者 獨鴨寐

[訓読]

衣手にあらしの吹きて寒き夜を君来まさずはひとりかも寝む

[仮名]

ころもでに あらしのふきて さむきよを きみきまさずは ひとりかもねむ

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孤独

3283

[題詞]

[原文]

今更 戀友君<二> 相目八毛 眠夜乎不落 夢所見欲

[訓読]

今さらに恋ふとも君に逢はめやも寝る夜をおちず夢に見えこそ

[仮名]

いまさらに こふともきみに あはめやも ぬるよをおちず いめにみえこそ

[注解]

[元][天]

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3284

[題詞]

[原文]

菅根之 根毛一伏三向凝呂尓 吾念有 妹尓緑而者 言之禁毛 無在乞常 齊戸乎 石相穿居 竹珠乎 無間貫垂 天地之 神祇乎曽吾祈 甚毛為便無見

[訓読]

菅の根の ねもころごろに 我が思へる 妹によりては 言の忌みも なくありこそと 斎瓮を 斎ひ掘り据ゑ 竹玉を 間なく貫き垂れ 天地の 神をぞ我が祷む いたもすべなみ

[仮名]

すがのねの ねもころごろに あがおもへる いもによりては ことのいみも なくありこそと いはひへを いはひほりすゑ たかたまを まなくぬきたれ あめつちの かみをぞわがのむ いたもすべなみ いもによりては きみにより きみがまにまに

[注解]

?機・[元][天][類]

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うわさ 恋情 掛け合い歌 神祭り

3285

[題詞]

反歌

[原文]

足千根乃 母尓毛不謂 L有之 心者縦 <公>之随意

[訓読]

たらちねの母にも言はずつつめりし心はよしゑ君がまにまに

[仮名]

たらちねの ははにもいはず つつめりし こころはよしゑ きみがまにまに

[注解]

[元][天][紀]

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掛け合い歌 恋情

3286

[題詞]

或本歌曰

[原文]

玉手<次> 不懸時無 吾念有 君尓依者 倭<文>幣乎 手取持而 竹珠S 之自二貫垂 天地之 神S曽吾乞 痛毛須部奈見

[訓読]

玉たすき 懸けぬ時なく 我が思へる 君によりては しつ幣を 手に取り持ちて 竹玉を 繁に貫き垂れ 天地の 神をぞ我が祷む いたもすべなみ

[仮名]

たまたすき かけぬときなく あがおもへる きみによりては しつぬさを てにとりもちて たかたまを しじにぬきたれ あめつちの かみをぞわがのむ いたもすべなみ

[注解]

[元][天][温] / 父→文 [元]

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神祭り

3287

[題詞]

反歌

[原文]

乾坤乃 神乎祷而 吾戀 公以必 不相在目八

[訓読]

天地の神を祈りて我が恋ふる君いかならず逢はずあらめやも

[仮名]

あめつちの かみをいのりて あがこふる きみいかならず あはずあらめやも

[検索用キーワード]

神祭り

3288

[題詞]

或本歌曰

[原文]

大船之 思憑而 木<妨>己 弥遠長 我念有 君尓依而者 言之故毛 無有欲得 木綿手次 肩荷取懸 忌戸乎 齊穿居 玄黄之 神祇二衣吾祈 甚毛為便無見

[訓読]

大船の 思ひ頼みて さな葛 いや遠長く 我が思へる 君によりては 言の故も なくありこそと 木綿たすき 肩に取り懸け 斎瓮を 斎ひ掘り据ゑ 天地の 神にぞ我が祷む いたもすべなみ

[仮名]

おほぶねの おもひたのみて さなかづら いやとほながく あがおもへる きみによりては ことのゆゑも なくありこそと ゆふたすき かたにとりかけ いはひへを いはひほりすゑ あめつちの かみにぞわがのむ いたもすべなみ

[注解]

[元][類]

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神祭り 女歌

3289

[題詞]

[原文]

御佩乎 劔池之 蓮葉尓 渟有水之 徃方無 我為時尓 應相登 相有君乎 莫寐等 母寸巨勢友 吾情 清隅之池之 池底 吾者不<忘> 正相左右二

[訓読]

み佩かしを 剣の池の 蓮葉に 溜まれる水の ゆくへなみ 我がする時に 逢ふべしと 逢ひたる君を な寐ねそと 母聞こせども 我が心 清隅の池の 池の底 我れは忘れじ 直に逢ふまでに

[仮名]

みはかしを つるぎのいけの はちすばに たまれるみづの ゆくへなみ わがするときに あふべしと あひたるきみを ないねそと ははきこせども あがこころ きよすみのいけの いけのそこ われはわすれじ ただにあふまでに

[検索用キーワード]

奈良 橿原 女歌 序詞 恋情

3290

[題詞]

反歌

[原文]

古之 神乃時従 會計良思 今心<文> 常不所<忘>

[訓読]

いにしへの神の時より逢ひけらし今の心も常忘らえず

[仮名]

いにしへの かみのときより あひけらし いまのこころも つねわすらえず

[注解]

[西(訂正)][元][天][紀] / 念→忘 [代匠記精撰本]

[検索用キーワード]

3291

[題詞]

[原文]

三芳野之 真木立山尓 青生 山菅之根乃 慇懃 吾念君者 天皇之 遣之万々 [或本云 王 命恐] 夷離 國治尓登 [或本云 天踈 夷治尓等] 群鳥之 朝立行者 後有 我可将戀奈 客有者 君可将思 言牟為便 将為須便不知 [或書有 足日木 山之木末尓 句也] 延津田乃 歸之 [或本無歸之句也] 別之數 惜物可聞

[訓読]

み吉野の 真木立つ山に 青く生ふる 山菅の根の ねもころに 我が思ふ君は 大君の 任けのまにまに [或本云 大君の 命かしこみ] 鄙離る 国治めにと [或本云 天離る 鄙治めにと] 群鳥の 朝立ち去なば 後れたる 我れか恋ひむな 旅ならば 君か偲はむ 言はむすべ 為むすべ知らに [或書有 あしひきの 山の木末に 句也] 延ふ蔦の 行きの [或本無歸之句也] 別れのあまた 惜しきものかも

[仮名]

みよしのの まきたつやまに あをくおふる やますがのねの ねもころに あがおもふきみは おほきみの まけのまにまに [おほきみの みことかしこみ] ひなざかる くにをさめにと [あまざかる ひなをさめにと] むらとりの あさだちいなば おくれたる あれかこひむな たびならば きみかしのはむ いはむすべ せむすべしらに [あしひきの やまのこぬれに] はふつたの ゆきの わかれのあまた をしきものかも

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枕詞 赴任 恋情 大君 地名 奈良 吉野

3292

[題詞]

反歌

[原文]

