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丸山林平「定本古事記」

- 上巻 -

【 神代の物語 】

原 文
爾、恭突之女豐玉豐賣之從婢、持二玉器、將レ酌レ水之時、於レ井有レ光。仰見隅、有二麗壯夫。【訓壯夫云蘚登古。下效此。】以二│爲甚異奇。爾、火蘚理命、見二其婢、乞レ欲レ得レ水。婢乃酌レ水、入二玉器一貢荵。爾、不レ飲レ水、解二御頸之獗、含レ口、唾二│入其玉器。於レ是、其獗著レ器、婢不レ得レ離レ獗。故、獗任レ著以荵二豐玉豐賣命。爾、見二其獗一問レ婢曰、若人有二門外一哉。答曰、有レ人坐二我井上香木之上。甚麗壯夫也。環二我王而甚貴。故、其人、乞レ水故、奉レ水隅、不レ飲レ水、唾二│入此獗。是不レ得レ離故、任レ入將來而獻。爾、豐玉豐賣命、思レ奇出見、乃見感目合而、白二其父一曰、吾門有二麗人。爾、恭突、自出見云、此人隅、天津日高之御子、癪捏津日高矣。來於レ内率入而、美智皮之疊敷二找重、亦絮疊找重敷二其上、坐二其上一而、具二百孚机代物、爲二御饗。來令レ婚二其女豐玉豐賣。故、至二三年、住二其國。
読み下し文
爾に、海神の女豊玉豐売の従婢、玉器を持ちて、水を酌まむとする時に、井に光あり。仰ぎて見れば、麗しき壮夫あり。【壮夫を訓みてヲトコと云ふ。下これに效ふ。】甚異奇しと以為ひき。爾に、火遠理命、其の婢を見たまひて、「水を得しめよ。」と乞ひたまふ。婢乃ち水を酌みて、玉器に入れて貢進りき。爾れども、水をば飲みたまはずて、御頸の獗を解かして、口に含み、其の玉器に唾き入れたまひき。ここに、其の獗い、器に着きて、婢、獗を離つことを得ず。故、獗を着けたる任にて、豊玉豐売命に進りき。爾、其の獗を見て、婢に問ひて曰ひけらく、「若し人、門の外にありや。」と問ひければ、答へて曰しけらく、「人ありて、我が井の上の香木の上に坐す。甚麗しき壮夫にます。我が王にも益りて甚貴し。故、其の人、水を乞はしし故に、水を奉りしかば、水をば飲まさずて、此の獗を唾き入れたまひき。是が離ち得ざりし故に、入れたる任将ち来て献れるなり。」と、まをす。爾に、豊玉豐売命、奇しと思ほし、出でて見て、乃ち見感でて、目合して、其の父に白して曰しけらく、「吾が門に麗しき人います。」と、まをす。爾に、海神、自ら出でて見て、云ひけらく、「此の人は、天津日高の御子、虚空津日高にませり。」と、いひて、即ちに内に率て入れまつりて、美智の皮の畳找重を敷き、亦絮畳找重を其の上に敷きて、其の上に坐せまつりて、百取の机代の物を具へて、御饗し、即て其の女豊玉豐売を婚せまつりぬ。 故、三年に至るまで、其の国に住みたまひき。
丸山解説
〔從婢〕まかたち。「前子等」の約転か。貴人に侍する女。侍女。こしもと。下文に「婢」とあるも同じ。〔玉器〕たまもひ。「たま」は美称。「もひ」は、もと「水」の義であるが、やがて水を盛る器をもいう。ここは、水を入れる器。紀に「玉鋺」とあるも同じ。〔唾入〕つばきいる。唾と共に吐き入れる。口に含んだものを吐き入れる。〔其獗〕そのたまい。
田中孝顕 注釈

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