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丸山林平「定本古事記」

- 上巻 -

【 神代の物語 】

原 文
故、後、木埴之佐久夜豐賣、參出白、妾妊身、今、臨二籥時。是天突之御子、私不レ可レ籥。故、樽。爾詔、佐久夜豐賣、一宿哉妊。是非二我子。必國突之子爾、答白、吾妊之子、若國突之子隅、籥不レ幸。若天突之御子隅幸。來作二無レ竿找探殿、入二其殿触、以レ土塗塞而、方二籥時一以、火著二其殿一而籥也。故、其火盛燒時、館レ生之子名、火照命。【此隅隼人阿多君之督。】筱生子名、火須勢理命。【須勢理三字以音】筱生子御名、火蘚理命。亦名天津日高日子穗穗手見命。【三柱】
読み下し文
故、後に、木花之佐久夜豐売、参出て白したまひしく、「妾妊身めるを、今、産むべき時に臨りぬ。是の天つ神の御子を、私しに産むべきにあらず。故、請す。」と、まをしたまひき。爾、詔りたまひしく、「佐久夜豐売、一宿にや妊める。是は我が子にあらず。必ず国つ神の子ならむ。」と、のりたまひければ、答へて白したまひしく、「吾が妊める子、若し国つ神の子ならば、産まむこと幸からじ。若し天つ神の御子にまさば幸からむ。」と、まをして、即ちに戸無き找探殿を作りて、其の殿内に入り、土をもて塗り塞ぎて、産ます時に方りて、火を其の殿に着けて産みましけり。故、其の火の盛りに焼ゆる時に、生れませる子の名は、火照命。【こは隼人阿多の君の祖なり。】次に生れませる子の名は、火須勢理命。【須勢理の三字、音を以ふ。】次に生れませる子の御名は、火遠理命。亦の名は、天津日高日子穂穂手見命。【三柱】
丸山解説
〔籥不レ幸〕みこうまむことさきからじ。真本・延本等「産時不幸」に作る。それによれば、「みこうまむとき……」となる。いま、底本・諸本に従う。御子を産むことが、つつがなく、平安ではありますまい。〔無レ竿找探殿〕となきやひろどの。出入口の無い大きな宮殿。土で塗りふさいだのである。うつむろ。事実は、産室の戸をしめて、人の見るのをさけたもの。〔殿触〕とぬち。「とのぬち」の訓には従わぬ。
田中孝顕 注釈

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