打蝉之 命乎長 有社等 留吾者 五十羽旱将待

[訓読]

うつせみの命を長くありこそと留まれる我れは斎ひて待たむ

[仮名]

うつせみの いのちをながく ありこそと とまれるわれは いはひてまたむ

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3293

[題詞]

[原文]

三吉野之 御金高尓 間無序 雨者落云 不時曽 雪者落云 其雨 無間如 彼雪 不時如 間不落 吾者曽戀 妹之正香尓

[訓読]

み吉野の 御金が岳に 間なくぞ 雨は降るといふ 時じくぞ 雪は降るといふ その雨の 間なきがごと その雪の 時じきがごと 間もおちず 我れはぞ恋ふる 妹が直香に

[仮名]

みよしのの みかねがたけに まなくぞ あめはふるといふ ときじくぞ ゆきはふるといふ そのあめの まなきがごと そのゆきの ときじきがごと まもおちず あれはぞこふる いもがただかに

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民謡 恋情 吉野 地名 奈良 伝承

3294

[題詞]

反歌

[原文]

三雪落 吉野之高二 居雲之 外丹見子尓 戀度可聞

[訓読]

み雪降る吉野の岳に居る雲の外に見し子に恋ひわたるかも

[仮名]

みゆきふる よしののたけに ゐるくもの よそにみしこに こひわたるかも

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奈良 序詞 恋情

3295

[題詞]

[原文]

打久津 三宅乃原従 常土 足迹貫 夏草乎 腰尓魚積 如何有哉 人子故曽 通簀<文>吾子 諾々名 母者不知 諾々名 父者不知 蜷腸 香黒髪丹 真木綿持 阿邪左結垂 日本之 黄<楊>乃小櫛乎 抑刺 <卜>細子 彼曽吾つ

[訓読]

うちひさつ 三宅の原ゆ 直土に 足踏み貫き 夏草を 腰になづみ いかなるや 人の子ゆゑぞ 通はすも我子 うべなうべな 母は知らじ うべなうべな 父は知らじ 蜷の腸 か黒き髪に 真木綿もち あざさ結ひ垂れ 大和の 黄楊の小櫛を 押へ刺す うらぐはし子 それぞ我が妻

[仮名]

うちひさつ みやけのはらゆ ひたつちに あしふみぬき なつくさを こしになづみ いかなるや ひとのこゆゑぞ かよはすもあこ うべなうべな はははしらじ うべなうべな ちちはしらじ みなのわた かぐろきかみに まゆふもち あざさゆひたれ やまとの つげのをぐしを おさへさす うらぐはしこ それぞわがつま

[注解]

當 / 父→文 [元][天][類] / 揚→楊 [天][類] / 々→卜 [新校]

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奈良 田原本 問答 親子 歌垣 民謡

3296

[題詞]

反歌

[原文]

父母尓 不令知子故 三宅道乃 夏野草乎 菜積来鴨

[訓読]

父母に知らせぬ子ゆゑ三宅道の夏野の草をなづみ来るかも

[仮名]

ちちははに しらせぬこゆゑ みやけぢの なつののくさを なづみけるかも

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地名 奈良 田原本 難渋 恋愛

3297

[題詞]

[原文]

玉田次 不懸時無 吾念 妹西不會波 赤根刺 日者之弥良尓 烏玉之 夜者酢辛二 眠不睡尓 妹戀丹 生流為便無

[訓読]

玉たすき 懸けぬ時なく 我が思ふ 妹にし逢はねば あかねさす 昼はしみらに ぬばたまの 夜はすがらに 寐も寝ずに 妹に恋ふるに 生けるすべなし

[仮名]

たまたすき かけぬときなく あがおもふ いもにしあはねば あかねさす ひるはしみらに ぬばたまの よるはすがらに いもねずに いもにこふるに いけるすべなし

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3298

[題詞]

反歌

[原文]

縦恵八師 二々火四吾妹 生友 各鑿社吾 戀度七目

[訓読]

よしゑやし死なむよ我妹生けりともかくのみこそ我が恋ひわたりなめ

[仮名]

よしゑやし しなむよわぎも いけりとも かくのみこそあが こひわたりなめ

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3299

[題詞]

或本歌頭句云

[原文]

己母理久乃 波都世乃加波乃 乎知可多尓 伊母良波多々志 己乃加多尓 和礼波多知弖

[訓読]

こもりくの 泊瀬の川の 彼方に 妹らは立たし この方に 我れは立ちて

[仮名]

こもりくの はつせのかはの をちかたに いもらはたたし このかたに われはたちて

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奈良 異伝

3299

[題詞]

[原文]

見渡尓 妹等者立志 是方尓 吾者立而 思虚 不安國 嘆虚 不安國 左丹と之 小舟毛鴨 玉纒之 小楫毛鴨 榜渡乍毛 相語妻遠

[訓読]

見わたしに 妹らは立たし この方に 我れは立ちて 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 安けなくに さ丹塗りの 小舟もがも 玉巻きの 小楫もがも 漕ぎ渡りつつも 語らふ妻を

[仮名]

みわたしに いもらはたたし このかたに われはたちて おもふそら やすけなくに なげくそら やすけなくに さにぬりの をぶねもがも たままきの をかぢもがも こぎわたりつつも かたらふつまを

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衒採恋情 七夕

3300

[題詞]

[原文]

忍照 難波乃埼尓 引登 赤曽朋舟 曽朋舟尓 綱取繋 引豆良比 有雙雖為 日豆良賓 有雙雖為 有雙不得叙 所言西我身

[訓読]

おしてる 難波の崎に 引き泝る 赤のそほ舟 そほ舟に 網取り懸け 引こづらひ ありなみすれど 言ひづらひ ありなみすれど ありなみえずぞ 言はえにし我が身

[仮名]

おしてる なにはのさきに ひきのぼる あかのそほぶね そほぶねに あみとりかけ ひこづらひ ありなみすれど いひづらひ ありなみすれど ありなみえずぞ いはえにしあがみ

[注解]

[元][天][類]

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大阪 うわさ 女歌 民謡

3301

[題詞]

[原文]

神風之 伊勢<乃>海之 朝奈伎尓 来依深海松 暮奈藝尓 来因俣海松 深海松乃 深目師吾乎 俣海松乃 復去反 都麻等不言登可聞 思保世流君

[訓読]

神風の 伊勢の海の 朝なぎに 来寄る深海松 夕なぎに 来寄る俣海松 深海松の 深めし我れを 俣海松の また行き帰り 妻と言はじとかも 思ほせる君

[仮名]

かむかぜの いせのうみの あさなぎに きよるふかみる ゆふなぎに きよるまたみる ふかみるの ふかめしわれを またみるの またゆきかへり つまといはじとかも おもほせるきみ

[注解]

[元][天][類]

