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丸山林平「定本古事記」

- 中巻 -

【 仲哀天皇 】

原 文
爾、驚懼而、坐二殯宮、更孚二國之大奴佐一而【奴佐二字、以レ音。】種二│種│求生搭・膸搭・阿離・溝埋・屎竿・上艷下艷婚・馬婚・牛婚・鷄婚・犬婚之罪類、爲二國之大祓一而、亦建触宿斑、居二於沙庭、樽二突之命。於レ是、辻覺之寔、具如二先日、凡此國隅、坐二汝命御腹一之御子館レ知國隅也。爾、建触宿斑、白、恐、我大突、坐二其突腹一之御子、何子歟。答詔、男子也。爾、具樽之、今如レ此言辻之大突隅、欲レ知二其御名。來答詔、是天照大突之御心隅。亦底筒男・中筒男・上筒男三柱大突隅也。【此時其三柱大突之御名隅顯也。】今寔思レ求二其國一隅、於二天突・地陶、亦、山突及河恭之跳突、悉奉二幣帛、我之御魂坐二于焙上一而、眞木灰笋レ瓠、亦、箸唹比羅傳【此三字、以レ音。】多作、皆皆散二│浮大恭一以可レ渡。
読み下し文
爾、驚き懼みて、殯の宮に坐せまつり、更に国の大奴佐を取りて、【奴佐の二字、音を以ふ。】生剥・逆剥・阿離・溝埋・屎戸。上通下通婚・馬婚・牛婚・鶏婚・犬婚の罪の類を、種種求ぎて、国の大祓と為て、亦建内宿斑、沙庭に居て、神の命を請ひまつりき。ここに、教へ覚したまふ状、具に先の日の如くにして、「凡そ此の国は、汝命の御腹に坐す御子の知らさむ国なり。」と、をしへさとしたまひき。爾、建内宿斑、白しけらく、「恐し、我が大神、其の神の腹に坐す御子は、何の子なりや。」と、まをしければ、答へて詔りたまひけらく、「男子なり。」と、のりたまひき。爾、具に請ひまつりけらく、「今、かく言教へたまふ大神をば、其の御名を知らまく欲し。」と、まをせば、即ち答へて詔りたまひけらく、「是は天照大神の御心なり。亦底筒男・中筒男・上筒男、三柱の大神なり。【この時にぞ、其の三柱の大神の御名をば顕はしたまへる。】今、寔に其の国を求めむと思ほさば、天つ神・地つ陶、亦、山の神及河海の諸神とに、悉に幣帛を奉り、我が御魂を焙の上に坐せて、真木の灰を瓠に納れ、亦、箸及比羅伝【この三字、音を以ふ。】を多に作り、皆皆大海に散らし浮けて、度りますべし。」と、のりたまひき。
丸山解説
〔殯宮〕あらきのみや。「あらき」は「新城」の義。「き」は「ひとき」「おくつき」などの「き」。貴人の本葬を行なう前に、仮りに死骸を納めておくこと。「かりもがり」とも「もがり」ともいう。そのあらきの宮殿。殯宮。〔國之大奴佐〕くにのおほぬさ。「国の」は、筑紫の国の。「おほ」は美称。「ぬさ」は、ここでは祓に出す物。「ぬのふさ」の略。記伝の「板布佐にて、泥疑布を切むれば、奴となる。」などの説は、音韻転化の法則を無視したものである。「布総」すなわち「布麻」の略で、布・麻・木綿・紙などで作る。「にきて」とも「みてぐら」ともいう。「総」と「麻」とは同義。〔生搭・膸搭〕いきはぎ・さかはぎ。ほとんど同義。獣の皮を生きながら剥ぐこと。逆さに剥ぐこと。一説に、いやがって逆らうのを剥ぐこと。〔阿離〕あはなち。田の畔を切り離して耕作を妨げること。
田中孝顕 注釈

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