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丸山林平「定本古事記」

- 中巻 -

【 仲哀天皇 】

原 文
於レ是、裝上坐時、其御督息長帶日賣命、釀二待酒一以獻。爾、其御督、御歌曰、 許能美岐波 和賀美岐那良受 久志能加美 登許余邇伊揺須 伊波多多須 須久那美聟微能 加牟菩岐 本岐玖流本斯 登余本岐 本岐母登本斯 揺綾理許斯 美岐敍 阿佐受袁勢 佐佐 如レ此歌而、獻二大御酒。爾、建触宿斑命、爲二御子、答歌曰、 許能美岐袁 聟美豆牟比登能 曾能綾豆美 宇須邇多弖弖 宇多比綾綾 聟美豆禮加母 揺比綾綾 聟美豆禮加母 許能美岐能 美岐能 阿夜邇 宇多陀怒斯 佐佐 此隅、酒樂之歌也。
読み下し文
ここに、還り上り坐せる時に其の御祖息長帯日売命、待酒を醸みたまひて献らしけり。爾、其の御祖、御歌曰みしたまひけらく、 (四〇) この御酒は わが御酒ならず 薬の神 常世に坐す 石立たす 少名御神の 神寿き 寿き狂ほし 豊寿き 寿きもとほし 献り来し御酒ぞ あさず飲せ ささ かく歌ひたまひて、大御酒献りたまひき。爾に、建内宿斑命、御子の為に、答へて歌曰ひまつりけらく、 (四一) この御酒を 醸みけむ人は その鼓 臼に立てて 歌ひつつ 醸みけれかも 舞ひつつ 醸みけれかも この御酒の 御酒の あやに 転楽し ささ 此は、酒楽の歌なり。
丸山解説
〔待酒〕まちざけ。連濁で「ざけ」となる。底本の訓「まちさけ」には従わぬ。「しろざけ」「にごりざけ」の類。来る人に飲ませるために、醸み設けて、待つ酒。〔美岐〕御酒。「み」は美称。「き」は「酒」。「白酒」「黒酒」の「き」である。〔久志能加美〕「くし」は「薬」の転。医薬の神。応神天皇の段の歌謡に「ことなぐし、ゑぐしに、われ酔ひにけり」とあるように、百薬の長の意から「酒」の意ともなる。ただし、「くし」を直ちに「酒」とすることはできない。大言海「くし」の項参照。ここでは少彦名命をさす。大国主命と少彦名命とは、医薬療病の二神と称せられる。「くしがみの」なる枕詞は「二上」すなわち「二神」に冠する。万七の一〇九八に「くしがみの、ふたがみ山」とある。
田中孝顕 注釈

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