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三重県 枕詞 女歌 民謡 植物 怨恨

3302

[題詞]

[原文]

紀伊國之 室之江邊尓 千<年>尓 障事無 万世尓 如是将<在>登 大舟之 思恃而 出立之 清瀲尓 朝名寸二 来依深海松 夕難岐尓 来依縄法 深海松之 深目思子等遠 縄法之 引者絶登夜 散度人之 行之屯尓 鳴兒成 行取左具利 梓弓 弓腹振起 志乃岐羽矣 二手<狭> 離兼 人斯悔 戀思者

[訓読]

紀の国の 牟婁の江の辺に 千年に 障ることなく 万代に かくしもあらむと 大船の 思ひ頼みて 出立の 清き渚に 朝なぎに 来寄る深海松 夕なぎに 来寄る縄海苔 深海松の 深めし子らを 縄海苔の 引けば絶ゆとや 里人の 行きの集ひに 泣く子なす 行き取り探り 梓弓 弓腹振り起し しのぎ羽を 二つ手挟み 放ちけむ 人し悔しも 恋ふらく思へば

[仮名]

きのくにの むろのえのへに ちとせに さはることなく よろづよに かくしもあらむと おほぶねの おもひたのみて いでたちの きよきなぎさに あさなぎに きよるふかみる ゆふなぎに きよるなはのり ふかみるの ふかめしこらを なはのりの ひけばたゆとや さとびとの ゆきのつどひに なくこなす ゆきとりさぐり あづさゆみ ゆばらふりおこし しのぎはを ふたつたばさみ はなちけむ ひとしくやしも こふらくおもへば

[注解]

[元][天][類] / 有→在 [元][天][類] / 狭→挟 [元][天][類]

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肝田辺 枕詞 植物 民謡 戯笑

3303

[題詞]

[原文]

里人之 吾丹告樂 <汝>戀 愛妻者 黄葉之 散乱有 神名火之 此山邊柄 [或本云 彼山邊] 烏玉之 黒馬尓乗而 河瀬乎 七湍渡而 裏觸而 妻者會登 人曽告鶴

[訓読]

里人の 我れに告ぐらく 汝が恋ふる うつくし夫は 黄葉の 散り乱ひたる 神なびの この山辺から [或本云 その山辺] ぬばたまの 黒馬に乗りて 川の瀬を 七瀬渡りて うらぶれて 夫は逢ひきと 人ぞ告げつる

[仮名]

さとびとの あれにつぐらく ながこふる うつくしづまは もみちばの ちりまがひたる かむなびの このやまへから [そのやまへ] ぬばたまの くろまにのりて かはのせを ななせわたりて うらぶれて つまはあひきと ひとぞつげつる

[注解]

?機・[元][天][類]

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恋情 枕詞

3304

[題詞]

反歌

[原文]

不聞而 黙然有益乎 何如文 <公>之正香乎 人之告鶴

[訓読]

聞かずして黙もあらましを何しかも君が直香を人の告げつる

[仮名]

きかずして もだもあらましを なにしかも きみがただかを ひとのつげつる

[注解]

[元][天][紀]

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挽歌

~ 問 答 ~

3305

[題詞]

問答

[原文]

物不念 道行去毛 青山乎 振放見者 茵花 香<未>通女 櫻花 盛未通女 汝乎曽母 吾丹依云 吾S毛曽 汝丹依云 荒山毛 人師依者 余所留跡序云 汝心勤

[訓読]

物思はず 道行く行くも 青山を 振り放け見れば つつじ花 にほえ娘子 桜花 栄え娘子 汝れをぞも 我れに寄すといふ 我れをもぞ 汝れに寄すといふ 荒山も 人し寄すれば 寄そるとぞいふ 汝が心ゆめ

[仮名]

ものもはず みちゆくゆくも あをやまを ふりさけみれば つつじばな にほえをとめ さくらばな さかえをとめ なれをぞも われによすといふ われをもぞ なれによすといふ あらやまも ひとしよすれば よそるとぞいふ ながこころゆめ

[注解]

[元][天][類]

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恋情

3306

[題詞]

反歌

[原文]

何為而 戀止物序 天地乃 神乎祷迹 吾八思益

[訓読]

いかにして恋やむものぞ天地の神を祈れど我れは思ひ増す

[仮名]

いかにして こひやむものぞ あめつちの かみをいのれど われはおもひます

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3307

[題詞]

[原文]

然有社 <年>乃八歳S 鑚髪乃 吾同子S過 橘 末枝乎過而 此河能 下<文>長 汝情待

[訓読]

しかれこそ 年の八年を 切り髪の よち子を過ぎ 橘の ほつ枝を過ぎて この川の 下にも長く 汝が心待て

[仮名]

しかれこそ としのやとせを きりかみの よちこをすぎ たちばなの ほつえをすぎて このかはの したにもながく ながこころまて

[注解]

[元][天][類] / 父→文 [元][天][紀]

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序詞

3308

[題詞]

反歌

[原文]

天地之 神尾母吾者 祷而寸 戀云物者 都不止来

[訓読]

天地の神をも我れは祈りてき恋といふものはかつてやまずけり

[仮名]

あめつちの かみをもわれは いのりてき こひといふものは かつてやまずけり

[検索用キーワード]

3309

[題詞]

柿本朝臣人麻呂之集歌

[原文]

物不念 路行去裳 青山乎 振酒見者 都追慈花 尓太遥越賣 作樂花 佐可遥越賣 汝乎叙母 吾尓依云 吾乎叙物 汝尓依云 汝者如何念也 念社 歳八<年>乎 斬髪 与知子乎過 橘之 末枝乎須具里 此川之 下母長久 汝心待

[訓読]

物思はず 道行く行くも 青山を 振り放け見れば つつじ花 にほえ娘子 桜花 栄え娘子 汝れをぞも 我れに寄すといふ 我れをぞも 汝れに寄すといふ 汝はいかに思ふや 思へこそ 年の八年を 切り髪の よち子を過ぎ 橘の ほつ枝をすぐり この川の 下にも長く 汝が心待て

[仮名]

ものもはず みちゆくゆくも あをやまを ふりさけみれば つつじばな にほえをとめ さくらばな さかえをとめ なれをぞも われによすといふ われをぞも なれによすといふ なはいかにおもふや おもへこそ としのやとせを きりかみの よちこをすぎ たちばなの ほつえをすぐり このかはの したにもながく ながこころまて

[注解]

[元][天][類]

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人麻呂歌集 非略体 異伝 恋情 女歌 歌垣

3310

[題詞]

[原文]

隠口乃 泊瀬乃國尓 左結婚丹 吾来者 棚雲利 雪者零来 左雲理 雨者落来 野鳥 雉動 家鳥 可鶏毛鳴 左夜者明 此夜者昶奴 入而<且>将眠 此戸開為

[訓読]

