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丸山林平「定本古事記」

- 上巻 -

【 神代の物語 】

原 文
故、於レ是、芫須佐之男命言、然隅、樽二天照大御突一將レ罷乃、參二上天一時、山川悉動、國土皆震。爾、天照大御突聞驚而詔、我那勢命之上來由隅、必不二善心。欲レ奪二我國一耳來、解二御髪、纏二御美豆羅一而乃、於二左右御美豆羅、亦於二御鬘、亦於二左右御手、各纏二持八尺勾潴之五百津之美須揺流之珠一而【自美至流四字以音。下效比】曾豐良邇隅負二千入之靫、【訓入云能理。下效比。自曾至邇以音。】附二五百入之靫、亦館レ取二佩伊綾【此二字以音】之竹鞆一而、弓腹振立而、堅庭隅、於二向股一蹈那豆美、【三字以音】如二沫悠一蹶散而、伊綾【二字以音】之男建【訓建云多豆夫】蹈建而待問、何故上來。爾、芫須佐之男命答白、僕隅無二邪心。唯大御突之命以、問二賜僕之哭伊佐知流之事一故、白綾良久、【三字以音】僕欲レ往二妣國一以哭爾、大御突詔三汝隅不レ可レ在二此國一而、突夜良比夜良比賜故、以下爲樽中將二罷往一之寔上參上耳。無二異心一爾、天照大御突詔、然隅、汝心之厳明、何以知。於レ是、芫須佐之男命、答白、各宇氣比而生レ子。【自宇以下三字以音。下效比。】
読み下し文
故、ここに、速須佐之男命言したまひしく、「然らば、天照大御神に請して罷りなむ。」とまをして、天に参上ります時に、山川悉に動み、国土皆震りき。爾に天照大御神、聞き驚かして詔りたまひしく、「我が那勢命の上り来ます由は、必ず善き心ならじ。我が国を奪はむと欲すにこそ。」と、のりたまひて、御髪を解き、御美豆羅に纏かして、亦御鬘にも亦左右の御手にも、各八尺の勾潴の五百津の美須麻流の珠を纏き持たして、【美より流に至る四字、音を以ふ。下これに效ふ。】曽豐良には千入の靫を負ひ、【入を訓みてノリと云ふ。下これに效ふ。曽より邇に至る、音を以ふ。】五百入の靫を附け、亦伊都【この二字、音を以ふ。】の竹鞆を取り佩ばして、弓腹振り立てて、璧庭をば向股に踏み那豆美、【三字、音を以ふ。】沫雪如す蹶ゑ散かして、伊都【二字、音を以ふ。】の男建【建を訓みてタケブと云ふ。】踏み建びて、待ち問ひたまひしく、「何故上り来ませる。」と、とひたまひき。爾に、速須佐之男命、答へ白したまひしく、「僕は邪き心無し。唯、大御神の命もちて、僕が哭き伊佐知流ことを問ひたまひし故に、白し都良久、【三字、音を以ふ。】僕は妣が国に往らむと欲ひて哭くとまをししかば、大御神、詔りたまひしく、『汝は此の国には、な在みそ。』とのりたまひて、神夜良比夜良比たまひし故に、罷りなむ状を請さむと以為ひてこそ参上りつれ。異しき心無し。」と、まをしたまひければ、天照大御神、詔りたまひしく、「然らば、汝の心の清く明きことは、何にしてか知らまし。」と、のりたまひき。ここに速須佐之男命、答へて白したまひしく、「各宇気比て子を生まむ。」と、まをしたまひき。【宇より以下の三字、音を以ふ。下これに效ふ。】
丸山解説
〔山川悉動、國土皆震〕やまかはことごとにとよみ、くにつちみなゆりき。上に述べたごとく、スサノヲノミコトの暴風的性格を示す文。〔那勢命〕なせのみこと。汝兄命。女性から男性を親しんで称する語。いろせ。いろね。必ずしも夫君の意ではない。〔鬘〕かづら。真本その他「x」に誤る。「縵」のつもりであろうが、古写本の通弊である。「縵」に 「かづら」などの意はない。底本・延本などが正しい。
田中孝顕 注釈

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