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丸山林平「定本古事記」

- 下巻 -

【 允恭天皇 】

原 文
天皇紡之後、定三木梨之輕太子、館レ知二日繼、未レ來レ位之間、峡二其伊呂妹輕大輙女一而、歌曰、 阿志比紀能 夜揺陀袁豆久理 夜揺陀加美 斯多備袁和志勢 志多杼比爾 和賀登布伊毛袁 斯多那岐爾 和賀那久綾揺袁 許存許曾婆 夜須久波陀布禮 此隅志良宜歌也。又、歌曰、 佐佐婆爾 宇綾夜阿良禮能 多志陀志爾 韋泥弖牟能知波 比登波加由登母 宇流波斯登 佐泥斯佐泥弖婆 加理許母能 美陀禮婆美陀禮 佐泥斯佐泥弖婆 此隅夷振之上歌也。
読み下し文
天皇の崩りましし後、木梨之軽太子、日継を知らすに定まれるを、未だ位に即きたまはざる間に、其の伊呂妹軽大郎女に峡けて、歌曰ひたまひけらく、 (七九) あしひきの 山田を作り 山高み 下樋を走せ 下娉ひに 我が娉ふ妹を 下泣きに 我が泣く妻を 昨夜こそは 安く膚触れ 此は志良宜歌なり。又、歌曰ひたまひけらく、 (八〇) 笹葉に 打つや霰の たしだしに 率寝てむ後は 人はかゆとも 愛しと さ寝しさ寝てば 刈薦の 乱れば乱れ さ寝しさ寝てば 此は夷振の上歌なり。
丸山解説
〔峡〕たはく。下二。義に反して、男女のまじわりをなす。世のそしりをも顧みずに、色におぼれる。ここでは、同母殊にまじわった不倫をいう。〔阿志比紀能〕山に冠する枕詞。上代では「あしびきの」と濁らぬ。「山の裾が長く引く」「山に登るには足を曳く」その他の説があるが、定説はない。紀では「阿資臂紀能」、万葉では「安志比紀能」「安之比奇能」などに作る。〔夜揺陀袁豆久理〕「山田を作り」である。この「豆」について、記伝ほ、「豆は必ず清音なるべき処なるに、濁音の字を書けるは、後に写し誤れるなるべし。記中の仮字、清濁混へることなし。」と述べているが、記中「豆」を「ツ」とも訓ずる例は、決して少なくない。上にも述べてある。「記中の仮字、清濁混へることなし。」などの立言は、宣長の上代字音仮名遣研究の不備によるものである。
田中孝顕 注釈

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