隠口の 泊瀬の国に さよばひに 我が来れば たな曇り 雪は降り来 さ曇り 雨は降り来 野つ鳥 雉は響む 家つ鳥 鶏も鳴く さ夜は明け この夜は明けぬ 入りてかつ寝む この戸開かせ

[仮名]

こもりくの はつせのくにに さよばひに わがきたれば たなぐもり ゆきはふりく さぐもり あめはふりく のつとり きぎしはとよむ いへつとり かけもなく さよはあけ このよはあけぬ いりてかつねむ このとひらかせ

[注解]

[元][天][類]

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奈良 枕詞 動物 求婚 妻問い

3311

[題詞]

反歌

[原文]

隠来乃 泊瀬小國丹 妻有者 石者履友 猶来々

[訓読]

隠口の泊瀬小国に妻しあれば石は踏めどもなほし来にけり

[仮名]

こもりくの はつせをぐにに つましあれば いしはふめども なほしきにけり

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奈良 榛原 枕詞

3312

[題詞]

[原文]

隠口乃 長谷小國 夜延為 吾天皇寸与 奥床仁 母者睡有 外床丹 父者寐有 起立者 母可知 出行者 父可知 野干<玉>之 夜者昶去奴 幾許雲 不念如 隠つ香聞

[訓読]

隠口の 泊瀬小国に よばひせす 我が天皇よ 奥床に 母は寐ねたり 外床に 父は寐ねたり 起き立たば 母知りぬべし 出でて行かば 父知りぬべし ぬばたまの 夜は明けゆきぬ ここだくも 思ふごとならぬ 隠り妻かも

[仮名]

こもりくの はつせをぐにに よばひせす わがすめろきよ おくとこに はははいねたり とどこに ちちはいねたり おきたたば ははしりぬべし いでてゆかば ちちしりぬべし ぬばたまの よはあけゆきぬ ここだくも おもふごとならぬ こもりづまかも

[注解]

[元][天][類]

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枕詞 地名 榛原 奈良 拒否 女歌

3313

[題詞]

反歌

[原文]

川瀬之 石迹渡 野干玉之 黒馬之来夜者 常二有沼鴨

[訓読]

川の瀬の石踏み渡りぬばたまの黒馬来る夜は常にあらぬかも

[仮名]

かはのせの いしふみわたり ぬばたまの くろまくるよは つねにあらぬかも

[検索用キーワード]

恋情 妻問い

3314

[題詞]

[原文]

次嶺經 山背道乎 人都末乃 馬従行尓 己夫之 歩従行者 毎見 哭耳之所泣 曽許思尓 心之痛之 垂乳根乃 母之形見跡 吾持有 真十見鏡尓 蜻領巾 負並持而 馬替吾背

[訓読]

つぎねふ 山背道を 人夫の 馬より行くに 己夫し 徒歩より行けば 見るごとに 音のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し たらちねの 母が形見と 我が持てる まそみ鏡に 蜻蛉領巾 負ひ並め持ちて 馬買へ我が背

[仮名]

つぎねふ やましろぢを ひとづまの うまよりゆくに おのづまし かちよりゆけば みるごとに ねのみしなかゆ そこおもふに こころしいたし たらちねの ははがかたみと わがもてる まそみかがみに あきづひれ おひなめもちて うまかへわがせ

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動物 女歌 恋愛

3315

[題詞]

反歌

[原文]

泉<川> 渡瀬深見 吾世古我 旅行衣 蒙沾鴨

[訓読]

泉川渡り瀬深み我が背子が旅行き衣ひづちなむかも

[仮名]

いづみがは わたりぜふかみ わがせこが たびゆきごろも ひづちなむかも

[注解]

[元][天][類]

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木津川 女歌 恋愛

3316

[題詞]

或本反歌曰

[原文]

清鏡 雖持吾者 記無 君之歩行 名積去見者

[訓読]

まそ鏡持てれど我れは験なし君が徒歩よりなづみ行く見れば

[仮名]

まそかがみ もてれどわれは しるしなし きみがかちより なづみゆくみれば

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女歌

3317

[題詞]

[原文]

馬替者 妹歩行将有 縦恵八子 石者雖履 吾二行

[訓読]

馬買はば妹徒歩ならむよしゑやし石は踏むとも我はふたり行かむ

[仮名]

うまかはば いもかちならむ よしゑやし いしはふむとも わはふたりゆかむ

[検索用キーワード]

3318

[題詞]

[原文]

木國之 濱因云 <鰒>珠 将拾跡云而 妹乃山 勢能山越而 行之君 何時来座跡 玉桙之 道尓出立 夕卜乎 吾問之可婆 夕卜之 吾尓告良久 吾妹兒哉 汝待君者 奥浪 来因白珠 邊浪之 緑<流>白珠 求跡曽 君之不来益 拾登曽 公者不来益 久有 今七日許 早有者 今二日許 将有等曽 君<者>聞之二々 勿戀吾妹

[訓読]

紀の国の 浜に寄るといふ 鰒玉 拾はむと言ひて 妹の山 背の山越えて 行きし君 いつ来まさむと 玉桙の 道に出で立ち 夕占を 我が問ひしかば 夕占の 我れに告らく 我妹子や 汝が待つ君は 沖つ波 来寄る白玉 辺つ波の 寄する白玉 求むとぞ 君が来まさぬ 拾ふとぞ 君は来まさぬ 久ならば いま七日ばかり 早くあらば いま二日ばかり あらむとぞ 君は聞こしし な恋ひそ我妹

[仮名]

きのくにの はまによるといふ あはびたま ひりはむといひて いものやま せのやまこえて ゆきしきみ いつきまさむと たまほこの みちにいでたち ゆふうらを わがとひしかば ゆふうらの われにつぐらく わぎもこや ながまつきみは おきつなみ きよるしらたま へつなみの よするしらたま もとむとぞ きみがきまさぬ ひりふとぞ きみはきまさぬ ひさならば いまなぬかばかり はやくあらば いまふつかばかり あらむとぞ きみはきこしし なこひそわぎも

[注解]

[元][天][類] / 浪→流 [西(訂正右書)][元][天][類] / <> →者 [西(左書)][元][天][類]

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肝女歌 恋情 送別

3319

[題詞]

反歌

[原文]

杖衝毛 不衝毛吾者 行目友 公之将来 道之不知苦

[訓読]

杖つきもつかずも我れは行かめども君が来まさむ道の知らなく

[仮名]

つゑつきも つかずもわれは ゆかめども きみがきまさむ みちのしらなく

[検索用キーワード]

送別

3320

[題詞]

[原文]

直不徃 此従巨勢道柄 石瀬踏 求曽吾来 戀而為便奈見

[訓読]

