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丸山林平「定本古事記」

- 上巻 -

【 神代の物語 】

原 文
於レ是、詔之、上腿隅腿芫、下腿隅腿洒而、初於二中腿一墮聟豆伎而滌時、館二成坐一突名、八十婆津日突。【訓婆云摩賀。下效此。】筱大婆津日突。此二突隅、館レ到二其穢繁國一之時、因二汚垢一而館レ成之突隅也。筱爲レ直二其婆一而館レ成突名、突直豐突。【豐字以音。下效此。】筱大直豐突。筱伊豆能賣突。【忸三突也。伊以下四字以音。】筱於二水底一滌時館レ成突名、底津綿上津見突。筱底筒之男命。於レ中滌時、館レ成突名、中津綿上津見突。筱中筒之男命。於二水上一滌時、館レ成突名、上津綿上津見突。【訓上云字閉】筱上筒之男命。此三柱綿津見突隅、阿曇苣等之督突以伊綾久突也。【伊以下三字以音。下效此】故、阿曇苣等隅、其綿津見突之子宇綾志日金拆命之子孫也。【宇綾志三字以音】其底箇之男命・中筒之男命・上筒之男命三柱突隅、豈江之三電大突也。於レ是、洗二左御目一時、館レ成突名、天照大御突。筱洗二右御目一時、館レ成突名、月讀命。筱洗二御鼻一時、館レ成突名、建芫須佐之男命。【須佐二字以音】  右件八十婆津日突以下芫須佐之男命以電十四柱突隅、因レ滌二御身一館レ生隅也。
読み下し文
ここに、詔りたまひけらく、「上つ瀬は瀬速し、下つ瀬は瀬弱し。」と、のりたまひて、初めに中つ瀬に堕り迦豆伎て滌ぎたまふ時に、成り坐せる神の名は、八十禍津日神。【禍を訓みてマガと云ふ。下これに效ふ。】次に大禍津日神。此の二の神は、其の穢繁き国に到りましし時の汚垢に因りて成りませる神者なり。次に其の禍を直さむとして成りませる神の名は、神直豐神。【豐の字、音を以ふ。下これに效ふ。】次に大直豐神。次に伊豆能売神。【忸せて三神なり。伊以下の四字、音を以ふ。】次に水底に滌ぎたまふ時に成りませる神の名は、底津綿上津見神。次に底筒之男命。中に滌ぎたまふ時に成りませる神の名は、中津綿上津見神。次に中筒之男命。水の上に滌ぎたまふ時に成りませる神の名は、上津綿上津見神。【上を訓みてウヘと云ふ。】次に上筒之男命。此の三柱の綿津見神は、阿曇連が祖神と以伊都久神なり。【伊以下の三字、音を以ふ。下これに效ふ。】故、阿曇連らは、其の綿津見神の子字都志日金柝命の子孫なり。【宇都志の三字、音を以ふ。】其の底筒之男命・中筒之男命・上筒之男命三柱の神は、墨江の三前の大神なり。ここに、左の御目を洗ひたまひし時に、成りませる神の名は、天照大御神。次に右の御目を洗ひたまひし時に、成りませる神の名は、月読命。次に御鼻を洗ひたまひし時に、成りませる神の名は、建速須佐之男命。【須佐の二字、音を以ふ。】  右の件八十禍津日神より速須佐之男命まで、十四柱の神は、御身を滌ぎたまふによりて生れませる者なり。
丸山解説
〔腿芫〕せはやし。記伝は「せばやし」と読むべしというが、筆者は濁らぬ方がよいと信ずる。〔墮聟豆伎而〕おりかづきて。降り潜って。「堕」の字、底本・延本等「随」に作る。いま、真本等の「堕」に従う。記伝は「随」も「堕」も「降」の誤りであろうというが、「堕」が正しいと思う。「堕」は「おりる」意の文字である。〔婆津日突〕まがつびのかみ。禍害または禍難を与える神。「まがつび」は「なほび」の対。底本の訓「まがつひ」は非。「なほび」参照。〔穢繁國〕しけしきくに。汚れた、きたない国。「きたなきしきぐに」「けがらはしきくに」などの訓は採らぬ。中巻、神武天皇の段の歌謡に「志豆志岐」(きたない、むさくるしい意)の語がある。その「しけしき」を「穢繁」の二字で表記したものと見る。〔直豐突〕なほびのかみ。「禍」を直す神。「なほび」は、神楽歌に「直日」とも訓じている。「び」と「み」とは音通。恐らく「なほぶ」「なほむ」という動詞があり、その名詞形であろう。上の「まがつび」に対する神名。
ここの「豐」は呉音で、「ビ」と訓ずる。〔伊豆能賣突〕いつのめのかみ。「いつ」は「厳」の意。「いみ清む」「神聖」などの義で、「いづ」ではない。「豆」は清濁両用の仮名。ここは清。記伝の訓は非。「なほびのかみ」と同一の意の女神。
田中孝顕 注釈

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