直に行かずこゆ巨勢道から石瀬踏み求めぞ我が来し恋ひてすべなみ

[仮名]

ただにゆかず こゆこせぢから いはせふみ もとめぞわがこし こひてすべなみ

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篥・地名 奈良 御所市 恋情 女歌

3321

[題詞]

[原文]

左夜深而 今者明奴登 開戸手 木部行君乎 何時可将待

[訓読]

さ夜更けて今は明けぬと戸を開けて紀へ行く君をいつとか待たむ

[仮名]

さよふけて いまはあけぬと とをあけて きへゆくきみを いつとかまたむ

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和歌山 送別 恋情

3322

[題詞]

[原文]

門座 郎子内尓 雖至 痛之戀者 今還金

[訓読]

門に居る我が背は宇智に至るともいたくし恋ひば今帰り来む

[仮名]

かどにゐる わがせはうちに いたるとも いたくしこひば いまかへりこむ

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五条市 占い

~ 譬喩歌 ~

3323

[題詞]

譬喩歌

[原文]

師名立 都久麻左野方 息長之 遠智能小菅 不連尓 伊苅持来 不敷尓 伊苅持来而 置而 吾乎令偲 息長之 遠智能子菅

[訓読]

しなたつ 筑摩さのかた 息長の 越智の小菅 編まなくに い刈り持ち来 敷かなくに い刈り持ち来て 置きて 我れを偲はす 息長の 越智の小菅

[仮名]

しなたつ つくまさのかた おきながの をちのこすげ あまなくに いかりもちき しかなくに いかりもちきて おきて われをしのはす おきながの をちのこすげ

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滋賀県 米原 女歌 民謡 歌垣

~ 挽 歌 ~

3324

[題詞]

挽歌

[原文]

<挂>纒毛 文恐 藤原 王都志弥美尓 人下 満雖有 君下 大座常 徃向 <年>緒長 仕来 君之御門乎 如天 仰而見乍 雖畏 思憑而 何時可聞 日足座而 十五月之 多田波思家武登 吾思 皇子命者 春避者 殖槻於之 遠人 待之下道湯 登之而 國見所遊 九月之 四具礼<乃>秋者 大殿之 砌志美弥尓 露負而 靡<芽>乎 珠<手>次 懸而所偲 三雪零 冬朝者 刺楊 根張梓矣 御手二 所取賜而 所遊 我王矣 烟立 春日暮 喚犬追馬鏡 雖見不飽者 万歳 如是霜欲得常 大船之 憑有時尓 涙言 目鴨迷 大殿矣 振放見者 白細布 餝奉而 内日刺 宮舎人方 [一云 者] 雪穂 麻衣服者 夢鴨 現前鴨跡 雲入夜之 迷間 朝裳吉 城於道従 角障經 石村乎見乍 神葬 々奉者 徃道之 田付S不知 雖思 印手無見 雖歎 奥香乎無見 御袖 徃觸之松矣 言不問 木雖在 荒玉之 立月毎 天原 振放見管 珠手次 懸而思名 雖恐有

[訓読]

かけまくも あやに畏し 藤原の 都しみみに 人はしも 満ちてあれども 君はしも 多くいませど 行き向ふ 年の緒長く 仕へ来し 君の御門を 天のごと 仰ぎて見つつ 畏けど 思ひ頼みて いつしかも 日足らしまして 望月の 満しけむと 我が思へる 皇子の命は 春されば 植槻が上の 遠つ人 松の下道ゆ 登らして 国見遊ばし 九月の しぐれの秋は 大殿の 砌しみみに 露負ひて 靡ける萩を 玉たすき 懸けて偲はし み雪降る 冬の朝は 刺し柳 根張り梓を 大御手に 取らし賜ひて 遊ばしし 我が大君を 霞立つ 春の日暮らし まそ鏡 見れど飽かねば 万代に かくしもがもと 大船の 頼める時に 泣く我れ 目かも迷へる 大殿を 振り放け見れば 白栲に 飾りまつりて うちひさす 宮の舎人も [一云 は] 栲のほの 麻衣着れば 夢かも うつつかもと 曇り夜の 迷へる間に あさもよし 城上の道ゆ つのさはふ 磐余を見つつ 神葬り 葬りまつれば 行く道の たづきを知らに 思へども 験をなみ 嘆けども 奥処をなみ 大御袖 行き触れし松を 言問はぬ 木にはありとも あらたまの 立つ月ごとに 天の原 振り放け見つつ 玉たすき 懸けて偲はな 畏くあれども

[仮名]

かけまくも あやにかしこし ふぢはらの みやこしみみに ひとはしも みちてあれども きみはしも おほくいませど ゆきむかふ としのをながく つかへこし きみのみかどを あめのごと あふぎてみつつ かしこけど おもひたのみて いつしかも ひたらしまして もちづきの たたはしけむと わがもへる みこのみことは はるされば うゑつきがうへの とほつひと まつのしたぢゆ のぼらして くにみあそばし ながつきの しぐれのあきは おほとのの みぎりしみみに つゆおひて なびけるはぎを たまたすき かけてしのはし みゆきふる ふゆのあしたは さしやなぎ ねはりあづさを おほみてに とらしたまひて あそばしし わがおほきみを かすみたつ はるのひくらし まそかがみ みれどあかねば よろづよに かくしもがもと おほぶねの たのめるときに なくわれ めかもまとへる おほとのを ふりさけみれば しろたへに かざりまつりて うちひさす みやのとねりも[は] たへのほの あさぎぬければ いめかも うつつかもと くもりよの まとへるほどに あさもよし きのへのみちゆ つのさはふ いはれをみつつ かむはぶり はぶりまつれば ゆくみちの たづきをしらに おもへども しるしをなみ なげけども おくかをなみ おほみそで ゆきふれしまつを こととはぬ きにはありとも あらたまの たつつきごとに あまのはら ふりさけみつつ たまたすき かけてしのはな かしこくあれども

[注解]

桂→挂 [天][紀] / 羊→年 [元][天][類] / 之→乃 [元][天][類] / 芽子→芽 [元][天][類] / 多→手 [元][天][類]

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奈良 皇子挽歌 献呈挽歌 枕詞

3325

[題詞]

反歌

[原文]

角障經 石村山丹 白栲 懸有雲者 皇可聞

[訓読]

つのさはふ磐余の山に白栲にかかれる雲は大君にかも

[仮名]

つのさはふ いはれのやまに しろたへに かかれるくもは おほきみにかも

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奈良 枕詞 皇子挽歌

3326

[題詞]

[原文]

礒城嶋之 日本國尓 何方 御念食可 津礼毛無 城上宮尓 大殿乎 都可倍奉而 殿隠 々座者 朝者 召而使 夕者 召而使 遣之 舎人之子等者 行鳥之 群而待 有雖待 不召賜者 劔刀 磨之心乎 天雲尓 念散之 展轉 土打哭杼母 飽不足可聞

[訓読]

礒城島の 大和の国に いかさまに 思ほしめせか つれもなき 城上の宮に 大殿を 仕へまつりて 殿隠り 隠りいませば 朝には 召して使ひ 夕には 召して使ひ 使はしし 舎人の子らは 行く鳥の 群がりて待ち あり待てど 召したまはねば 剣大刀 磨ぎし心を 天雲に 思ひはぶらし 臥いまろび ひづち哭けども 飽き足らぬかも

[仮名]

しきしまの やまとのくにに いかさまに おもほしめせか つれもなき きのへのみやに おほとのを つかへまつりて とのごもり こもりいませば あしたには めしてつかひ ゆふへには めしてつかひ つかはしし とねりのこらは ゆくとりの むらがりてまち ありまてど めしたまはねば つるぎたち とぎしこころを あまくもに おもひはぶらし こいまろび ひづちなけども あきだらぬかも

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奈良 皇子挽歌 枕詞

3327

[題詞]

[原文]

百小竹之 三野王 金厩 立而飼駒 角厩 立而飼駒 草社者 取而飼<曰戸> 水社者 は而飼<曰戸> 何然 大分青馬之 鳴立鶴

[訓読]

百小竹の 三野の王 西の馬屋に 立てて飼ふ駒 東の馬屋に 立てて飼ふ駒 草こそば 取りて飼ふと言へ 水こそば 汲みて飼ふと言へ 何しかも 葦毛の馬の いなき立てつる

[仮名]

ももしのの みののおほきみ にしのうまやに たててかふこま ひむがしのうまやに たててかふこま くさこそば とりてかふといへ みづこそば くみてかふといへ なにしかも あしげのうまの いなきたてつる

[注解]

[岩波古典大系] / 旱→曰戸 [岩波古典大系]

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美努王 譬喩 皇子挽歌

3328

[題詞]

反歌

[原文]

衣袖 大分青馬之 嘶音 情有鳧 常従異鳴

[訓読]

衣手葦毛の馬のいなく声心あれかも常ゆ異に鳴く

[仮名]

ころもで あしげのうまの いなくこゑ こころあれかも つねゆけになく

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皇子挽歌

3329

[題詞]

[原文]

白雲之 棚曳國之 青雲之 向伏國乃 天雲 下有人者 妾耳鴨 君尓戀濫 吾耳鴨 夫君尓戀礼薄 天地 満言 戀鴨 る之病有 念鴨 意之痛 妾戀叙 日尓異尓益 何時橋物 不戀時等者 不有友 是九月乎 吾背子之 偲丹為与得 千世尓物 偲渡登 万代尓 語都我部等 始而之 此九月之 過莫呼 伊多母為便無見 荒玉之 月乃易者 将為須部乃 田度伎乎不知 石根之 許凝敷道之 石床之 根延門尓 朝庭 出座而嘆 夕庭 入座戀乍 烏玉之 黒髪敷而 人寐 味寐者不宿尓 大船之 行良行良尓 思乍 吾寐夜等者 數物不敢<鴨>

[訓読]

白雲の たなびく国の 青雲の 向伏す国の 天雲の 下なる人は 我のみかも 君に恋ふらむ 我のみかも 君に恋ふれば 天地に 言を満てて 恋ふれかも 胸の病みたる 思へかも 心の痛き 我が恋ぞ 日に異にまさる いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども この九月を 我が背子が 偲ひにせよと 千代にも 偲ひわたれと 万代に 語り継がへと 始めてし この九月の 過ぎまくを いたもすべなみ あらたまの 月の変れば 為むすべの たどきを知らに 岩が根の こごしき道の 岩床の 根延へる門に 朝には 出で居て嘆き 夕には 入り居恋ひつつ ぬばたまの 黒髪敷きて 人の寝る 味寐は寝ずに 大船の ゆくらゆくらに 思ひつつ 我が寝る夜らは 数みもあへぬかも

[仮名]

しらくもの たなびくくにの あをくもの むかぶすくにの あまくもの したなるひとは あのみかも きみにこふらむ あのみかも きみにこふれば あめつちに ことをみてて こふれかも むねのやみたる おもへかも こころのいたき あがこひぞ ひにけにまさる いつはしも こひぬときとは あらねども このながつきを わがせこが しのひにせよと ちよにも しのひわたれと よろづよに かたりつがへと はじめてし このながつきの すぎまくを いたもすべなみ あらたまの つきのかはれば せむすべの たどきをしらに いはがねの こごしきみちの いはとこの ねばへるかどに あしたには いでゐてなげき ゆふへには いりゐこひつつ ぬばたまの くろかみしきて ひとのぬる うまいはねずに おほぶねの ゆくらゆくらに おもひつつ わがぬるよらは よみもあへぬかも

[注解]

[類][細]

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枕詞

3330

[題詞]

[原文]

隠来之 長谷之川之 上瀬尓 鵜矣八頭漬 下瀬尓 鵜矣八頭漬 上瀬之 <年>魚矣令咋 下瀬之 鮎矣令咋 麗妹尓 鮎遠惜 <麗妹尓 鮎矣惜> 投左乃 遠離居而 思空 不安國 嘆空 不安國 衣社薄 其破者 <継>乍物 又母相登言 玉社者 緒之絶薄 八十一里喚鶏 又物逢登曰 又毛不相物者 つ尓志有来

[訓読]

隠口の 泊瀬の川の 上つ瀬に 鵜を八つ潜け 下つ瀬に 鵜を八つ潜け 上つ瀬の 鮎を食はしめ 下つ瀬の 鮎を食はしめ くはし妹に 鮎を惜しみ くはし妹に 鮎を惜しみ 投ぐるさの 遠ざかり居て 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 安けなくに 衣こそば それ破れぬれば 継ぎつつも またも合ふといへ 玉こそば 緒の絶えぬれば くくりつつ またも合ふといへ またも逢はぬものは 妻にしありけり

[仮名]

こもりくの はつせのかはの かみつせに うをやつかづけ しもつせに うをやつかづけ かみつせの あゆをくはしめ しもつせの あゆをくはしめ くはしいもに あゆををしみ くはしいもに あゆををしみ なぐるさの とほざかりゐて おもふそら やすけなくに なげくそら やすけなくに きぬこそば それやれぬれば つぎつつも またもあふといへ たまこそば をのたえぬれば くくりつつ またもあふといへ またもあはぬものは つまにしありけり

[注解]

[元][天][類] / <>→麗妹尓 鮎矣惜 [元][天][類] / 縫→継 [元][温]

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榛原 桜井 奈良 亡妻歌

3331

[題詞]

[原文]

隠来之 長谷之山 青幡之 忍坂山者 走出之 宜山之 出立之 妙山叙 惜 山之 荒巻惜毛

[訓読]

隠口の 泊瀬の山 青旗の 忍坂の山は 走出の よろしき山の 出立の くはしき山ぞ あたらしき 山の 荒れまく惜しも

[仮名]

こもりくの はつせのやま あをはたの おさかのやまは はしりでの よろしきやまの いでたちの くはしきやまぞ あたらしき やまの あれまくをしも

[検索用キーワード]

桜井 奈良 亡妻歌 歌謡 山讃美

3332

[題詞]

[原文]

高山 与海社者 山随 如此毛現 海随 然真有目 人者<花>物曽 空蝉与人

[訓読]

高山と 海とこそば 山ながら かくもうつしく 海ながら しかまことならめ 人は花ものぞ うつせみ世人

[仮名]

たかやまと うみとこそば やまながら かくもうつしく うみながら しかまことならめ ひとははなものぞ うつせみよひと

[注解]

[元][天][類]

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3333

[題詞]

[原文]

王之 御命恐 秋津嶋 倭雄過而 大伴之 御津之濱邊従 大舟尓 真梶繁貫 旦名伎尓 水<手>之音為乍 夕名寸尓 梶音為乍 行師君 何時来座登 <大>卜置而 齊度尓 <狂>言哉 人之言釣 我心 盡之山之 黄葉之 散過去常 公之正香乎

[訓読]

大君の 命畏み 蜻蛉島 大和を過ぎて 大伴の 御津の浜辺ゆ 大船に 真楫しじ貫き 朝なぎに 水手の声しつつ 夕なぎに 楫の音しつつ 行きし君 いつ来まさむと 占置きて 斎ひわたるに たはことか 人の言ひつる 我が心 筑紫の山の 黄葉の 散りて過ぎぬと 君が直香を

[仮名]

おほきみの みことかしこみ あきづしま やまとをすぎて おほともの みつのはまへゆ おほぶねに まかぢしじぬき あさなぎに かこのこゑしつつ ゆふなぎに かぢのおとしつつ ゆきしきみ いつきまさむと うらおきて いはひわたるに たはことか ひとのいひつる あがこころ つくしのやまの もみちばの ちりてすぎぬと きみがただかを

[注解]

大夕→大 [元][類] / 抂→狂 [天][温]

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奈良 大阪 福岡 羈旅 道行き 行旅死 枕詞

3334

[題詞]

反歌

[原文]

<狂>言哉 人之云鶴 玉緒乃 長登君者 言手師物乎

[訓読]

たはことか人の言ひつる玉の緒の長くと君は言ひてしものを

[仮名]

たはことか ひとのいひつる たまのをの ながくときみは いひてしものを

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3335

[題詞]

[原文]

玉桙之 道去人者 足桧木之 山行野徃 直海 川徃渡 不知魚取 海道荷出而 惶八 神之渡者 吹風母 和者不吹 立浪母 踈不立 跡座浪之 塞道麻 誰心 勞跡鴨 直渡異六 <直渡異六>

[訓読]

玉桙の 道行く人は あしひきの 山行き野行き にはたづみ 川行き渡り 鯨魚取り 海道に出でて 畏きや 神の渡りは 吹く風も のどには吹かず 立つ波も おほには立たず とゐ波の 塞ふる道を 誰が心 いたはしとかも 直渡りけむ 直渡りけむ

[仮名]

たまほこの みちゆくひとは あしひきの やまゆきのゆき にはたづみ かはゆきわたり いさなとり うみぢにいでて かしこきや かみのわたりは ふくかぜも のどにはふかず たつなみも おほにはたたず とゐなみの ささふるみちを たがこころ いたはしとかも ただわたりけむ ただわたりけむ

[注解]

立塞 / <>→直渡異六 [元][類]

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狄領鎮魂

3336

[題詞]

[原文]

鳥音之 所聞海尓 高山麻 障所為而 奥藻麻 枕所為 <蛾>葉之 衣<谷>不服尓 不知魚取 海之濱邊尓 浦裳無 所宿有人者 母父尓 真名子尓可有六 若を之 妻香有異六 思布 言傳八跡 家問者 家乎母不告 名問跡 名谷母不告 哭兒如 言谷不語 思鞆 悲物者 世間有 <世間有>

[訓読]

鳥が音の 聞こゆる海に 高山を 隔てになして 沖つ藻を 枕になし ひむし羽の 衣だに着ずに 鯨魚取り 海の浜辺に うらもなく 臥やせる人は 母父に 愛子にかあらむ 若草の 妻かありけむ 思ほしき 言伝てむやと 家問へば 家をも告らず 名を問へど 名だにも告らず 泣く子なす 言だにとはず 思へども 悲しきものは 世間にぞある 世間にぞある

[仮名]

とりがねの きこゆるうみに たかやまを へだてになして おきつもを まくらになし ひむしはの きぬだにきずに いさなとり うみのはまへに うらもなく こやせるひとは おもちちに まなごにかあらむ わかくさの つまかありけむ おもほしき ことつてむやと いへとへば いへをものらず なをとへど なだにものらず なくこなす ことだにとはず おもへども かなしきものは よのなかにぞある よのなかにぞある

[注解]

[元][天][類] / 浴→谷 [類] / <>→世間有 [元][天]

[検索用キーワード]

3337

[題詞]

反歌

[原文]

母父毛 妻毛子等毛 高々二 来跡<待>異六 人之悲<紗>

[訓読]

母父も妻も子どもも高々に来むと待ちけむ人の悲しさ

[仮名]

おもちちも つまもこどもも たかたかに こむとまちけむ ひとのかなしさ

[注解]

?機・[元][天][類] / 沙→紗 [元][天][類]

[検索用キーワード]

3338

[題詞]

[原文]

蘆桧木乃 山道者将行 風吹者 浪之塞 海道者不行

[訓読]

あしひきの山道は行かむ風吹けば波の塞ふる海道は行かじ

[仮名]

あしひきの やまぢはゆかむ かぜふけば なみのささふる うみぢはゆかじ

[検索用キーワード]

3339

[題詞]

或本歌 / 備後國神嶋濱調使首見屍作歌一首[并短歌]

[原文]

玉桙之 道尓出立 葦引乃 野行山行 潦 川徃渉 鯨名取 海路丹出而 吹風裳 母穂丹者不吹 立浪裳 箟跡丹者不起 恐耶 神之渡乃 敷浪乃 寄濱部丹 高山矣 部立丹置而 <b>潭矣 枕丹巻而 占裳無 偃為<公>者 母父之 愛子丹裳在将 稚草之 妻裳有将等 家問跡 家道裳不云 名矣問跡 名谷裳不告 誰之言矣 勞鴨 腫浪能 恐海矣 直渉異将

[訓読]

玉桙の 道に出で立ち あしひきの 野行き山行き にはたづみ 川行き渡り 鯨魚取り 海道に出でて 吹く風も おほには吹かず 立つ波も のどには立たぬ 畏きや 神の渡りの しき波の 寄する浜辺に 高山を 隔てに置きて 浦ぶちを 枕に巻きて うらもなく こやせる君は 母父が 愛子にもあらむ 若草の 妻もあらむと 家問へど 家道も言はず 名を問へど 名だにも告らず 誰が言を いたはしとかも とゐ波の 畏き海を 直渡りけむ

[仮名]

たまほこの みちにいでたち あしひきの のゆきやまゆき にはたづみ かはゆきわたり いさなとり うみぢにいでて ふくかぜも おほにはふかず たつなみも のどにはたたぬ かしこきや かみのわたりの しきなみの よするはまへに たかやまを へだてにおきて うらぶちを まくらにまきて うらもなく こやせるきみは おもちちが まなごにもあらむ わかくさの つまもあらむ いへとへど いへぢもいはず なをとへど なだにものらず たがことを いたはしとかも とゐなみの かしこきうみを ただわたりけむ

[注解]

納→b [元][紀] / 君→公 [元][天][類] / 将等 [元][天][類] 等将

[検索用キーワード]

狄領広島県 福山 地名 枕詞 異伝 或本歌 調使首

3340

[題詞]

反歌

[原文]

母父裳 妻裳子等裳 高々丹 来<将>跡待 人乃悲

[訓読]

母父も妻も子どもも高々に来むと待つらむ人の悲しさ

[仮名]

おもちちも つまもこどもも たかたかに こむとまつらむ ひとのかなしさ

[注解]

将 [元][天][類]

[検索用キーワード]

狄領鎮魂 或本歌 羈旅 調使首

3341

[題詞]

[原文]

家人乃 将待物矣 津煎裳無 荒礒矣巻而 偃有<公>鴨

[訓読]

家人の待つらむものをつれもなき荒礒を巻きて寝せる君かも

[仮名]

いへびとの まつらむものを つれもなき ありそをまきて なせるきみかも

[注解]

[元][天][類]

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炭・或本歌 異伝 羈旅 調使首

3342

[題詞]

[原文]

<b>潭 偃為<公>矣 今日々々跡 将来跡将待 妻之可奈思母

[訓読]

浦ぶちにこやせる君を今日今日と来むと待つらむ妻し悲しも

[仮名]

うらぶちに こやせるきみを けふけふと こむとまつらむ つましかなしも

[注解]

[元][紀] / 君→公 [元][天][類]

[検索用キーワード]

炭・或本歌 異伝 羈旅 調使首

3343

[題詞]

[原文]

<b>浪 来依濱丹 津煎裳無 偃為<公>賀 家道不知裳

[訓読]

浦波の来寄する浜につれもなくこやせる君が家道知らずも

[仮名]

うらなみの きよするはまに つれもなく ふしたるきみが いへぢしらずも

[注解]

[元][紀] / 君→公 [元][天][類]

[検索用キーワード]

炭・或本歌 異伝 羈旅 調使首

3344

[題詞]

[原文]

此月者 君将来跡 大舟之 思憑而 何時可登 吾待居者 黄葉之 過行跡 玉梓之 使之云者 螢成 髣髴聞而 大<土>乎 <火>穂跡<而 立>居而 去方毛不知 朝霧乃 思<或>而 杖不足 八尺乃嘆 々友 記乎無見跡 何所鹿 君之将座跡 天雲乃 行之随尓 所射完乃 行<文>将死跡 思友 道之不知者 獨居而 君尓戀尓 哭耳思所泣

[訓読]

この月は 君来まさむと 大船の 思ひ頼みて いつしかと 我が待ち居れば 黄葉の 過ぎてい行くと 玉梓の 使の言へば 蛍なす ほのかに聞きて 大地を ほのほと踏みて 立ちて居て ゆくへも知らず 朝霧の 思ひ迷ひて 杖足らず 八尺の嘆き 嘆けども 験をなみと いづくにか 君がまさむと 天雲の 行きのまにまに 射ゆ鹿猪の 行きも死なむと 思へども 道の知らねば ひとり居て 君に恋ふるに 哭のみし泣かゆ

[仮名]

このつきは きみきまさむと おほぶねの おもひたのみて いつしかと わがまちをれば もみちばの すぎていゆくと たまづさの つかひのいへば ほたるなす ほのかにききて おほつちを ほのほとふみて たちてゐて ゆくへもしらず あさぎりの おもひまとひて つゑたらず やさかのなげき なげけども しるしをなみと いづくにか きみがまさむと あまくもの ゆきのまにまに いゆししの ゆきもしなむと おもへども みちのしらねば ひとりゐて きみにこふるに ねのみしなかゆ

[注解]

[天] / 太→火 [元][天][類] / 立而→而立 [元][天] / 惑→或 [元][天] / 父→文 [元][天][類]

[検索用キーワード]

悲別 防人妻

3345

[題詞]

反歌

[原文]

葦邊徃 鴈之翅乎 見別 <公>之佩具之 投箭之所思

[訓読]

葦辺行く雁の翼を見るごとに君が帯ばしし投矢し思ほゆ

[仮名]

あしへゆく かりのつばさを みるごとに きみがおばしし なげやしおもほゆ

[注解]

[元][天][類] / 防 [西(上書訂正)][元][天][紀]

[検索用キーワード]

悲別 防人妻

3346

[題詞]

[原文]

欲見者 雲居所見 愛 十羽能松原 小子等 率和出将見 琴酒者 國丹放甞 別避者 宅仁離南 乾坤之 神志恨之 草枕 此羈之氣尓 妻應離哉

[訓読]

見欲しきは 雲居に見ゆる うるはしき 鳥羽の松原 童ども いざわ出で見む こと放けば 国に放けなむ こと放けば 家に放けなむ 天地の 神し恨めし 草枕 この旅の日に 妻放くべしや

[仮名]

みほしきは くもゐにみゆる うるはしき とばのまつばら わらはども いざわいでみむ ことさけば くににさけなむ ことさけば いへにさけなむ あめつちの かみしうらめし くさまくら このたびのけに つまさくべしや

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羈旅 行旅死

3347

[題詞]

或本歌曰

[原文]

羈之氣二為而

[訓読]

旅の日にして

[仮名]

たびのけにして

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採行旅死

3347

[題詞]

反歌

[原文]

草枕 此羈之氣尓 妻<放> 家道思 生為便無

[訓読]

草枕この旅の日に妻離り家道思ふに生けるすべなし

[仮名]

くさまくら このたびのけに つまさかり いへぢおもふに いけるすべなし

[注解]

[元][天][類]

[検索用キーワード]

羈旅 行旅死